軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

105:成長武器の強化

「んー、やっぱりそうだね。予想通り」

「何がだ?」

「強化方法。やっぱり、レア武器を強化するのと同じ方法っぽい」

餓狼丸の前に表示されたウィンドウには、いくつかのアイテムの名前が表示されていた。

並んでいる名前は、草原狼の牙や爪、そして草原大狼の牙と爪、そして尻尾だ。

餓狼丸の強化を行うのに、これらのアイテムが必要だということだろうか。

それにしては、金属の素材というわけではないようだが――

「んー、ちょっと待ってね。かんちゃんに素材持ってきてもらうから」

「あ、フィノ。それならノエルさんも呼んでくれない? 宝石手に入れたの」

「おー……聖火の塔に宝石なんてあるんだ。分かった、ノエ姉に持って来て貰う」

聞き覚えの無い名前だが、話の流れから、恐らく装飾品を作る細工師なのだろう。

どんな装飾品を作るのかは少々考え物だが、それよりも今は武器の強化が気になる。

果たして、魔物の素材をどのように利用するのか。

そんな俺の視線に気づいたのか、フィノはどこか得意げな表情で指を三本立てつつ声を上げる。

「アイテムには、基本三つの入手方法がある。一つは、現地人の店での購入、二つ目が、私たち生産職による製造。これらの武器は、強化ではなく新しいものの作成で更新するのが普通」

「……確かに、今まではそうだったな。だが、餓狼丸はそれに当てはまらない。つまり、三つ目の入手方法ってことか」

「そう。三つめが、イベントやクエスト、魔物からのドロップで手に入れるパターン。これのことをレア武器って呼んでる」

俺は今の所、餓狼丸以外は見たことはないが、そういった装備も存在するらしい。

イベントというのはまさにこいつのことだろうが、他のパターンはお目にかかったことが無いな。

緋真の方へと視線を向けてみれば、こいつは苦笑しつつ肩を竦めていた。

「いくつか手に入れたことはありますけど、刀は無かったですし、使ってませんよ」

「ああ、望んだものが手に入るというわけでもないのか」

「そうそう。だからレア武器を使ってる人は少ない……けど、少なくてもいることはいる。特殊能力を持った装備は貴重だから」

確かに、餓狼丸も同じように、他にはない特殊な能力を持っている。

だが、そうであるならば、そのレア武器と成長武器はどのような差があるのだろうか。

「レア武器の場合は、経験値とかは関係なく強化できるわけか」

「その通りだけど……経験値の収集と消費というリスクがある以上、保有している能力は成長武器の方が高い。それに、成長武器の特殊能力は、成長するごとに強化されるって聞いた」

「ほう……アルトリウスが公開していたのか」

「ん。でも、効果の詳細までは明かされていないけど」

餓狼丸の特殊能力は、広範囲に渡るHPの吸収だ。

現状でも十分強力だと思っていたのだが、それが強化されるというのであれば、効果範囲か、或いは吸収量か。

確かにそのような要素があるのであれば、成長武器がどれだけ強力であるのかが理解できる。

「話を戻すけど、そういうレア武器とかの強化には、ここに書かれているように、主に魔物素材を消費して強化する」

「これを武器の中に組み込むのか?」

「ううん、えっと……素材に篭っているエネルギー? 魔力? を抽出して、それを武器に注ぎ込む、的な?」

「ふわっとしてるわね……」

「まあ、ニュアンスとしては分かるが……武器のバランスが変わらないならそれでいいか」

重要なのは餓狼丸の、天狼丸重國と同じバランスが保たれているかどうかだ。

そこが変わらないのであれば、威力が強化されるのは大歓迎である。

「まあとにかく、成長武器もレア武器と同じような方法で強化するみたい。名前繋がりなのか、狼系の魔物素材を要求されてるね」

「そのようだが、いいのか? 商会の素材を使うつもりみたいだが、必要なら取ってくるぞ?」

「いいよー、ステップウルフ系素材なんて余りに余ってるし。その分ちゃんとお金も取るし」

「ふむ、それならいいが――」

と、そう返したのと同時、こちらへと近づいてくる気配を察知する。

迷うことなくこの作業場へと近づいてくる気配。

これは恐らく、先程フィノが呼び出した相手だろう。

俺の視線に釣られるように、緋真たちも扉の方へと視線を向け――そこから一人の女性が姿を現した。

「はぁーい、フィノちゃーん。お姉さんがやってきたわよー」

「やっほーノエ姉。とりあえず素材ちょうだい」

「もう、相変わらずストイックねぇ」

フィノの姿勢はストイックと呼んでいいのかどうかは分からないが、このノエルなる人物はそれほど気にした様子はない。

むしろどこか楽しそうな――と言うよりは若干の艶めかしさすら感じる仕草に、俺は若干の困惑を抱いていた。

何というか……妙に怪しい雰囲気の女だ。

種族は 獣人族(ハーフビースト) の狐、どこかイブニングドレスのような服装で、大胆に胸元を開いた煽情的な姿をしている。

いい女であることは間違いないが――この手の相手はどうも苦手だ。軍にいた頃の厄介な女を思い出す。

「それで、宝石を持ってきたというのは緋真ちゃんだったかしら? それと――」

「お初にお目にかかる、クオンだ」

「ええ、一方的にだけど知っているわ。私はノエル、細工師よ。うふふ、良いお付き合いにしましょうね」

艶然と笑うノエルに対し、こちらも軽く礼を返す。

緋真とフィノの知己であるということは、十分に腕の立つ生産職なのだろう。

その点に関しては、信頼してもいい筈だ。

「緋真、宝石を渡してくれ」

「了解です。はい、これですよ、ノエルさん」

「あら、これは……結構な原石ね。これ、どこで手に入れたのか聞いてもいい?」

「あー……鉱脈ではないですよ。聖火の塔にいた中ボスゴーレムです」

「ああ、ゴーレム採掘なのね。それは残念」

どうやら、そこそこいい原石であったようだ。

とは言え、ボスらしいゴーレムはあれだけしか出現しなかった。

もう一度奴から原石を手に入れようとしても、それは無理な話だ。

「ルビーは火属性強化、トパーズは状態異常耐性ね。ヘリオライトは……確か、光属性の強化だったかしら。形状はどうするの?」

「指輪だと刀を握るのに邪魔だし、ペンダントは引っ張られたら危ないし……先生、どうしましょう?」

「バングル辺りでいいんじゃないか? 一応、篭手には当たらないようにしたいが」

「成程。ちょっと腕を見せて貰えるかしら?」

そう言いながら近づいてきたノエルに対し、一瞬躊躇しつつも左腕を差し出す。

やたらと嫋やかな仕草で俺の腕を取ったノエルは、そのまましげしげと篭手の形状を確認していた。

「ふぅん……フィノちゃん、新しいのを作る時にも篭手の形を変えるつもりは無いのかしら?」

「ないよー」

「そう。なら、何とかなりそうね。全てバングルでいいのかしら?」

「俺はそれで問題ないが……お前たちはどうだ?」

「私は大丈夫ですよ」

「お父様の指示に従います」

ルミナの自己主張の無さは少々気になるものの、他にちょうど良さそうなアクセサリーも思いつかない。

二人も特に要求は無いようであるし、とりあえずそれでいいだろう。

軽く肩を竦め、俺はノエルに対し首肯を返していた。

「それで問題ない。作成を頼めるか?」

「了解よ。料金は現物ができてからね」

フィノから武具を買う時はあらかじめ金を払ってしまっているが、そういうパターンもあるのか。

確かに、俺はまだ彼女の腕を把握してはいない。現物を見てからの購入で問題は無いだろう。

「それじゃあ、素材を預かっておくわ……宝石細工は造るのにしばらくかかるから、完成したら連絡するわ」

「……承知した。しかし、その原石はそんなに良いものなのか?」

「ええ、そもそも宝石自体がまだ品薄だからね。その中で、これだけの大きさの原石はそれこそ滅多に見ないわ。私の仕事も、宝石無しの細工ばっかりだもの。女の子を飾るのには勿体ないと思わない?」

「……飾り立てるために宝石とは、また豪快だな」

「うふふ、私は手は抜かない主義なのよ」

言いながら、ノエルは熱の篭った視線を俺の後ろ――緋真とルミナへと向ける。

成程、彼女はこういった類の人間ということか。

まあ、堂々と手出しをしてくる様子はなく、単純に着飾らせるのが好きなだけのようだが、一応警戒はしておこう。

そう考えつつ半眼を浮かべた俺に、ノエルは若干苦笑しつつ手を振っていた。

「勿論、貴方の分も手を抜いたりしないわよ。職人として、仕事は真っ当にこなすわ」

「それに関しちゃ疑っちゃいないさ。よろしく頼む」

「ええ、任されましょう」

力強く首肯したノエルにとりあえずは安堵しつつ、ふと鑑定して貰おうと思っていたアイテムのことを思い出す。

しかし、あれは手に入れた場所が場所だから、できればエレノアに直接渡したかったのだが。

どうしたものかと悩み、黙考していた所で、隣からフィノの声がかかった。

「話纏まった? それなら、そろそろ強化しようよ」

「っと、悪いな、待たせちまったか」

待ちきれない、という様子で声を上げるフィノに苦笑しつつ、作業台の方へと戻る。

そこには既に、餓狼丸の前に供えるように並べられた強化素材の数々の姿があった。

牙やら爪やらが置かれている姿は、武器の強化と言うよりは怪しげな儀式のようにも思える。

「……これで強化するのか?」

「そうだよー。見ててね」

俺の懐疑の視線に対し得意げに頷いたフィノは、手に持ったハンマーの柄の底で、机の手前をこつんと叩く。

その瞬間、餓狼丸の前に置かれていた素材たちが淡い光に包まれ始めた。

素材から発生した光は、ゆっくりと餓狼丸へと集まり、その内側へと吸収されてゆく。

この光が武器の強化に繋がるということか。確かに、フィノの言うように素材の持つエネルギーを注ぎ込んでいるという表現が似合う光景だ。

爪や牙などはそれほどエネルギーも持っていないのか、すぐに光を失い――そして、黒い塵と化して消滅していた。

(うん? 今の消え方は……何か、見覚えがあるような)

つい先日、同じような消え方をした物体を見た気がしたのだが、果たして何だったか。

しばし黙考していたが、その答えに辿り着く前に、最も大きな尻尾の光が餓狼丸へと吸い込まれて強化は完了していた。

全ての素材が塵と化して消え去り、そして光を吸い込んだ餓狼丸は、先程と変わらぬ姿で作業台の上に置かれている。

これでもう完了なのか、と――俺はフィノに視線で確認してから、この刃を手に取った。

■《武器:刀》餓狼丸 ★2

攻撃力:33

重量:17

耐久度:-

付与効果:成長 限定解放

製作者:-

能力値を確認してみれば、確かに攻撃力は上がっているようだ。

攻撃力は未だ白鋼の太刀には及ばないが、それでも迫るレベルにまで達している。

特殊能力を考えれば、完全に白鋼の太刀を超えていると言えるだろう。

己の武器が強くなっていくのは楽しいものだが、この名刀がと考えると笑みが浮かぶのを止められない。

さて、成長によって能力はどのように変わっているのか――

■限定解放

⇒Lv.1:餓狼の怨嗟(消費経験値10%)

自身を中心に半径31メートル以内に黒いオーラを発生させる。

オーラに触れている敵味方全てに毎秒0.2%のダメージを与え、

与えた量に応じて武器の攻撃力を上昇させる。

ふむ……頭の所についているレベルは、この武器のレベルではなかったのだろうか。

或いは、この能力を使えるようになるレベルとかか?

その場合であれば、今後レベルが上がっていけば新たな能力を使えるようになるのだろうか。

ともあれ、効果は若干ながら効果範囲が広くなっている。

どちらかと言えば吸収量が増えて欲しかった所であるが、流石にこれが増えるのは強すぎるか。

「どう、いい感じ?」

「ああ、満足だ。このままどんどんと強化していきたいところだな」

「ん……私も、餓狼丸がどこまで強くなるのか見てみたい」

満足げに笑うフィノに、俺もまた笑みで返す。

どのような成長を遂げるにせよ、まだまだ餓狼丸は強くなれる。

どこまで行くことが出来るのか、楽しみにさせて貰うとしよう。