軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スフィア家

「わー、ハンナおねえちゃん、おめでとー」

俺の隣にいたミーティアが声を上げながら手を叩く。

それと同時に、ほかの人も拍手をしたことでぱちぱちという音がそこらに響き渡った。

キラキラとした目でハンナの結婚姿を見ているミーティアの隣ではユーリも新郎新婦の姿を見つめている。

そんな二人とは俺を挟んで逆側にローラもいた。

「まさか、ハンナちゃんが結婚するとは思いませんでした。しかも、相手があのイアンさんだなんて」

「予想外だった?」

「はい。けど、よかったですね、アルフォンス様。これでイアンさんもこの街にもっと溶け込んでくれるでしょう」

「そうなればいいけどね。イアンの奴って結構一人でいることを気にしないし、ほかの奴もなかなか話しかけられなかったみたいだしな」

「アトモスの戦士はお強いですからね。なかなか対等に話をできる人というのは少ないでしょう。そういう意味では、アルフォンス様と仲が良かったハンナちゃんがイアンさんのそばにいるのはいいことかもしれませんね」

二人の姿を観ながらローラが言う。

オリエント国で議員としての仕事を始めたばかりで忙しそうにしていたローラだが、イアンとハンナの結婚があるということをアイを通して聞いて、すぐに新バルカ街へと飛んで帰ってきた。

二人の結婚はローラにとっても結構衝撃だったようだ。

そんなローラの言うように、イアンはこの街でちょっと孤高の人という感じがあった。

あんまりにも強すぎるイアン。

そんなアトモスの戦士に周りの傭兵たちはなかなか近づきにくかったらしい。

何か用があるときはだいたい俺かエルビスが要件を伝えていたのも悪かったのかもしれない。

そのため、ちょっと周りから浮いていることが多かった。

それがハンナと結婚してどのくらい変わるかはわからない。

が、最近になってわかったことだが、どうやらイアンの奴は意外と子どもに優しいところがあるらしい。

戦場で戦うことが生きがい、みたいなことを言っていたのであんまり子どもとかかわらないのかなと勝手に思っていた。

実際、俺が孤児を集めた時も自分から積極的にかかわってこなかった。

だが、ハンナとの結婚が決まってから、その準備のために子どもたちがいろいろと協力して準備をしてくれたのだ。

その中にイアンの晴れ着を作るというのもあった。

【見稽古】で裁縫技術を覚えた子どもたちが、イアンの体の各部の大きさを測って、結婚式のための服を繕っていく。

その時に判明したのが、イアンの面倒見の良さだった。

自分からは子どもに近づいていかないくせに、子どもがそばにきたら気にかける行動をするイアン。

その優しさが子どもにはすぐに伝わったのか、今までちょっとイアンのことを怖がりぎみだった子どもたちはすぐにイアンに懐いてしまった。

今では継承の儀を終えたイアンのたくましい腕に何人もの子どもが嬉しそうに笑いながらぶら下がっている光景なんてものも見られるくらいだ。

気づいたらミーティアやユーリまでもがそこに混ざっている。

そんな子どもに優しいアトモスの戦士の姿を目にして、多くの結婚式の大人の参加者たちが驚いている。

もしかしたら、今のイアンの姿を見て、大人たちもイアンともう少し近づいてくれるかもしれないな。

そうなれば、もっと傭兵団の中でもイアンと親しい連中が出来上がるかもしれない。

単純に戦術にも幅を持たせられるようになるし、そうなってくれると俺もうれしい。

イアンの結婚姿を見ながら、そんなことを考えていたのだった。

「おめでとう、イアン」

「ああ。ありがとう、アルフォンス。それで、お前に頼みたいことがある」

「ん? なに、頼みたいことって?」

「俺とハンナの姓を決めてくれないか?」

「俺が? いいのか? この新バルカ街の教会で継承の儀をする者は、自分たちで好きな姓を名乗ることを認めてるんだ。イアンとハンナの二人で好きなものに決めてもいいんだぞ?」

「俺は自分の命をお前にささげると誓った。そのことはハンナも承知している。だから、姓もお前にささげる」

「わかった。んー、ならそうだな。ならスフィアってどうかな? イアン・スフィア。大地の精霊が宿りし偉大なる石アトモスフィアから取るってのは。どうかな?」

「スフィア家か。いいな。面白い。ハンナはどうだ?」

「うん。いいと思う。ありがとうございます、アルフォンス様。これからは私もハンナ・スフィアって名乗らせてもらいますね」

「気に入ってもらったようでよかったよ。二人とも、改めておめでとう」

イアンの提案で二人の姓を俺が決めることにした。

スフィア家の誕生だ。

急に言われてぱっと思いついたのがアトモスフィアだったので、そこからとることにしたが思った以上に気に入ってもらったようでよかった。

こうして、この新バルカ街に新しい姓を持った特別な家が生まれたのだった。