軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

救助の重要性

「これで、だいたい行けるところの救助はできたかな?」

「そうですね。このような災害時の救助は初動が大切です。最初の数日間が命を救うための重要な期間であり、それを過ぎると一気に生存率は落ちる可能性が知識の書では示唆されています」

「へえ。アイの知識の書にはそんなことまで情報があるんだな」

「はい。災害時の迅速な対応についてはアルス・バルカ様が提唱されたもので、それに関連した研究が行われています。賢人たちの何名かが、その研究結果を残していました」

「……そういえば、アルス兄さんも昔こういう大きな自然災害の時に救助をしたんだったっけ?」

「大嵐ではありませんが、以前大地震が起こったようです。その際のアルス・バルカ様の対応が現在の災害救助の基本となっています」

オリエント国の村々を駆けずり回って要救助者を助けて回った。

しばらくはそんなことを続けて、今はもう街に戻ってきている。

最初は行く先々で大嵐の被害にあった人を見つけることができたが、次第に探し出すための時間のほうがかかるようになったからだ。

運の悪い奴は氾濫した川の水に流されてしまっている。

もしくは土砂崩れに巻き込まれたりということもあった。

腕輪の反応があっても深い川の底だったり、土砂の中だったりで、だんだんと生存者を見つけるのが難しくなってきたのだ。

なので、俺は一度街に戻ってくることにした。

とはいえ、遺体であっても身内や知り合いが見つかると喜ぶものだし、いつまでも見つからないほうがつらいという意見もあった。

なので、何体かのアイは分隊長などに貸し出したまま、引き続き捜索はさせている。

そんな救助の要にもなっているアイだが、多くの村人たちが助かったのはアイがいたからで間違いないだろう。

どこにいったか分からない人の身柄を探すことだけではなく、発見した人を保護し、食料を与える炊き出しのやり方などもアイが教えてくれたことだからだ。

それに、生き残って動ける村人たちにはあえて仕事を与えることで、生きる気力を与える必要があるとも言って働かせていた。

どうもそれもよかったみたいだ。

気落ちして暗い顔をしている人たちを無理やり動かして、村にある家などをみんなで直していったのだ。

村人たちがそれぞれの家を協力して掃除し、泥をかき出し、屋根を修復することでひとまずは住むことはできる状態に戻した。

これのおかげで、いつまでも一時的に保護された教会には残らずに、生き残った人々を元の生活に戻すきっかけを作ることにも成功していた。

もしかしたら、俺や傭兵だけだったら、生き残った人を助けてはいおしまい、となっていたかもしれない。

というか、それだけでも十分すぎるくらいの助けだろう。

こういうことがあっても基本的には自分の力でなんとかするのが当たり前なので、オリエント国などはあまり動いていないからな。

なので、助けておしまい、というのでもよかったが、そうなったら生き延びた人も困っていたと思う。

なんせ、多くの家が使い物にならなくなっていて、食べ物も畑も被害が出ていたのだ。

途方に暮れてしまっていたことだろう。

アイの指示による的確な救助方針とその活動によって、俺たちが助けた村はほかの国の村などと比べるとはるかに早く復旧できているとクリスティナなども言っていた。

おかげで救助に向かったバルカ傭兵団の評判はよくなっている。

それもこれも、災害時に即座に救助すべしと言い始めたアルス兄さんの情報をアイが持っていたからこそだ。

昔、フォンターナ連合王国であったという大地震。

そのときに災害救助を強力に行ったのがアルス兄さんだったそうだ。

その当時の領地を持つ騎士たちも、そんな救助は必要なのかという意見の者たちばかりだったらしい。

土地を治めている騎士はあくまでもその地の持ち主であり、絶対的な権力者でもあった。

わざわざそこに住む貧民のために騎士らが人も金も使って救助することに意味があるのかと考えられていたのだとか。

アルス兄さんの救助活動の後も、そういう意見は消えなかったらしい。

なので、知識の書に情報を書き加えることができる賢人と呼ばれるもの好きの中の一部がそれを検証したらしい。

その後も、各地で起こった大小さまざまな規模の災害で、為政者が救助を行ったかどうかを調査したのだという。

その結果、特に災害が起きてからの最初の数日間だけでも救助をしたほうが、農地などの回復も早く、領民からの評価も高まると結論付けられていた。

そして、その報告を受けて、さらにどんなふうに救助するのがいいかと研究した者がいたことで、アイの情報はより強化されたというわけだ。

ただし、救助活動もタダではない。

ある程度の区切りをつけて引き上げることも必要だ。

村の救助については、もう少し続けた後に終了するしかないだろう。

「承知しました。私から生徒たちに伝えて、教会からそのように村には伝えておきましょう」

「そうだな。教会から言ってくれたほうが傭兵たちも引きやすいだろうな。で、後の問題は米だな。先物として購入した米だけど、俺が思っていた以上に嵐の範囲が広かったように思う。これだけの被害が出ているところに、すでに購入したとはいえ米を村から持っていっても大丈夫なのかな?」

これまでは、救助を急いでいたために置き去りにしていた問題。

それは、先物取引で購入した米のことだ。

農家の家が被害にあうほどの雨と風、そして氾濫があったのだ。

その被害が田んぼにないはずがない。

想像以上に被害のあるであろう田んぼからの収穫物である米を、はたして本当に持っていっても大丈夫なのかとアイに聞く。

もしも、強引に動けばこれまで高めたバルカ傭兵団の評判を一気に下げるどころか、底が抜ける可能性もある。

評判を気にしすぎる必要はどこにもないが、どうせなら大切にしていきたい。

アイにどう思うか、意見を尋ねたのだった。