軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新興宗教

「まず、前提を話そう。バルカ傭兵団は俺のものだ。で、俺はオリエント国から土地を買って、一級市民の権利も持っている。けど、傭兵団はオリエント国のものではない。国軍ってわけじゃないからな」

「ええ、そうね。確かに傭兵団って普通はその時々で誰とでも取引するものよ。こんなふうに街まで持っているのは珍しいと思うけど」

「そうかもね。なんにしても、バルカ傭兵団はオリエント国の依頼は受けることはあっても、基本的には自由ってことだね。でも、それじゃあどんな原則で戦いに参加することになるのかって気になるかと思う。それを人助けにするんだ。困っている人を助けるために動くってことだね」

「それがよくわからないのだけど。人助けと言っても、だれかれかまわず助けるなんてわけにはいかないでしょう? どういう人を助けようっていうの?」

「バルカの教会に助けを求めに来た人。あるいは、バルカの魔法を使う人、かな」

今後のことについての動き方について、クリスティナと話し合う。

俺はバルカ傭兵団がオリエント国の都合で戦いに出られるかどうかが決まるのが嫌だった。

というか、バナージの対応を見ていてそう思った。

どう考えても、オリエント国は戦いには消極的だったからだ。

もともと、この国はものづくりの技術と外交で国を維持してきたからだろうか。

積極的に自分たちから動く気がないみたいだ。

そんなオリエント国に付き合っていたら、俺はいつまで経っても戦場に出ていけないだろう。

今回のように防衛を理由にするくらいしか方法がない。

が、それだと面白くない。

なので、もっと外に出ていきやすい理由を作ることにした。

それが人助けだ。

そして、その助ける対象は教会を基準にすることにした。

この場合の教会というのはもちろん、この新バルカ街にある教会だ。

ハンナがまとめているあれだな。

「ちょっと待って。どういうこと? ここの教会って確かにあの寒さを和らげてくれる天空王様の像があるからお参りする人はいるわ。けど、この街以外の人であそこに来る人なんていないわよ? それに、魔法を使う人が対象ってどういうことなの」

「もともと、この小国家群で広がっている魔法って、アルス兄さんがきっかけだったんだよね。つまり、それってバルカ由来の魔法ってことでしょ? で、ここの教会はそのアルス兄さんとヴァルキリーの姿を模した像を祀っている。つまり、バルカ教会ってことだね。そのバルカ教会にバルカの魔法を使える人が助けを求めたら、アルス兄さんの兄弟である俺としては助けてあげたいと思うじゃん。というわけで、魔法を使える人を助けるためにバルカ傭兵団は動く、ってことにしようと思う」

「……それって、もしかして魔法を使える人は無条件でバルカ教会の信者ってことにして、信者を助けるために動こう、とかそういうことかしら。要するに、新しい宗教でも作ってそれを利用しよう、と」

「ま、そういうことになるかもね」

クリスティナが一言でまとめてくれたが、まさにそのとおりだ。

この新バルカ街にあるバルカ教会。

この教会を最大限に利用する。

今のところ、バルカ教会の信者と呼べるような者はあまりいないだろう。

もともと、このあたりの風習では特定の大きな宗教というのはなく、いろんな人がいろんなものを祀ってあがめていると聞いている。

神に相当する対象があるひとや、荒れ狂いしょっちゅう氾濫する大自然の川や雨を上位存在として大切にしている人もいるらしい。

だったら、俺も勝手に宗教を作ってしまおうと思ったわけだ。

生活を助ける生活魔法や、農業その他でも多大な恩恵を与える魔法。

小国家群で広がったその魔法は、実はバルカ教会が起源であると喧伝するのだ。

それはけっして間違いではない。

西ではそれは聖光教会の領分だけど、こっちには聖光教会の人間っていないしな。

俺が作ったバルカ教会がその代わりを担ってもいいだろう。

バルカ教会は魔法を使えるようになった者を受け入れる。

つまりそれは、魔法が使えるという時点で強制的に信者であると認定してしまうことも可能になる。

そして、信者が教会に助けを求めた際は、教会に代わってバルカ傭兵団が動くこともあることにする。

これは傭兵団に対しての依頼主がオリエント国から教会になるとも言えるかもしれない。

そして、最後に肝心なのが、信者がいつでも教会に助けを求められる状況にあるとは限らない点だろう。

つまり、何らかの理由によって困っている信者が助けを求めたくともそうできない場合がある。

その場合には教会からの依頼で独自にバルカ傭兵団が動くこともある。

「え……。それってもしかして、相手が困っていると言ってこなくとも、困っていそうだから助けに向かうとかそういうことを言っているの?」

「正解。そのとおりだよ、クリスティナ。バルカ傭兵団は教会からの依頼でいつでもどこでも駆け付ける。つまり、魔法が使える人がいる場所で争いがあれば、首を突っ込めるということでもある」

動く気のなさそうなオリエント国。

それとは無関係に戦場に出るための方法。

それは、魔法を使えるようになった者は強制的に信者であるとみなして、そいつらが困っていそうだと判断したらそこに介入できる、というのがバルカ傭兵団の動く基準というのはどうだろうか。

もちろん、すべての動きに対応できるほどバルカ傭兵団は規模が大きくはない。

なので、どこに介入するかはこちらが判断する、ということになる。

「もしかして、パージ街にハンナちゃんを連れて行ったのはそれが理由だったの? 教会の存在を認知させるつもりだったのね?」

「もちろんほかにも理由はあったんだけどね。儀式をしてもらう必要もあったし」

「けど、その設定は無理があるわよ。魔法が使える人って言っても、【命名】を使ってだんだん増えていっているじゃない。遠くの土地から助けを求められたってどうにもできないし」

「だから、最初はオリエント国内、あるいはその近隣国で布教しよう。どうせ、戦いに行く可能性があるのは隣国くらいまでだろうしね」

うむ。

我ながら無茶苦茶なことを言っていると思う。

けど、別に理由なんてなんでもいいしな。

どんな屁理屈であっても、それっぽい理由があって、それを根拠に傭兵団を動かしているんだと言い張ることができれば十分だからだ。

というわけで、とりあえずはオリエント国内で布教でもしておこうか。

各村に散っている傭兵を使って、オリエント国中の村でバルカ教会のことを宣伝でもしてもらうことにしようと考えたのだった。