軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世論操作

「なんかいいもんないかな?」

「アルフォンス様、俺たちはあっちを見てきますね」

「うん、よろしく。いいものがあったら、まず俺に持って来いよ」

「了解です」

パージ街での戦いは終了した。

グイードやグレアムといったパージ家の主だったものを倒したことで、戦闘行為は終了し、今俺たちは街の中心部にある建物にいる。

そこは、この街の宝物庫らしい。

大きな蔵がいくつも並んで建っているところへやってきた俺たちバルカ傭兵団は、ここでお宝を物色することにしたのだ。

重い扉を開けて蔵の中に入る。

ぎいっと音をたてて開いた扉の奥からほこりが舞い、全員でゴホゴホと咳き込みながらも中の様子をうかがう。

そこにはたくさんの棚があり、その棚の上にいろんな品物が置かれていた。

「なんだこれ?」

「ここは陶芸品が多いみたいですね。壺とか湯飲みみないなものがたくさんあるみたいですよ」

「……これって高いのか、ゼン?」

「俺にわかるわけないでしょう。俺は農家出身なんですよ? それより、アルフォンス団長こそ、どうなんですか? こういうのの目利きってできないんですか?」

「うーん。なんとなく作りがいいんだろうなってのは分かるんだけどね。ただ、どれがどのくらいの価値があるのかは正確には分かんないや。ここを見るのはあとにしようか。陶芸品なんてどうせ運んでる途中で割れるだろうし、持って帰れないよ」

「じゃ、次の蔵を開けましょう。次はいいものが入っているといいですね」

パージ街での戦いに勝利した俺たちは、次々と宝物庫を開けて中を物色していく。

途中でウォルターたちの部隊が武器庫を発見したようだ。

そこには、なかなかによさそうな武器が保管されていた。

陶芸品と違って武器はいい。

美術品というよりは実用品として使えるからだ。

それに、いつも使う武器ならばある程度どれがいいか俺たち傭兵でもあたりを付けられる。

まあ、分からなくとも剣を選んでおけばまず間違いないだろうしな。

というわけで、武器庫の武器は傭兵たちに好きなように選んで持って帰らせることにした。

かなり喜んでくれたみたいだ。

みんながあれこれ言いながら、思い思いに武器を選んで腰に差している。

「アルフォンス団長は武器庫を見に行かなくていいんですか?」

「ん、俺はいいよ。武器は十分にいいものを持っているからな。お、こっちの蔵もかなりあたりだな。金目のものが置いてあるぞ」

「おお、これはすごいですね。金じゃないんですか? あっちには銀もあるみたいですよ」

武器庫はみんなに任せて、最後となる蔵を見るとそこにはまさに金銀財宝といった感じのものばかりがあった。

金塊、銀塊、宝石などが棚の上に所狭しと並べられている。

これらはどう見ても値打ちものだろう。

これは俺がもらっていこう。

そう決めた俺は、この宝物庫にあったお宝を次々と魔法鞄に詰め込んでいった。

「でも、いいんですかね、こんなことをしていて」

「ん? なにかまずいのか?」

「いやー、だってそうでしょう。アルフォンス団長はいろいろと理屈を言っていましたけど、結局のところ勝手にパージ街に攻め入ったわけじゃないですか。これってあとからバナージ議員とかにいろいろ言われるんじゃないですか?」

「一応、国を守るためにって大義名分があるから大丈夫だろう。それに、念のためにも手は打ってある」

「そうなんですか? どんな手を打ったって言うんですか?」

「噂を流した。パージ街に大軍が集結しつつあり、それがオリエント国を狙って動いているってな。俺たちはそれを未然に防ぐために少数で孤軍奮闘して戦ったんだよ。褒められることはあれども、文句を言われる筋合いはないさ」

「へー、そんな噂を流していたんですか。あ、分かりましたよ。あの腕輪での暗号ってのを使ったんでしょう。それで、ローラさんにそういう噂を流してもらっているってことですね」

「おしいな、ゼン。ちょっと違うよ。噂を流したのはオリエント国なのは間違いない。けど、それはあの都市国家だけじゃないのさ。オリエント国に属する多くの村でも今頃この噂話で持ちきりになっているはずだ」

「……村で? もしかして、村の警備の仕事に行った連中に噂を流させているってことですか」

「正解だ。こういうのはどこか一か所で噂が流れるよりも、いろんなところで話が広まっているほうが信憑性が増すんだよ。せっかく、オリエント中にバルカ傭兵団の傭兵たちが散らばっているんだ。上手く使わないとね」

どうやらゼンはこの街とバルカ傭兵団が戦ったことを気にしているようだ。

オリエント国の議会などから文句が出ないかどうかと心配しているらしい。

だが、その心配に対する対処はすでに行っていた。

それはオリエント国にある村々で噂を広げるというやり方だった。

すでにアイに追尾鳥なども利用して各村で行動に移すように指示をしてある。

普通、いろんな情報というのは人の口を伝って広がっていく。

自分が住んでいる場所の外の情報だったら旅人や商人から話を聞くのが多いんじゃないだろうか。

それは、基本的には議会にいる議員たちも同じだ。

バルカ傭兵団みたいに遠距離の情報を一瞬でやり取りできる方法は多分ないだろうしな。

だから、その情報伝達の遅さを利用して俺は自分の行動を正当化することにした。

このパージ街にはオリエント国を狙う大軍がいて、それを撃退するために俺たちバルカ傭兵団は戦ったのだと状況証拠を作ることにした。

そのために、いろんなところで話を広げることにしたのだ。

それは議会のある都市国家内だけではなく、ほかの村でもだ。

あちこちで同様の話があることで、情報は真実性を帯びてくる。

これはバナージからこの仕事を引き受けた時にも考えていたものだった。

オリエント国の村々に傭兵を派遣するということは、情報操作がしやすくなりそうだと感じていたのだ。

たしか世論操作とかいう手法だ。

アルス兄さんもこのやり方を利用していたらしい。

それを今回実行する。

もしこれがうまくいけば、今後もある程度オリエント国内の情報を操作、誘導できるかもしれない。

どのくらいうまくいくんだろうか?

まあ、失敗してもいいや。

なにか言われたらここで手に入れた金目のものでも渡して不問にしてもらえばいいだろう。

こうして、パージ街を攻略したバルカ傭兵団はお宝を手に入れ、この街を占拠することにしたのだった。