軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100:聖火の塔

『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《収奪の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

「……お、レベルが上がったか」

「え、早くないですか? 私まだなんですけど」

「イベントでそこそこ溜め込んでたってことだろ。しかし、《魔技共演》はレベルが上がり辛いのか、これは」

道中の敵を蹴散らし、目的地に近づいてきた頃、俺のレベルは一つ上昇していた。

街道を通っていたため、敵の数はそれほど多くはない。だからこそここまでスムーズに近づくことができたのだが、俺はスキルレベルの上がり方に疑問を抱いていた。

《魔技共演》のスキルレベルは未だに2だ。数が少なかったとはいえ、戦闘のたびに毎回使用していたのだが。

やはりレアなスキルであるから、育てるのにも時間がかかるということなのか。

「まあ、育たないってわけでもないだろうし、気にすることも無いか。それより……ルミナ、どうだ?」

「……はい、やはりいるようです」

ここに来るまでに気付いたのだが、どうにもフィールドに出現する敵の種類が変化しているらしいのだ。

どうやら、出現する敵に悪魔が追加されているらしい。

今の所、見かけるのはイベントで散々戦ったレッサーデーモンやスレイヴビーストなのだが、その出現パターンの変化そのものが不気味だ。

悪魔共が暗躍している、ということなのだろうか――何にせよ、この国から悪魔を駆逐できていないことは紛れもない事実。

奴らを完全に滅ぼすまで、この状況は終わらないのだろう。

「あの塔の中にも悪魔がいるんだろうが……また随分と、物々しい姿になってやがるな」

「何て言うか、灯台みたいな見た目ですね」

「火を灯してるってんだろ? なら、その表現もあながち間違いじゃないだろうさ」

緋真の言葉に頷きながら、俺は上空を見上げる。

道の先に見えているのは、白い塔型の建物だ。細く長いその形状は、確かに灯台のように見える。

しかし、その先端部分は黒い靄のようなものに覆われ、灯っているであろう聖火の光を確認することはできなかった。

「塔を奪われてるってのは、これのことか。登っていくしかないようだな」

「ですね。けど……やっぱり、門番がいるみたいですよ?」

「だろうな。いや、いなかったら興醒めってモンだが」

緋真の言葉に頷き、俺は塔の前――その入り口部分へと視線を向ける。

そこには、巨大な人影が仁王立ちし、入り口を塞いでいる姿があった。

姿形は人間のそれに近いが、あれは断じて生物ではない。生き物の気配というものを、感じ取ることができなかった。

■カースドゴーレム

種別:物質

レベル:35

状態:パッシブ

属性:なし

戦闘位置:地上

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

ゴーレム、か。外見は、おおよそ黒く染まった岩で構成された人形だ。

塔の入口の前で立ち尽くしているその姿からは、一切の感情を読み取ることができない。

どうやら機械の兵士と同じようなもので、感情らしい感情は有していないらしい。

となると、俺にとっては少々厄介な相手だ。殺気が無い相手というものは、どうにもやり辛い。

しかも見るからに岩の塊。斬れないことは無いのだが、やはり戦いづらい相手だった。

「ふむ……こいつはお前らの方が活躍しそうだな。魔法で片付けるか」

「何言ってるんですか先生、勿体ない!」

「……おん?」

何を言っているんだ、というのはこちらの台詞なんだが――何かおかしなことを言っただろうか。

そんな意思を込めて半眼で見下ろせば、緋真はゴーレムを指さしながら、若干興奮した様子で声を上げた。

「先生、足一本壊せますか? 私とルミナちゃんで両腕やりますので!」

「そりゃ構わんが……何故手足を封じる必要がある?」

「あれって、見るからにロックゴーレムの系列じゃないですか。ロックゴーレムって、生きている間なら《採掘》ができるんですよ」

「……魔物から直接《採掘》するのか」

「はい、運が良ければ結構レアなアイテムが手に入るかもしれないですし」

緋真の言葉を吟味しながら、俺はカースドゴーレムを観察する。

確かに、その体の質感は岩のようなものだ。ピッケルで叩くにはちょうど良さそうな材質に見える。

だが、相手が生きている間でなければならないというのは少々面倒な話だ。

足を破壊するとなるとやり方は考えなければならないが――さて、どうしたものか。

「……まあ、とりあえずやるだけやってみるか」

「そう来なくっちゃですよ! じゃあルミナちゃん、私が右腕を落とすから、ルミナちゃんは左腕で」

「分かりました、緋真姉様。上手く斬ってみせます」

どうやら、弟子たちのやる気は十分な様子だ。

何が手に入るのかはよく分からないが、何かしら使える素材であるならばとっておくに越したことはない。

俺は苦笑しつつスキルを入れ替え、《採掘》をセットする。

今の所、スキル効果による採掘ポイントは見えないが……果たしてあの新種っぽいゴーレムでも掘ることが出来るのか。

そこは、試してみなければ分からないか。

「よし……それなら、突入開始と行くか」

「はい! ルミナちゃん、行くよ!」

「合わせますっ!」

二人は頷き合い、同時にカースドゴーレムへと向けて走り出す。

その背中を見送りつつ、俺はタイミングを見計らって地を蹴る。

背後からの奇襲とはいかないが、波状攻撃気味に合わせれば相手の行動を阻害できるだろう。

「――【スチールエッジ】」

イベントで一気にレベルが上がった際に手に入れていた新たな《強化魔法》を発動し、武器の攻撃力を高める。

それと共に強く足を踏み込むのと、緋真がゴーレムに接敵したのはほぼ同時だった。

「《闘気》《術理装填》――《スペルチャージ》【フレイムバースト】」

一気にスキルを発動させた緋真に対し、存外に機敏な反応を見せたカースドゴーレムは、黒く染まった巨大な拳を緋真へと向けて振り下ろす。

巨大な岩の塊だ、直撃すればただでは済まないだろう。

――無論、それを悠長に受けるような弟子ではないのだが。

歩法――陽炎。

瞬時に減速することで相手の打点をずらした緋真は、目の前に落ちた拳へと飛び乗って、そのまま腕を伝うように跳躍する。

そして瞬く間にゴーレムの肩口まで駆け上った緋真は、そのまま大きくジャンプし、体を捻りながら刃を振り下ろしていた。

紅の軌跡を描いた緋真の一閃は、背後からゴーレムの肩口へと突き刺さる。

まるで溶かすように、炎の刃はゴーレムの肩を斬りつけ――次の瞬間、傷口に残留した炎が、弾け飛ぶように爆発していた。

「またえげつない効果になったものだな」

「負けていられませんっ!」

一撃で腕を落とされることこそ無かったものの、ゴーレムの肩口は大きく抉れ、その衝撃でバランスを崩している。

その隙を幸いと、ルミナは全身から金色のオーラを立ち昇らせ、更に同色の翼を広げて舞い上がる。

体勢を立て直そうと動きを止めるゴーレムに、ルミナは正面から立ち向かっていた。

光を纏う刀によって放たれた一閃は、ゴーレムの肩へと吸い込まれ、そこに傷を付ける。

とは言え、それだけで破壊できるほど甘い相手というわけではない。

ルミナの一閃は確かにゴーレムの肩に傷を付けていたが、その深さは緋真には及ばない程度のものだ。

――ルミナの攻撃が、そこで終わりであったならば。

「光の槍よ……ッ! 連なり、撃ち貫け!」

ルミナの背後に、二つの魔法陣が浮かぶ。

そこから放たれたのは、普段ルミナが使っているものと同じ、光の槍だった。

しかし、その数は普段とは異なり、魔法陣から一つずつ、そして刀の切っ先から一つ、計三つの槍がゴーレムの傷口へと突き刺さっていたのだ。

一点に集中して突き刺さった光の槍は、ゴーレムの肩口を深く抉る。

両肩を押される形になり、ゴーレムは足を前に踏み出す形でバランスを取る――その瞬間。

「――《生命の剣》」

二割五分ほどのHPを削り、刃を振るう。

狙う場所は、体重を支える際に最も負荷のかかる場所――即ち、膝だ。

相手は岩石の塊、鉄を斬るよりは楽だが、やはりやり辛い相手だ。

「おおおおッ!」

黄金のオーラを纏う一閃がゴーレムの左膝へと吸い込まれ、そこを削り取るように傷つける。

やはり岩の体を両断するには至らず――しかし、全てを一気に破壊する必要はない。

今、体重の大部分を支えているこの位置には、それだけの負荷がかかっているのだから。

そこに大きくダメージを与えれば、亀裂は自然と深くなる。

打法――討金。

そして俺は、自重で亀裂を深めた膝へと、太刀の柄尻を叩き付けていた。

それにより、より硬い金属によって衝撃を受けたゴーレムの膝は、大きく亀裂を走らせた状態へと変貌する。

もう一撃を加えれば確実に破壊できるだろうが――いや、最早その必要は無いだろう。

小さく笑みを浮かべ、俺はその場から退避していた。

瞬間――

「――【炎翔斬】ッ!」

地面に着地していた緋真が、まるで跳ね返るように跳躍する。

放たれた 魔導戦技(マギカ・テクニカ) は、まるで先ほどの軌道をなぞるかのように伸びあがり、脇の下からゴーレムの腕を抉る。

そして空中で宙返りするような形で体勢を立て直した緋真はゴーレムの背を蹴り――それと入れ替わるように、ルミナの魔法が放たれた。

「はああああっ!」

ルミナが掲げた左手より放たれたのは、光の砲撃。

それはゴーレムに突き刺さると爆裂し、ゴーレムは前方へと向けて大きく傾いていた。

今の衝撃によって、ゴーレムは前へとたたらを踏み――その瞬間、自らの重さに耐えきれなくなり、左膝が砕けてその場に倒れ込んでいた。

どうやら、右腕についても今の衝撃で千切れ飛んでしまったようだ。

「ルミナ、やれ」

「はい、お父様!」

残る左腕へと向け、ルミナが刃を振り下ろす。

眩い光を纏う刃は、開いた亀裂を正確になぞり、それを綺麗に斬り落としていた。

さて、とりあえず注文はこんな所だろう。

「いい感じですね、先生。中ボス扱いだったからか、結構HPの余裕もありそうですし」

「そりゃ良かったな……それで、こいつから《採掘》すればいいってことか?」

「ええ、その通りです」

頷く緋真は、既にピッケルを取り出している。

右足だけが残っているカースドゴーレムは何とか動こうともがいている様子だが、両腕と片足を失ってはどうしようもない様子だ。

動かれると厄介そうだったので、波状攻撃で手早く仕留めてしまったが、もう少し様子を見ても良かっただろうか。

まあ、何にせよこの状態になったからには、後は《採掘》を行う以外に道はない。

哀れみすら誘う様子のカースドゴーレムの様子に苦笑しつつ、俺もまたピッケルを取り出した。

「んじゃ、試してみるか……ルミナ、周囲の警戒を頼む。何か近づいてきたら迎撃してくれ」

「了解しました、お父様」

楽しげに首肯するルミナの様子には苦笑を返し、俺と緋真はカースドゴーレムの採掘に取り掛かる。

さて、果たしてどのようなアイテムが手に入るのか。

そして――こいつを配置したであろう悪魔共は、この様子に一体何を思っているのか。

靄のかかっている塔の上層を見上げつつ、俺は若干乾いた笑みを浮かべていた。