軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

113:次のボスへ

『《MP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《収奪の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

山間にある関所へと向かう道すがら、集まってきた猿共を片付けて一息吐く。

疲れたと言うほどではないが、今はもうここの猿共の相手は正直面倒でしかない。

以前と比べてかなりこちらが強化されているため、相手とするには不足に感じてしまうのだ。

(この程度では肩慣らしにもならんか――いや、フィリムエル相手で十分慣らしてはいるんだが)

あの砦での戦いを思い返し、軽く息を吐き出す。

砦の奪還の後、幸いなことに、防具の修復は簡単に行うことができた。

確実に穴が開いていたと思ったのだが、どうやら確認したところ破損はしていなかったようだ。

いや、正確に言えば確かに穴は開いていたのだが、一度インベントリに格納したらそれが無くなっていた。

どうやら、耐久度が低くならない限りは見た目を直すことができるらしい。

尤も、着物も羽織も、一度の戦闘でかなり耐久度を減らされていたことは事実であるが。

それでも、特に大きな手間なく修理できたのは幸いだったと言える。

これならば、次なる標的相手にも十分戦えるだろう。

「……先生、本当にいいんですか? あれだけ戦った直後なのに、いきなりボスとか」

「この国で、他にやることも無いだろう? 他の聖火の塔はどこぞのクランが手を出しているわけだしな」

アルファシアにある聖火の塔は、ほぼ全てが解放されている状態にある。

唯一残っているのはファウスカッツェの南方にあるという塔であるが、そちらも規模の大きいクランが攻略に当たっているとのことだ。

俺としても二つも塔を攻略するほどの理由は無いし、わざわざ手を出すつもりは無い。

それならば、より強く、そしてより多くの悪魔が蔓延っている隣国を目指すべきだろう。

「あの関所も、もう開いているって話なんだ。行かない理由も無かろう?」

「まあ、そうですけどねぇ……一応、何人かはそこに到達しているみたいではありますよ」

何やらウィンドウを操作している緋真は、感心と呆れを交えた口調でそう答える。

どうやら、掲示板とやらから情報を得ているらしい。

まあ、防衛戦が終わった直後から開いていたのかどうかは知らないが、タイミング的には俺たちが最初ではなくても不思議ではない。

しかし――緋真の反応は、どうも渋いものだ。

「何かあったのか?」

「初見のボスにはよくあることですけど……まあ、見事に敗退したみたいですね。まるで戦えずに全滅したようです」

「戦えずに? 仮にもここまで到達したプレイヤーだろう、そこまで一方的になるものか? ……まさか、また悪魔か?」

脳裏に浮かべるのは、王都への道を塞いでいた悪魔ゲリュオンである。

奴は特殊なギミックによってこちらの動きを制限していたが、あれと同じような真似をされたのだろうか。

しかし、その問いに対し、緋真は首を横に振って答えた。

「いえ、純粋に負けただけですね。今回のボスは悪魔ではなく、普通に魔物ですよ」

「それなら、何故歯が立たなかったのですか?」

「単純に、ボスとその取り巻きが空を飛んでいたからだよ」

ルミナの疑問に返した緋真の答えに、思わずピクリと眉を跳ねさせていた。

飛行する魔物は今までも何度か戦ったことがあるが、総じて面倒な相手である。

尤も、その理由は俺が遠距離攻撃手段をほぼ持っていないからであるのだが。

遠くに攻撃を当てる手段が無ければ、飛行する敵の相手というのは中々に難しい。

しかもそれがボスとなれば、かなり厄介な相手となるだろう。

「具体的にはどんな奴だ?」

「グリフォンですね。えっと、鷲獅子……鷲の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ馬ぐらいの大きさの怪物です。それと、マウンテンイーグル5体が取り巻きにいます」

「ほう……そんな巨体が空を飛んでいるのか」

飛行するからにはそれなりのスピードを有していることだろう。

それだけの巨体がスピードを出しているというのは、それだけで恐ろしいものだ。

取り巻きの鳥については……これも厄介だな。グリフォンほどではなかろうが、大型の猛禽類は優れた狩人だ。

油断すればあっさりと刈り取られるだろう。

「やっぱりと言うか、基本あんまり降りてこないみたいですね。上空で旋回しながら、隙を見て急降下攻撃してくるような感じです」

「……直接攻撃をしに来るだけマシだが、面倒な相手だな」

「私が上空で戦いましょうか?」

「飛ぶのは構わんが……お前は今日の刻印を使い切っているんだから、あまり無茶をするなよ」

確かに、ルミナが上空で戦うのは有効だろう。

しかし、地上にいる俺たちからは援護がしづらく、孤立無援の戦いとなってしまう。

刻印があればマウンテンイーグルを一網打尽にできるかもしれないが、それが無い以上は気にしても仕方がない。

「どちらかと言えば、お前は敵を地上近くまで誘き寄せてくれた方が助かるな。それならこちらも手が出しやすくなる」

「成程……分かりました、お父様。囮役を務めてみせます!」

「ああ、期待しているぞ」

まあどちらにしても、どうにかして上空の敵を攻撃できるようにしなければならない。

例え誘き寄せたとしても、そのまま地上まで降りてくるわけではないだろう。

可能ならば、どうにかして翼に傷を負わせ、地面に落とす。

地上での戦いであればこちらのものだ――尤も、獅子の体であると言うならば、それでも油断はできないだろうが。

「ルミナ、お前が敵をおびき寄せる。緋真は敵の翼を狙え。地上に落とせれば俺が何とかする」

「了解です。まあ、手札は増えましたし、何とかしますよ」

方法で頭を悩ませているらしい緋真には首肯を返しつつ、俺は姿の見えてきた関所を見上げる。

この場所に来るまでには中々の距離がある。正直、何度も往復するのは避けたい距離だ。

対策をした方が良いかもしれないが、今更後戻りするのも面倒である。

今使える手札で、確実に仕留めるためには――

「ふむ……よし、行くとするか」

「はいっ」

「了解です、先生」

頷く二人を引き連れて、関所へ。

以前も確認したその建物は、しかし以前とは異なり、その巨大な扉は開け放たれていた。

そして同時に、周囲にも異常が発生している。以前には無かった、石柱が並べられていたのだ。

あれは他でも目にした、ボスの戦闘領域を示すもの。今の所他のプレイヤーの姿はないが、あそこでボスと戦うことは間違いないだろう。

俺たちは互いに視線を合わせ、覚悟を決めたことを確認し、石柱の内側へと足を踏み入れる。

瞬間――強い風が、砂塵を巻き上げて俺たちの間を通り抜けていた。

『ケエエエェェェェ――――――ッ!』

「……あれが、グリフォンか」

威嚇するような、力強い声。

風と一緒に吹き付けてきた敵意を肌で感じ取りながら、俺は白鋼の小太刀を抜き放っていた。

■グリフォン

種別:魔物

レベル:38

状態:アクティブ

属性:風

戦闘位置:???

■マウンテンイーグル

種別:魔物

レベル:35

状態:アクティブ

属性:風

戦闘位置:空中

その姿があったのは、関所の屋根の上。

そこで身を伏せていたグリフォンは、俺たちの姿を睥睨して威嚇の声を上げていた。

マウンテンイーグルたちはその周囲に配置されており。俺たちの姿を見て一斉に飛び立とうとする――その、瞬間。

「《スペルチャージ》、【フレイムバースト】!」

「光よ、爆ぜよ!」

――先制攻撃として、準備していた二つの範囲魔法が炸裂していた。

光と炎が荒れ狂い、強烈な閃光となって関所の上部を蹂躙する。

しかし、その輝きの中から、僅かに動きを乱しながらも六つの影が飛び立っていた。

やはり、あれだけで何とかなる相手ではなかったようだ。

「ルミナ、行け!」

「はい!」

光の翼を羽ばたかせ、ルミナが地上から飛び立つ。

こちらは魔法の準備をしつつ、その状況の推移を観察する。

直撃を受けた筈のグリフォンは大したダメージは受けていないが、マウンテンイーグルたちはそこそこHPを減らしているようだ。

あれなら、刻印さえあれば一網打尽にできたかもしれないが……まあ、そこは仕方あるまい。

飛行を開始したルミナに、グリフォンたちは即座に反応した。

地上にいるこちらよりは、飛行可能なルミナの方を優先的に狙うということか。

まあ、それならそれで分かり易い。狙われないのであれば、こちらは一方的に攻撃させて貰うまでだ。

「ルミナ、回避に専念しろ! 緋真、お前が狙え!」

「分かりました、お父様!」

「了解です。気を付けて撃ちますよ」

頷きつつも、既にやることは把握していたのだろう。

緋真は溜めていた魔法を上空へと撃ち放っていた。

一直線に空へと駆けた【ファイアボール】は、しかしマウンテンイーグルたちの間を縫うようにして通り抜ける。

外した、と言うよりも避けられたな。ルミナを追いかけてはいるものの、回避行動を取る程度の余裕はあるようだ。

「むぅ……これはちょっと難しいですね」

「範囲魔法は……ルミナを巻き込みかねんか」

「とりあえず、速射魔法で行ってみます――【ファイアアロー】!」

次に緋真の手から放たれたのは、細い矢の形状をした炎だった。

それは火球とは比べ物にならぬほどの速さで飛翔し――マウンテンイーグル一体の翼を射抜いていた。

攻撃を受けたマウンテンイーグルは大きく体勢を崩し、しかし墜落には至らずその場で体勢を整える。

そしてそのマウンテンイーグルは、即座に緋真を敵と認識し、急降下を開始した。

「ほう……やってやれ、緋真」

「装填してる暇はないですね……」

上空攻撃用に魔法を唱えているため、近接攻撃のために魔法を準備できないようだ。

となれば緋真の場合、攻撃力の高い攻撃は限られる。

この場合、こいつが使うのは当然――

「――【炎翔斬】」

緋真の刀が炎を纏い、大きく飛び上がりながらそれを一閃させる。

相変わらず人間にはあり得ない跳躍だが、そのタイミングはドンピシャだ。

振り上げられた一閃は確実にマウンテンイーグルを迎撃し、その翼を斬り裂く。

片翼を完全に斬り裂かれたマウンテンイーグルはそのまま錐揉み回転しながら地面に墜落していた。

そして 魔導戦技(マギカ・テクニカ) を終えた緋真は空中で体勢を立て直し、そのまま墜落したマウンテンイーグルへと追撃する。

「せいッ!」

体勢的に襲牙を狙えただろうが、相手が小さいため、使えば刀が地面に突き刺さってしまうだろう。

仕方なく、緋真はそのまま足でマウンテンイーグルを踏み潰し、その上で切っ先をマウンテンイーグルの首へと突き刺していた。

魔導戦技(マギカ・テクニカ) のダメージと墜落ダメージ、それに急所へのダメージによって、マウンテンイーグルのHPは完全に消失していた。

「ふむ……良い感じだな。俺はやることが無いが」

「ルミナちゃんに地上辺りまで来て貰っては?」

「いや、今はあいつも逃げ回るので精いっぱいだ。もう少し減らしてからだな……というわけで、続行だ。あと二匹はやった方が良いだろう」

「そうですか……ま、了解です。ちゃっちゃとやっちゃいますか」

本来、全員が地上で戦っていた場合はもっと苦戦していたのだろうが……まさかこのような展開になろうとは。

しかし、ルミナの飛行訓練にもなるだろうし、無駄にはならないだろう。

それに、グリフォンについてはそう簡単にはいかないだろうしな。

あの本命をどのように落とすか――その戦略を脳裏で練り直しながら、俺はじっくりとルミナの動きを観察していた。