軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新生バルカ軍

俺がおかれた立場とバルカにおける戦力を考える。

まず、基本的なこととしては俺の意思というものがある。

こう言ってはなんだが、ぶっちゃけ俺にはそこまで領地欲や権力欲というものはないと思う。

フォンターナ家と武力衝突まで発展した俺がこんなことを言うと文句が出るかもしれないが、あれはその場の流れに流されるままに事態が進行してしまったにすぎない。

実際、自分から他の領地を狙って戦争を起こしますか、と聞かれれば間違いなくノーと答えるだろう。

やはりここは前世の記憶が関係しているのだろう。

平和が一番だ。

だが、前世の記憶だけを理由に戦わないという不戦主義をとる気もない。

いつでも貴族連中がどんぱちやっているこの世界ではどうしたって戦わなければならない機会が来るだろうからだ。

そして、それはいつかというと、おそらくフォンターナ家絡みのことになるだろう。

フォンターナ家当主であるカルロスがどこかと戦闘状態になった際には、配下である騎士に招集がかかる。

この招集を無視はできない。

せっかく手に入れたバルカの地を取り上げられてしまうからだ。

つまり、俺が戦場へと赴くのはカルロスの配下たちと共同でということになる。

以前、捕虜にした騎士からフォンターナ家の戦力はだいたい5000人程度だと聞いた。

対して、俺達バルカ軍はよくても300人規模だ。

しかも、俺は他の騎士たちに嫌われている可能性が高い。

捨て駒のように放置されても生き残れる部隊とならなければいけないわけだ。

つまり、バルカ軍のとるべき姿はバイト兄の言うように突進力に特化したものでも、バルガスのいうような籠城特化というものでもいけない。

高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に戦場で対応できる部隊でなければならない。

……そんなものが可能なのだろうか。

「要するに大将の言うことは攻撃力も防御力もあって、どんな事態にも対応できる部隊をつくろうってことになるのか?」

「アルス、そんな難しいことができるのか?」

「う……ん……。難しいけど、やるしかないだろ」

こうして、作りたい部隊の方向性だけはなんとか決まったものの、その部隊を作り上げることに俺達3人は頭を悩ませることになったのだった。

※ ※ ※

「放て!!」

「「「「「「氷槍」」」」」」

バイト兄とバルガスと部隊の作り方を話しあってから、新たな訓練が始まった。

それは本格的なヴァルキリーの騎乗訓練だ。

これまでヴァルキリーに騎乗することができるのは俺とバイト兄などごく少数だった。

それを改善するためにひたすら訓練を重ねている。

グランが主導していた鞍と鐙づくりによって用意された装備をヴァルキリーに装着させ、その状態で志願兵を乗せる。

【身体強化】の呪文を使って無理やり振り落とされないように乗りながら、毎日筋肉痛になるのを【瞑想】によって回復する日々が続いた。

そうして、徐々にだがヴァルキリーに騎乗することができる連中が現れはじめた。

俺が騎乗訓練用として貸し出しているヴァルキリーは角なしだ。

だが、騎乗している連中は手に武器を持っていない。

騎乗しながら武器を振り回すのは更に難しいというのもあるのだが、それ以外の攻撃方法の練習をしていたのだ。

それは騎乗しながらの魔法発動だった。

最初は命中力のある【散弾】を、そして、ある程度騎乗しながら呪文を使えるようになると【氷槍】を使うようにしている。

そう、結局俺が選んだ部隊づくりはヴァルキリーに騎乗した状態で魔法を放つというものだったのだ。

俺の持つ戦力で最高のものはヴァルキリーが多数いるということだろう。

魔法を使える角ありと使えない角切りがいる。

その角切りに魔法兵として騎乗させ、俺が合図を出したタイミングで俺が狙ったものを同時に狙う訓練を始めた。

もう二度と突進攻撃をしたくないという思いのある俺は、ヴァルキリーによる高速機動でのアウトレンジ攻撃をメインにすることにしたのだ。

数が少ない俺達がのこのこと武器を持って相手に近づいていくのはもったいなさすぎるという思いもある。

魔法による集中攻撃はよほどヴァルキリーが移動できないような地形ではない限り有効だろう。

「ブヒー……」

バルカ軍の訓練相手には大猪がターゲットになった。

【散弾】では満足にダメージを与えられなかった大猪だが、【氷槍】の集中砲火ならば硬化状態であってもダメージが与えられたのだ。

この訓練は割とうまくいっている。

というのも、騎乗しているのが馬ではなくヴァルキリーだからだ。

俺が騎乗しているヴァルキリーが群れを自由自在に誘導するため、多少騎乗技術が低くともおかしな方向へと走り出す個体がいないからだ。

一つの意思によって統一された集団が動くと、あたかもその群れが一個の個体であるかのように思うほどだ。

こうして、バルカ軍は魔法騎馬兵団として歩みはじめたのだった。