軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

意中の相手

「イアン、いるか?」

「どうした、アルフォンス? また訓練か?」

「いや、今日は違うよ。ちょっと聞きたいことがあってね」

「なんだ?」

「イアンって結婚する気ないのか? ハンナと結婚しない?」

新バルカ街の中心部。

俺の家がある場所からそれほど遠く離れていないところにイアンの家がある。

そこへ向かった俺は、家の中にいたイアンに対してすぐに用件を切り出した。

ハンナの結婚相手。

ハンナに誰がいいと聞いたところ、実はと教えてくれた意中の相手がイアンだった。

正直意外だ。

あんまりイアンと話しているところを見たことがなかったからな。

ただまあ、なくはないか。

このバルカ傭兵団の中で一番強いのってイアンだし。

それは戦場に出ていっても最も死ににくいということでもある。

「ハンナというと教会の少女か。お前の女じゃなかったのか、アルフォンス?」

「違うよ。ハンナに結婚するように言ったら、相手はお前がいいって言ったんだ。で、イアンはどうかなって思って話を持ってきた。どうでもいいけど、イアンって結婚していないんだよな?」

「ああ、していないな。俺たちアトモスの戦士は生まれ故郷の里で婚姻を結ぶ。そこが壊滅して、アトモスの戦士が散り散りになったからな。相手が見つからなかったのもある」

「もしかして、アトモスの戦士は同じ里出身者同士じゃないと結婚したら駄目とかあるのか?」

「本来ならな。ほかの土地の女と契りを結んだとしても、強い戦士が生まれてこないことが多いとされている」

なるほど。

そういえば、バルカニアにはライラさんとかいたなと思い出す。

女のアトモスの戦士で、イアンやタナトスさんと同じくらい強い人だ。

アトモスの戦士は女性でも強い。

それは、巨人になることができるのもあるけれど、魔力量の多さも関係している。

多分、あの大きなアトモスフィアが関係しているんだろう。

アトモスの戦士風に言えば、大地の精霊が宿りし偉大なる石、だったっけ?

あれはアルス兄さんから言わせれば迷宮核なのだそうだ。

強力な力を持ち、周囲の魔力濃度をあげるアトモスフィアがあったアトモスの里では、男女ともに魔力量が多い人が多かった。

そんな人たちがお互いに結婚し、子どもを産む。

すると、さらに魔力量の多い子どもが生まれてきて、そして迷宮核のそばで育つ。

そんなことを繰り返してきたからこそ、アトモスの戦士は誰もが強い一族になったんだろう。

そういう意味で言えば、別の土地で生まれ育った普通の女の子とアトモスの戦士であるイアンが子どもを作っても、弱い子が生まれることになる。

ハンナは魔法を創り上げたけど、ほかの人に名付けをしているわけではないので、魔力量は人並だ。

「なら、駄目かな」

「いや、いいぞ。結婚できないわけではないからな」

「そうなの? あんまり子どもの強さにはこだわらない感じなのか?」

「もちろん生まれてくる我が子が強いに越したことはない。ただ、ここ数年、この地に来てからほかにアトモスの戦士の生き残りがいないか探したが、全然情報がない。ここらが潮時だろう」

「そうか。そうだな。アトモスの戦士が戦場で出てくるかもと思っていたけど、全然いないもんな」

イアンが俺についてここまで来た理由。

それは、戦いの場に出なくなったアルス兄さんのそばにいるのが嫌になったことも関係している。

アトモスの戦士は傭兵の一族であり、常に戦場に身を置きたいと考えていたイアン。

だが、そんなイアンの想いとは裏腹に、アルス兄さんは天空王国を鎖国化した。

それを嫌って、俺と一緒にここまでやってきたのだ。

しかし、そのほかの理由としてアトモスの戦士を探すという目的もあったらしい。

かつて、戦場で恐怖の代名詞として活躍したアトモスの戦士たち。

そんな一族はブリリア魔導国の魔導兵器に敗れて壊滅した。

当時見つかった生き残りはバルカニアに移住することになったらしいが、それ以外にもまだ生き残りがいるかもしれない。

そう思っていたからこそ、イアンは他にも誰かいないか探していたそうだ。

だけど、この地に来て数年がたった今でもイアン以外のアトモスの戦士の情報はあまり出てこない。

いるならば商人たちの情報網にも引っかかるだろう。

それがないということは、もう生き残りを見つけ出すことは難しいと判断したんだろう。

そう考えたからこそ、イアンは自分の結婚相手を女性のアトモスの戦士にこだわるつもりもなくなったのかもしれない。

別にほかの土地の女性でも問題ないという。

ということは、ハンナでもいいということなんだろう。

俺やミーティアよりも少し年上のハンナ。

そのハンナに対して、今はもう二十代後半になるだろう筋肉もりもりの屈強な男であるイアンが横に並んだら、それこそ大人と子どもみたいに見える。

ちょっと年齢差があるけど、まあいっか。

ハンナ自身が希望したんだし、歳の差は問題ないんだろう。

「じゃ、イアンとハンナは結婚するってことで、よろしく」

「ああ、分かった」

こうして、ハンナの結婚相手はアトモスの戦士イアンに決まった。

善は急げだ。

さっそく、結婚の準備を始めることにしたのだった。