軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

広がる教え

「精が出るでござるな、アルフォンス殿」

「……バナージ殿ですか。どうしたんですか? ちょっと今忙しいですが」

「ははは。見ればわかるでござるよ。そのようでござるな」

オリエント国でバナージと会う。

今日はローラに用事があったので、この都市国家まで来たのだが、ちょうどそこに現れたのだ。

俺の姿を見て笑っている。

「おかげさまで、バルカ教会の教えは広くみんなに知られているようです。そのために、互助会が忙しすぎるのが困りものですが」

「バルカの教えでござるな。拙者も聖典というものを拝読したでござるよ。なかなかに興味深かったでござる。かつて、あの霊峰の向こうへと移り住んだ者たちがいかにして生き延びてきたのか、それを少しだけ感じることができたのでござる」

「へえ。てっきり、魔法を使える者はバルカ教会の信者だ、って言ったのに対して、なにか言われるかと思っていたんですけど」

「その件についてでござるな。まあ、拙者としては別にそれで怒るようなことはないでござるが、人によっては怒りをその身に抱える者もいるかもしれないでござるな。なにせ、信仰とはその人それぞれに持っているものなのでござるから」

「そのわりには、今のところ大きな声で文句を言ってくる人はいませんね?」

「それはそうでござろう。アルフォンス殿が互助会なるものを作ったでござるからな。あの互助会では信者同士が助けあう。ということは、互助会に入っていない者については信者ではない、とも言えるのではござらんか? 内に秘めた思いはありつつも、そういうふうに割り切って考えているのでござろう」

新バルカ街では、互助会の仕組みはうまくいっている。

だが、互助会に入ろうとオリエント国や各村からも人がひっきりなしに来ることになってしまった。

そのための対策として、俺は互助会用の建物をほかの土地にも作ろうかと考えたのだ。

オリエント国や各村にて新たに土地を買い、建物をたてて、互助会という組織を新バルカ街とは分けて配置する。

今はその検討段階だが、それがうまくいけば、人の流れが分散されて負担が減るはずだ。

なので、それを実現するためにも、俺はかなり動き回っていたのだ。

そんなときに、この街での現状についてをバナージから聞けたのは正直ありがたい。

というのも、新しい宗教がどうやら認められているらしいからだ。

もともと、急に出てきた宗教なんて普通は怪しげで、変なものとして見られてしまうだろう。

俺が広げようとしたバルカ教会での教えもそう受け取られる可能性はあった。

オリエント国を動かしている議会や議員たちから、危険な宗教とみなされて布教禁止と言われる可能性もある、とはクリスティナの言葉だ。

しかし、どうやらそうはなっていないようだ。

魔法を使える者は全てバルカ教会の信者だ、という部分については思うところがないわけでもないみたいだ。

ただ、それも互助会に入っていないなら自分は信者でもなんでもない、と流してくれているらしい。

それもこれも、この互助会が非常に評判になっているからではないだろうか。

急に出現したこの宗教は、人助けを行うのだ、と言って実際にそのための活動を始めた。

互助会に入った信者同士で問題を解決する、というのが基本ではある。

だが、人がいればいろんな問題が起こる。

なかには話し合いや協力ではどうしようもない問題もあるだろう。

が、そこにバルカ傭兵団という武力を持つ者が加わっているために、大きな揉め事にも適切に対応できた。

血が流れてもおかしくない問題もあるが、バルカ傭兵団の存在はある程度の抑止力として機能している。

また、問題の解決に力だけを使うわけではなかったのもよかったらしい。

もしも、互助会の問題解決方法が武力だけだったら多くの人に受け入れられたりはしていなかっただろう。

そうではなく、あくまでも力に頼ることなく解決に導く方法があった。

それには、血の楔が大きな役割を果たした。

互助会に入った者は全員、教会で儀式をしていた。

そして、その儀式の中には「裁判では真実を話すこと」という決まりが存在する。

もしも、裁判でうその証言をすれば、たちどころにうずくまり、胸を押さえて苦しみの声を上げることになってしまう例のあれだ。

つまり、問題が発生した時、その両者が互助会に入った信者であれば虚偽の証言ができない裁判が行われるようになったのだ。

たいていの場合は、問題が発生した際、うその証言が出てくるものだろう。

それらを一目でわかる形で排除して行われる裁判というのは、見ている者に対して大きな説得力を与えたのだ。

この裁判の有効性が知れ渡るほどに、互助会に加入する者は増えていった。

自分が裁判で嘘を言えなくなる代わりに、強力な身の潔白を証明する手段を手にすることができるからだ。

自分は悪いことをしないと思っている者ほど、進んで互助会に入り、逆に入らない者はなにかやましいことがあるのではないかと後ろ指をさされるほどにまでなってきたのだ。

そのおかげか、バルカ教会のことを評価する者は一般市民だけではなく、議員にも増えつつある。

この感じだと、これからもバルカ教会のことはそう悪く言われることはなさそうだな。

そんなこんながあり、バルカ教会は信者を獲得しながら、この都市国家以外でも各村で多大な支持を取り付けつつ勢力を拡大し続けたのだった。