軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法の完成

「慈愛の炎。……できたー。ついにやりましたよ、アルフォンス様」

「お疲れ様、ハンナ。よくやった」

ハンナの手から炎が出る。

その炎が俺の体にぶつかるが、熱くはない。

そして、そのまま体の中へと炎が入っていった。

胸の奥にほんのりとした暖かみを感じる。

ポカポカほこほこと気持ちのいい温かさだ。

その炎へと俺の魔力を送りこむ。

すると、その温かさが全身へと浸透していく。

まるでお風呂に入っているときのような気持ちよさだ。

その状態で体を軽く動かしてみると、いつもよりも断然動きの切れがいい。

力も上がり、衝撃にも強くなっていることがわかる。

が、そこからさらに胸の炎へと魔力を注ぐ。

すると、体全体の温かさが増していく。

どんどん温かくなり、次第に体全体が熱を持つかのような感じになる。

そしてまた動く。

先ほどまでよりもさらに増した体の動き。

すごいな。

前よりも少ない魔力でより強くなっているような気がする。

「持続時間はどのくらいかな?」

「胸の中の種火の状態なら十日は持つと思います」

「十日か。十分だな」

ハンナの成長がすごい。

傭兵の入団試験を行ったときには、教会で儀式を行った後しばらくすると【慈愛の炎】の効果は切れていたように思う。

だというのに、その後の半年ほどで驚きの改良版を創り上げてしまった。

胸の中の炎は少なくとも十日は持つらしい。

さらに魔力量が多ければ、持続時間の延長も可能だそうだ。

これなら、【慈愛の炎】を使ってから戦場に出ても戦闘中に効果が切れるということは減るんじゃないかと思う。

「しかも、傷が治るのがいいね」

「えへへ。【回復】ほどじゃないんですけど、頑張りました」

そして、なによりすごいのが【慈愛の炎】を使っている状態での回復機能だろう。

胸の炎に魔力を送り、全身へと熱を広げた状態だと体が癒されるという効果がある。

これは、以前までもあるにはあったが、そこまで大きな効果ではなかった。

だが、尻尾持ちという肉体を大きく変貌させてしまうことで体に変調をきたす子どもたちを助けるために努力したハンナはついにやり遂げたのだ。

体を治す効果を創り上げてしまった。

とはいえ、それほど劇的な効果はないようだ。

【回復】のように傷が一瞬で治るというほどのものではない。

ただし、傷ついた体に【慈愛の炎】を使って魔力を消費していると、通常よりもはるかに傷の治りが速くなる。

多分、【瞑想】よりも自然治癒力が上がっているんだろう。

このおかげで、獣化しても【慈愛の炎】を使ってさえいれば不調が出にくくなるそうだ。

傭兵的には大けがでなければ【慈愛の炎】を使いながら寝ていればいいということになるだろうか。

つまり、この魔法の効果は【身体強化】と【瞑想】と【回復】の効果を混ぜ合わせたようなものということになる。

しかも、十日も効果は持続して、魔法を受けた者の魔力量によってさらに高い効果を引き出すことも可能ということだ。

あらためて、とんでもない魔法を創り上げたなと思ってしまう。

「本当に頑張ったな、ハンナ。ずっと勉強とか、魔術の改良しながら、呪文化もしていたもんな」

「あ、ありがとうございます。これで、ミーは大丈夫ですよね?」

「うん。最近は全然血の入れ替えをしていないのに平気そうだし、多分大丈夫だと思うよ」

「……ぐす。よかったです。これでミーがしんどくならなくてすむんですね」

魔法を完成させたハンナが、ミーティアのことを思ってか泣き出してしまった。

どんどんと目に涙がたまっていって、それを拭おうと手や腕でごしごしとこすっている。

が、それも追い付かずに更にあふれてくる。

しまいには、鼻水も出てくる始末だ。

ちょっと人には見せられない顔になっているが、しょうがないか。

それだけミーティアが倒れた時のことが頭から離れないのだろう。

ようやくそんなミーティアを助けることができると思って、気持ちが制御できなくなっても仕方がない。

「落ち着いたか、ハンナ?」

「はい、ずみまぜん。ありがとうございます、アルフォンス様」

そんなハンナが落ち着くまで頭や背中をポンポンと叩いてやっていた。

しばらくそんなことを続けているとようやく落ち着いてきたみたいだ。

まだ鼻水が出たままだが、まあいいだろう。

「じゃあ、魔法を完成させたハンナには最後の仕事をしてもらわないとな」

「……え? 最後の仕事ってなんですか? なにかしないといけないことってありましたっけ?」

「そりゃあるでしょ。ハンナはハンナにしか使えない【慈愛の炎】という魔術を呪文化することに成功した。じゃあ、その次にすべきことがある」

「あ、もしかして、名付けですか? 【命名】を使って誰かほかの人も【慈愛の炎】を使えるようにするとか?」

「それもある。けど、そうじゃないよ。もっと大切なことがある」

「……何でしたっけ? そんな大切なこと、ありましたっけ?」

「結婚だな。ハンナには結婚して男の子を産んで、その子に【慈愛の炎】の継承をしてもらわないと駄目だろ。教会で継承の儀ができるようにしてあるのは、ハンナも知っているだろ?」

「ええー。結婚ですか? 私が?」

「そうそう。というわけで、相手を決めろ、ハンナ」

もしかして、そのことを考えていなかったんだろうか。

ハンナが魔法を創り上げたことは素晴らしい。

が、それはハンナだけの特技で終わらせていいものでもないし、効果の高さから考えても次につないでいかないといけない。

そう考えると、継承の儀を行って継承権のある子どもをハンナには産んでもらう必要がどうしてもある。

そんなことを一切考えていなかったのか、ものすごく驚くハンナ。

そのハンナに早く結婚しろと迫ったのだった。