軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121:騎獣による飛行

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《斬魔の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』

そこそこ大きな群れを成していたバトルホースの群れと、それに混ざっていた魔法を撃ってくるトムソンガゼルのような魔物を蹴散らし、一息吐く。

セイランに節約させながら戦うと、そこそこ時間がかかってしまうようだ。

まあ、ある程度頻度を絞りさえすれば、MPはゆっくりと回復していくのでなんとかなるが。

ルミナの時は《MP自動回復》系のスキルを持っていたから回復が速かったが、セイランはそうもいかない。

ペースはきちんと絞っていかなければならないだろう。

「今のはいい感じでしたね。私もやっぱり長い刀を買いますかねぇ」

「ふむ……確かにこのゲームの中なら、ステータスさえ足りていれば何とかなるかもしれんがな」

「ですよね? 私もフィノに依頼しておきます」

このゲーム内においては、筋力――STRのステータスが足りていれば、装備は適度な重さとして感じるようになっているらしい。

つまり、ステータスさえ足りているのならば、扱ううえではそれほど困らないのだ。

まあ、緋真自身が野太刀の扱いをあまり習熟していないのが問題であるが、あまり振り回すものでもないし、少し扱っていれば慣れるだろう。

「よし、そろそろ慣れてきたし、飛んでみるか」

「え、もう飛ぶんですか?」

「地上での戦いは感覚を掴めたからな。だが、空での戦闘となると、流石に初めての経験だ。時間は多めにとっておいた方が良い」

「んー、分かりましたけど、安全運転してくださいよ? 私も一緒に乗るんですから」

「何、いざとなったらルミナが掴んで不時着させるだろう」

「怖いんですけど!?」

緋真が抗議の声を上げるが、初めての経験である以上、何も保証することはできない。

ルミナが命綱になるだけまだマシというものだろう。

一応、空を飛ぶ騎獣用ということで体を固定するための金具が備え付けられているのだが、流石にこれだけで安心と言い切れるほど気楽ではない。

事故が起こる可能性も考慮しなければならないのだ。

「言ってても始まらんぞ。ほら、さっさと来い」

「はい……」

「大丈夫です、緋真姉様。私がちゃんと受け止めますから!」

「お願いね、ルミナちゃん」

笑顔のルミナに背中を押され、緋真は馬から降りて騎獣結晶へと戻す。

そのまま遠慮がちに近づいてきた緋真の手を掴み、鞍の上まで引っ張り上げれば、緋真は俺の胸に背を預ける形で収まった。

「こっちですか? 後ろにいた方が体を固定しやすそうですけど」

「羽織が邪魔になるだろう? それに、後ろじゃ景色が見えんだろうに」

「……分かりましたけど、ちゃんと押さえててくださいよ?」

「ああ、分かってるよ」

くつくつと笑いながら、緋真の腰へと固定具を装着する。

一応、セイランも緋真の実力はこれまでの戦闘で理解しているらしく、こいつを乗せることに抵抗はないらしい。

まあ、大人しく飛んでくれるかどうかは別問題だが――

「行くぞ、セイラン」

「クァアッ!」

声を掛けると同時、セイランは風を纏いながら地を駆けだす。

先ほどまでと異なる点は、両の翼が大きく開かれている点だ。

翼を広げたまま駆けだしたセイランは、その翼を揺らし――強く地を蹴ると共に、大きく羽ばたかせていた。

瞬間、体にかかるGに息が詰まり、次の瞬間には全身を包む浮遊感に口角が歪む。

「ひゃっ」

「っ……流石に、体を晒したままってのは初めてだな」

大きく羽ばたいたセイランは、そのまま青い空へと向けて上昇を開始する。

飛行機などでも感じる浮遊感だが、やはり何度経験しても、この内臓がひっくり返るような感覚は慣れないものだ。

しかし、地面から飛び立ったにもかかわらず、あまり強い風は感じない。

どうやら、周囲を覆うセイランの魔法が風圧を抑えてくれているようだ。

それでも多少は吹き付けてくる風に目を細めながら、遠ざかる地面を横目に空へと駆け上がる。

「っ……これ、結構怖いですね」

「だが、いい眺めだろう?」

「は、はははっ、それは確かに!」

多少引き攣ってはいるが、どうやら緋真もこの景色には興奮しているようだ。

一面に広がる草原、遠景に広がる山々。

遮るもの無く見渡せるこの光景は、現実世界では決して目にすることのできないものだ。

「凄いですね……ここ、地形が平原ですから、余計に広く見渡せますよ」

「確かにな。こりゃ絶景だ」

これを目にしただけでも、空を飛んだ価値はあったというものだろう。

しかし、本来の目的はそこではない。まずは、セイランに乗っての飛行の感覚を掴まなければ。

「よし、とりあえず試しだ。セイラン、この辺りを旋回するように飛べ」

「クェェ」

俺の言葉に頷き、セイランは強く翼を羽ばたかせる。

体を少し斜めに傾かせたため少しヒヤリとしたが、この程度ならば十分体を支えられるレベルだ。

どうやら、セイランは翼を羽ばたかせるだけではなく、風の魔法を利用して揚力を得ているようだ。

これは魔法の世界ならではの飛び方ということか。

「お、おお……意外と揺れないですね」

「地面が無い分、振動は少ないだろうな。地面を走るよりもあまり疲れなさそうだ」

乗馬の疲労する点は、地面や走行の振動を吸収するために体幹と筋力が必要になるところだ。

飛行している間はその必要が少ないため、地面を走るよりは疲れずに済むかもしれない。

尤も、体を支える必要はあるため、そこには力が必要になるだろうが。

「セイラン、少しスピードを上げてみろ」

「クァア!」

「ちょっ、いきなり――ひゃあ!?」

空気を打つ音が響き、セイランは加速する。

後ろに持っていかれそうになる体を背筋で押さえながら、俺はそのスピードの感覚を確かめていた。

やはり振動は少なく、ギャロップしている時よりは楽な印象だ。

「ふむ……思ったよりも負担は少ないな」

「いきなり加速するのは心臓に悪いからやめてくださいよ……」

「戦闘になったらそうも言ってられんぞ? いや、俺も余裕があるかどうかは分からんがな」

流石に、飛行しながらの戦闘など俺にとっても未知の領域だ。

それが高速でともなれば、楽観視などできるはずもない。

いくら何でも、この高さから投げ出されれば、受け身を取ったとしてもどうしようもない。

俺とて緊張せざるを得ない状況だ。

「よし、一度その場でとどまってみてくれ……できるか?」

「クァ」

俺の言葉に頷き、セイランは飛行スピードを落とす。

若干体を起こしながらブレーキをかけ、体勢を緋真と共に維持しながら重力に耐える。

流石に、あそこまで体を起こされるのは中々厳しいものがある。

空中での急ブレーキには気を付けた方が良いだろう――いや、それは地上でも同じであるが。

「その場でのホバリングもできるんですね」

「だな。これができるかどうかでかなり変わってくるぞ」

飛行機はその場での滞空はできない。それが可能なのはヘリコプターだけだ。

セイランの場合はそれよりも更に小回りが利くし、加速と減速もやり易い。

これは思った以上に便利な移動手段になるかもしれないな。

「ルミナ、お前はどうだ? セイランの動きには合わせられそうか?」

「はい、私の方が小さい挙動は得意ですので、お父様のフォローができます」

「確かに、お前の飛行はかなり身軽だな」

ルミナは体重の少なさもあるが、その《光翼》によって高い機動性を維持している。

多少小回りが利くと言っても、セイランのそれは瞬時に方向転換ができるほどの物ではない。

ルミナの方が細かな挙動が可能であることは事実だろう。

そういう意味で、ルミナには空中でのフォローをしてもらうのは有効な筈だ。

「頼むぞ、ルミナ。さすがに、空中ではなかなか自由が利かんからな」

「はい、お任せください!」

嬉しそうに頷くルミナの様子に苦笑しつつ、俺は再びセイランに合図を送る。

反応したセイランは翼を打ち、前方へと向けて飛翔を開始した。

今度は高速ではなく、普通に馬が走る程度の速度だ。

空中においては割とゆっくり進んでいるようにも感じるが、そのスピードは結構なものである。

「問題は、この状態でどうやって戦闘をするかだな」

「空中でも敵は出ますよねぇ……どうするんです? 今は一回降りておきますか?」

「いや、一度試してみてからでいいだろう。確かに現状では少々心もとないかもしれないが、何が足りないかを洗い出しておくに越したことはない」

確かに、緋真がペガサスを手に入れてからの方が安定するのかもしれないが、それまで飛行という手段を封じてしまうのも勿体ない。

確かにリスクはあるが、これは非常に有効な手段だ。

これから敵の偵察を行うのにも、飛行による移動は有効活用していきたい。

そう告げた俺の言葉に、緋真は小さく嘆息しつつ、その後頭部を俺の胸に預けながら返していた。

「分かりましたよ、もう。けど、この状態だと私は魔法での援護ぐらいしかできませんからね?」

「分かってるさ。その代わり、その仕事はきっちり果たせよ」

「了解です」

まあ、俺の腕の中からでは、刀を振るうことも無理だろうからな。

魔法についても、あまり手元から発射するタイプは使ってほしくないところだ。

それを含めて、少々難しい戦闘になるだろうが――挑戦するしかあるまい。

「そら、向こうから見えてきたぞ」

「あれって……まさかセイランと同じ?」

「ああ、マイナーグリフォンだろうな」

遠景からこちらに近づいてきているのは、紛れも無くセイランと同じ姿をした魔物たちだ。

マイナーグリフォンが三体……どうやら、飛行しているとあいつらが襲ってくるらしい。

今の状態であの時戦ったボスのグリフォンに勝てるかと問われると、正直少々厳しいと言わざるを得ないが――マイナーグリフォンならば、もうある程度の能力は理解している。

「やるぞ。同種には負けるなよ、セイラン」

「ケェェェエエエエエッ!」

気炎を上げ、セイランは吠える。

しかし、対するマイナーグリフォンたちもまた、それに怯むことなくこちらに向かってきていた。

能力のみを見れば、恐らく連中とは互角だろう。

機動性は、俺と緋真を乗せていることもあり、こちらが劣っていると思われる。

だが、その分攻撃の手数はこちらの方が上だ。やってやれないことは無いだろう。

「緋真、ルミナ」

「了解です、足止めしますよ」

「私はお父様たちの死角を潰します!」

魔法を詠唱しながら構える緋真と、気合十分に頷くルミナ。

さて、単純な頭数ではこちらの方が上とは言え、セイランに乗っている俺たちはまとめて一体と数えるべきだろう。

あまり安易に攻めることはできないが――

「初の空中戦だ、今は出し惜しみをしなくていい。まずは感覚を掴むぞ」

「分かってますよ!」

「お父様の御心のままに!」

にやりと笑い、纏う風を強めたセイランへと合図を送る。

その瞬間、俺たちはマイナーグリフォンたちへと向けて一直線に飛び出していた。