軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

共犯関係

「な、なんだてめえらは。どういうつもりだ。なんでここを攻撃してきたんだよ」

「黙れ。貴様らは議員マクベス様殺害の嫌疑がかけられている。抵抗するなら容赦はしない。やれ」

「ちょ、待てよ。くそ、俺は悪くねえぞ」

都市国家であるオリエント国。

都市の周囲を壁で囲まれているその外側には貧民街が存在している。

都市内部に住む資格を持たない者や、市民権を持っていてもなんらかの理由でここに行きついた連中、そして、後ろ暗いことがある奴らが大勢いる。

そんな貧民街の一角にて、バルカ傭兵団がとある建物を包囲していた。

ここ一月ほど、オリエント国は緊急事態に陥っていた。

幾人もの議員の命が失われたのだ。

音もなく現れた刺客により、多数の議員の命が狙われていく。

それに、死ぬのはなにも議員だけではない。

それ以外にもオリエント国内では不審な死が数多く見られたのだ。

そんな情報が都市内部、そして、オリエント国に点在する村々に広がっていた。

とはいえ、その話の広がる早さは尋常ではない。

いくら重大事件だといえ、そんな話が村などにまで広がるのは普通ならばもっと時間がかかってもおかしくはない。

それを短縮させているのがバルカ教会だ。

オリエント国にいくつも建てられた教会を通して、各地に情報が回ったのだ。

もちろん、その情報の精度は多少落ちても仕方がない。

あくまでも噂話として広がっているにすぎないからな。

実際は刺客によって失われた命は議員だけのはずだが、人というのは毎日どこかしらでそれなりに亡くなっているのだ。

人口の多い都市の中であれば、探せば不審な死なんていくらでも見つかる。

そういった普段なら割とよくある不審死も、議員の死と絡めて「なにか関係あるのでは?」というふうに各地に情報が拡散されていたのだ。

こうなると、人々の心には不安が芽生える。

本来であればなんの関係もないただの市民までもが、「もしかしたら自分の命も狙われていて、いつなんどき襲われるかわからない」という心理状態になってくれたようだ。

あるいは、根も葉もない別の話を広めようとする者も出てくる始末だ。

そうして毎日どこの誰が襲われたなどという情報が出てくるたびに不安が増してくる。

そこに救世主として登場したのがバルカ傭兵団だ。

実はこの都市国家内での暗殺が始まる前にバルカ傭兵団も刺客に襲われていた。

その刺客の攻撃を防ぎきり、なんとか危機を脱した俺は情報を集めるために各地を駆けずり回った。

新バルカ街に傭兵たちを戻しつつも、各村や都市のすぐそばの森までも足を運び、情報を得た結果、ようやく犯人の足跡を掴んだのだ。

そのことを大々的に喧伝し、バルカ傭兵団はオリエント国へと集結し、議員襲撃犯への反撃に出たというわけだ。

すでに、ここを襲撃する前にも何か所か犯人たちの潜伏場所を攻略している。

なんといっても、議会に所属する議員たちが複数襲われているのだ。

一人二人の犯行ではありえない。

何らかの組織がかかわっているはずであるとして、その組織の潜伏先が貧民街だったというわけだ。

そして、バルカ傭兵団が動いた結果、明らかに議員が襲撃される件数が目に見えて減ってきた。

やはり、犯人が所属する組織は貧民街に巣食っていたのだ。

「この街を恐怖のどん底に陥れた悪鬼をバルカ傭兵団分隊長のゼンが討ち取ったり」

「ウオオオオォォォォォォ」

こうして、今日も貧民街では何の関係もないソーマ教国関係者が消えていく。

それを貧民街に住む貧民すらもが熱狂的に見守り、歓声を上げてほめたたえる。

バルカ傭兵団万歳、と。

めでたしめでたし。

※ ※ ※

「はあ。もうめちゃくちゃでござるな。まさかこんなことになるとは、拙者夢にも思わなかったでござるよ」

「大変でしたね、バナージ殿。心中お察しします」

「よく言うでござるよ、全く。それはともかく、おめでとうでござるよ、アルフォンス殿。望み通り、アルフォンス殿の要望のとおりに護民官への就任が決まりそうでござるよ」

「それはよかった。安心してください、バナージ殿。このアルフォンス・バルカ、護民官に就任した暁には、オリエント国の治安を守ることをお約束しますよ」

都市国家内にあるバナージの館。

そこで、顔を合わせたバナージの姿はひどくやつれていた。

しばらくの間、議員連中に軟禁されていたのが関係しているのだろうか。

いや、そうじゃないのはわかっているけど。

むしろ、その後の展開こそがバナージを憔悴させているのは明らかで、その原因は間違いなく俺にある。

バナージとしては非常につらい立場だろう。

今回の話が明らかに嘘に塗り固められているのは分かり切っている。

なぜなら、俺が狙われたのは貧民街に巣食う悪党からではなく、議員連中が依頼した影の者であることを知っているのだから。

そして、今回次々と議員が狙われて命を失っているのは誰がそうさせているのか。

もともと、この国の人間で議会の連中とも深くかかわっているバナージにとっては、知り合いを殺されているようなものなのだ。

平静を保っていられるはずもない。

が、それらの事実を知りながらももはや止められない。

事態はバナージがどうこうできる範囲を超えているといってもいいだろう。

何度も俺に問いただしてきたが知らぬ存ぜぬの一点張りだったからな。

なので、バナージがとりえる選択肢は限られていた。

真実をぶちまけて、俺が今回の事態を裏から糸を引いているかもしれないと主張するか。

あるいは、俺に協力して行動するか、だ。

結局、苦悩しつつもバナージは後者を選んだ。

俺がこの荒れた状況を打破できる唯一の存在であると、混迷を極める議会で持ち上げて護民官へと推薦したのだ。

そして、ほかの生き残っている議員へと手を回して、就任へと漕ぎつけた。

このことによって、もうこれ以上の議員暗殺は無くなるだろう。

そのかわり、今までとは比べ物にならないほど俺との秘密が共有されたわけだ。

それこそ、魔道具の販売などとは比較にならないくらい重い秘密だ。

こうして、俺とバナージは共犯者となり、俺は護民官になったのだった。