軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天才による偉業

オリエント魔導組合。

これがバナージたち、オリエント国の職人たちが加入した新たな組織だ。

この組合に入ると組合員は必ずここを通して魔道具を販売することが義務づけられる。

そして、魔道具に用いられる制御の魔法陣についてなどの技術も組合員以外に流出は禁止と定められた。

このオリエント魔導組合の目的はオリエント国製の魔道具の質の保証だ。

組合員が製作した魔道具がきっちりと使用に耐えられるものであるかを組合が責任をもって確認し、基準に合格したものだけを販売することとなる。

そうすることで、オリエント魔導組合専用の印を入れた製品は誰が買っても安心して使えることを内外に示し、そのほかの質の悪い魔道具との差別化を行うこととなる。

もしも、専用の印を勝手に第三者が使えば、それを取り締まることもやるつもりだ。

これは後でバナージたち議員の力も使って、それっぽい法律でも作らせればいいだろう。

ちなみに、職人たちを引き付けた制御の魔法陣だが、別に全く新しい新技術というわけではない。

少なくとも、俺の生まれた天空王国には以前からあり、そして、俺のそばでも常に使われていたものだ。

だが、それは間違いなくブリリア魔導国には存在しないといえる。

なぜなら、それはアイの魔法陣でもあるからだ。

もともと、アイの原型ともいえる魔道具として魔装兵器というものがあった。

精霊石を用いて作られたそれは、魔力を通すと岩の巨人となり操作することができる。

本来、その技術はブリリア魔導国にしかなかった。

だが、それをバルカで使えるようにしたのがカイル兄さんだ。

カイル兄さんは暗号化されたブリリア魔導国の魔道具をアルス兄さんから受け取り、たった一人で解読と解析、そして改良までもを行ってしまったという。

バナージたちのようなものづくりが得意で、高級品ではあるが魔道具に触れる機会が存在したオリエント国の職人たちですら、長年ブリリア魔導国の魔法陣技術には手が届かなかった。

だというのに、独力でそれらを再現し、改良したカイル兄さんはさらにアイまで生み出したのだ。

いや、正確にはちょっと違うか。

カイル兄さんが作った本当に重要な部分というのは、仮想人格だからだ。

アイというのは俺のそばにもいつもいる神の依り代の体を持つ女性ではあるが、それはアイの本質を指すものじゃない。

アイいわく、アイの体というのはあくまでも端末なのだそうだ。

そして、本体はというと遠く離れたカイザーヴァルキリーの中にいる。

ヴァルキリーを越えた圧倒的な存在であるカイザーヴァルキリーに仮想人格であるアイはいるのだそうだ。

つまり、なにが言いたいのかというと、アイの体は依り代を起動した俺の魔力を使いつつも、あくまでも遠く離れたアイ本体から遠隔操作されているにすぎない。

それを可能にしているのは、これまたカイル兄さんが作った魔法陣だ。

魔石に魔法陣を描きこむことで、その魔石を通してアイが魔道具を操作することができるようにした。

こんな魔法陣を作れるのは多分世界中でカイル兄さんだけだろうし、仮に同じような魔法陣ができたとしても仮想人格を作れる人は他にいないと思う。

制御の魔法陣というのは結局のところ、アイの魔法陣の亜種とでもいうべきものなのだ。

例としてあげると四枚羽もそうだ。

あれは、四つの羽の回転数を状況によって使い分けることで、自由自在に空を飛ぶことができる魔道具だ。

だが、その操縦はものすごく難しい。

どれくらい難しいかというと、四枚羽を操縦できるのはカイル兄さんしか無理で、そのカイル兄さんであっても目の届かない範囲では操縦はできなくなる。

それを実用化するために、アルス兄さんはアイに制御を委ねた。

つまり、アイの魔法陣を流用して四枚羽を制御しているということになる。

なので、これは東方ではほかには誰も作れていない。

それを使って製作するということは、間違いなく他の魔道具とは一線を画すものとなるだろう。

さすがに、そこまでの機能の差があれば、暴落後もオリエント魔導組合が取り扱う魔道具の品質についての評価が大幅に下落することはないと思う。

「凄いでござるな。このような機能を持った魔法陣を考え付く者がいるのでござるか。これと比べれば、拙者の作った魔弓オリエントなど児戯にも等しいでござるよ」

「カイル兄さんは本当に凄いですからね。アルス兄さんもいつも言っていましたよ。自分が天空王にまでなれたのはカイル兄さんがいたからだと」

「そうかもしれないでござるな。というよりも、まずは第一歩である魔法陣の解読だけでも偉業といってもいいのでござるよ。たった数種類の魔道具から共通点を見つけ出し、法則を理解して、それを応用する。常人にはけっしてできないことでござるからな」

組合に加入してから数日後に顔を出したバナージがひたすらにカイル兄さんのことに感心し続けている。

制御の魔法陣について、その由来について聞いてきたので答えてからずっとこんな調子だ。

職人として、どうやって自動で調整できるのか気になったのだろう。

だが、その仕組みまでは俺も説明できない。

魔法陣の形や使われている魔導文字は知ってはいるが、それがどういう仕組みで機能しているのかよくわからなかったからだ。

だから、バナージには俺の兄であるカイル兄さんが独力で作ったとだけ教えておいた。

俺が深く理解していないことがわかったのか、バナージもそれ以上は突っ込んで聞いてこないがどうやってそれが動いているのかは気になるのだろう。

多分、ほかの職人と一緒にこれからも研究していくんじゃないだろうか。

まあ、なんにせよ、これでオリエント製の魔道具について一定の保護はできることになったと思う。

あとは暴落を待つだけだが、そろそろ冬も終わり、春が来る。

なにもこの冬は魔道具にだけかかりっきりだったわけではない。

一応、オリエント軍も整備しておいた。

暖かくなったら動こうか。

そう思っているとき、新たな命が生まれたという報告が入ったのだった。