軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

不安定さ

アイがオリエント国の議長となり、俺が護民官として軍に影響力を持つことに成功した。

別にそれを目的に動いていたわけではないけれど、なんかものすごくこちらにとっていい風が吹いていると思う。

ならその流れに身を任せてみてもいいかもしれない。

「アイ、この後、俺たちはどうするのがいいと思う?」

「分かりません。アルフォンス様の目指す方向によるでしょう。アルフォンス様はこの後、何をしたいのでしょうか?」

「うーん、そうだなあ。俺は別にいつでも好きな時に戦えるようになればそれでいいんだけど」

「では、現状ではまだ不十分かもしれません。現在、オリエント国議会ではバルカ党に勢力がありますが、あくまで議員の中の一部に過ぎないからです。もし仮に、ほかにも政党が誕生した場合、勢力図が一変する可能性があります」

「アイが議長なら大丈夫じゃないの?」

「議長であることは大きな影響力を持ちますが、それですべてうまくいくというものではないでしょう。アルフォンス様の求めるいつでも戦闘可能な国家運営を行うのであれば、議席の過半数は確保できたほうが望ましいでしょう」

どうやら俺とは違ってアイのほうは現状を楽観視していないみたいだ。

バルカの影響力は今は大きくても不安定であるということを危惧している。

言われてみると確かにそうだろうな。

今まではオリエント国の議会では政党とよばれるようなものは無かった。

あくまでも個人や後援会のつながりによる緩い連帯関係はあっても、議員が組織として行動することはなかったのだ。

同じ傾向の考えを持つ者同士であっても、議題によって意見が正反対に分かれることはよくあるらしいからな。

だが、それを今回バルカは実際に政党というものを作ってしまった。

個人の考えよりも政党という組織の方針を優先して議員が行動することで、議会での議決の流れを決定づけやすくするという手法だ。

これは実際に大きな効果があり、アイを議長にするに至った。

しかし、この方法は別に俺たちだけしかできないものではないだろう。

そういう方法が有効であると知られてしまえばすぐにまねできる類のものだ。

そして、真似されてしまうとうちとしては確かに困る。

別に議席の半分以上を牛耳っているというわけでは全然ないので、別の政党ができれば主導権を握られる可能性もあるわけだからな。

これまでの慣例どおりであれば、すでに議長になっているアイがその立場から引きずり降ろされるということはないだろうが、第一党でなくなれば影響力はがくんと落ちてしまうことになる。

そういう意味でも、やられる前にやるの精神でバルカ党がなるべく早く過半数を押さえたいところだ。

「でも、どうしようもないんじゃない? 補選は終わったばかりだから、これ以上議員に変動はないわけだしさ。まさか、バルカ党以外の議員の命をさらに狙うのはちょっと無理だろうし」

「はい。それは推奨いたしません。あまりやりすぎると危険視されることになるでしょう」

「だよね。じゃあ、どうするっていうの? 今いるほかの議員に掛け合って過半数に届くまでバルカ党を大きくする?」

「いえ、それもあまりよい方法であるとは考えられません。バルカ党は発足時に党是を掲げました。バルカ党の綱領に賛同し、党の方針に従って活動するように求めているからこそ、議員になれた者たちばかりです。彼らならば今後も党に従って議員活動を行うでしょうが、すでに議員である者があとから合流しても党の方針に従うかどうかは不明です」

「ああ、そういう問題もあるのね。確かに数だけが増えても、バルカ党としてのやり方に従わないんなら意味ないか」

「はい。それに、継続性も考えなければならないでしょう」

「なんか考えること多いね。継続性ってどういうこと?」

「もし仮にバルカ党が過半数になったとして、それがいつまで続くかも問題です。選挙によって選ばれた議員が議会で国の行く末を決める、という仕組みは一定期間のたびに情勢が変わるという特徴があります。ですので、バルカ党の数を増やすと同時に、安定的に議席を確保できる方法が求められます」

なんだそりゃ。

意外とめんどくさいなと思ってしまう。

もしも、これが自分の土地として治める領主であればもっと好き勝手にできるのにと思ってしまう。

まあ、それを防ぐためにも議会なんてよくわからないやり方を採用しているのか。

この国で活動するなら、ここのやり方はある程度踏襲しないといけない。

もしも、ここで調子に乗って軍を使って領主のように俺がふるまったりしたら、さすがにこの地に住む人々はそれを嫌がるだろう。

ものづくりに命を懸けているような連中も多いし、意外と頑固者がいたりもするからな。

だからこそ、議会という方法を否定せずに、俺が好きに動けるように変えていくのが望ましい。

が、そうなると議会という仕組みによって、一定期間が経過すると必ず議員の入れ替えが発生してしまうことになる。

そのたびに、バルカ党が増減して過半数を確保できないようになれば安定性というのは確かに悪いな。

自分たちの勢力をいつでも多数派にする方法か。

そんな方法あるんだろうか?

俺はアイに言われた今後の方針を考えるためにも、なんとかその方法論をひねり出す必要に迫られたのだった。