軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

緊急輸血

「よし、ここらは片付いたな」

「そ、そうですね……」

「血が流れすぎてるな。ほんとうに大丈夫か、キク?」

攻撃を受けていたキク分隊に助けに入った俺は、ノルンによる血の鎧の守りを最大限に活用して暴れまわった。

俺と俺が騎乗しているヴァルキリーが真っ赤な鎧で相手の攻撃を受けながらも、平気な顔して氷の槍をブンブン振り回すように攻撃する。

目の前の相手をすべて貫くように槍を使い、そして、最後の相手も仕留めた。

そこで、キクに声をかける。

それに大丈夫だと答えるキクだが、どう見てもそうは見えない。

すでにグイードを仕留めて黒死蝶は消えてしまっている。

だが、それでも失った血が元に戻るというわけにはいかないようだ。

全身からあちこち血を流して、もともと赤を基調としたバルカ傭兵団の制服がさらに血で赤く染まっていた。

いくら何でもこれはちょっとまずいだろう。

「キク分隊、全員集まれ。とりあえず、血を補充してやる」

このままではこいつらの命が危ない。

あまりにも流れた血が多く、そう判断した俺はこの場での輸血を行うことにした。

流れ出た血を元に戻すことはできなくとも、代わりに血を入れることはできる。

体力的にはすぐには回復しないだろうけれど、出血死することはなくなるはずだ。

「血の補充ってそんなことできるんですか?」

「問題ない。ほら、傷を見せてみろよ」

俺が血の補充をすると言ったことにたいしてキクや他の者は、いきなり何を言っているんだという雰囲気になった。

まあ、そういう顔をするのも仕方ないかもしれない。

ハンナやミーティアなどには輸血をしていたけれど、獣人関係者以外ではほとんどそんなことをしたり、しているところを見せたりしていなかったからだ。

血の契約も基本的にはハンナに魔石を預けて代わりにやらせていたからな。

だが、押し問答している暇はない。

なにせ、ここはまだ戦闘を行っている現場なのだから。

この場にいた兵は倒したものの、すぐにほかの兵が来るかもしれない。

ゆえに早く治療を終わらせる必要があった。

「ほら、まずはキクからだ」

そう言って、俺は傷ついたキクの体に手を当てる。

俺の手のひらから、ノルンが血を送り込んだ。

キクが「ウッ」と声を上げる。

自分の体に多量の血が送り込まれるという経験をして、ちょっと気持ち悪いのかもしれない。

ただ、効果はてきめんだった。

それまでは青い顔になっていたキクの肌に赤みがさして、明らかに健康そうな雰囲気に変わった。

それを見て、ほかの傭兵たちも安心したようだ。

特に文句なく、俺からの輸血を受けた。

「アルフォンス様ってこんなこともできたんですね」

「驚いたか? まあ、グイードみたいに血を流させる魔術もあるんだしな。俺のは血を操る魔術って言えばわかりやすいか」

「血を操る。すごいですね。でも、それなら黒死蝶の効果も打ち消してくれればよかったんじゃ?」

「んー、よくわからないけど、無理だったみたい。血でできた魔剣が形を維持できなかったしな。言いたくないけど、相性が悪かったな。キクには助けられたよ」

「そ、そんなことないですよ。俺がいなくてもアルフォンス様ならあんな爺さんに負けるはずありません」

「それでもだ。助かったのは事実だよ。よくやった、キク」

「は、はい。ありがとうございます」

キクに輸血した後、ほかの傭兵にも順番に血を補充していった。

どうやら、奇跡的に全員生きているようだ。

怪我をした奴ばかりだが、命に別状はない。

一人ひとりに血を送り込みながら、よくやったと声をかけていく。

「それで、次はどうするんですか?」

「まずはウォルター分隊のほうと合流しよう。この先に進んだ場所にいるはずだ。で、そのあとはイアンとも合流して戦闘を終わらせる」

「わかりました。もう全員動けるのでいきましょう」

一通りの治療は終わった。

一応分隊にいる二十五人にたいして血を補充し、【洗浄】をかけて明らかにやばい傷口などは止血しておく。

ノルンの効果で深い傷も血を止めておいたので、多分大丈夫だろう。

そんなキク分隊と一緒にまずはウォルターのほうと合流した。

こっちもそれなりに激しい戦いになっていたようだ。

両横と後方を建物や壁で囲まれたグイードの残党兵たちだが、かなり抵抗したようだ。

どうもグイードの遺体を守ろうと必死になって戦ったらしい。

攻撃を仕掛けてきたウォルター分隊に必死の抵抗を続けていた。

ただ、ウォルターのほうも負けていない。

相手を包囲し、逃がさないように追い詰めながらも確実に損害を与えていたようだ。

そこに俺とキク分隊が合流したことで、一気に形勢が傾いた。

しばらく戦闘が続き、そこも制圧が完了した。

その後、キクにも言ったとおりイアンたちと合流することを目指して移動し始める。

この時、キクやウォルター、そのほかの傭兵たちの士気は最高値まで上がっていた。

だが、それとは対称的に俺のほうはかなり頭が冷えていた。

どうしようかな、これから。

このままイアンと合流して、そのあとどうするか。

というか、このパージ街をどうすべきか。

すでに俺の頭の中は勝利した後のことへと向けられていたのだった。