軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アイの成長

「ただいま、ミー。お友達を連れてきたよ」

「アル様、お帰りなさーい。わー、みんな一緒にここで暮らすの?」

「そうだよ。貧民街にいるといつまた攫われるかわかんないからね」

新バルカ街へと帰ってきた俺は、ミーティアに子どもたちを預けた。

獣人の血を引く者、通称尻尾持ちと呼ばれる子たちだ。

今回貧民街で攫われた子以外のところにももう一度回って、全員を連れてくることにした。

また攫われる可能性があるということと、きちんと住む場所が用意できるということ、それに食べ物を提供したらすぐに俺と一緒に来ることに賛成してくれた。

前は誘拐されたばかりで怖かったのが大きかったのだと思う。

が、少し冷静になって考えた結果、そのまま貧民街で暮らしていてもいいことはあんまりないと理解したんだろう。

ずっとびくびくしながら生活する必要もあるし、食べ物もありつけるかどうかわからない。

そこに、今度は傭兵を二十人以上も連れた俺がやってきたことで決断できたようだ。

子どもの俺が大人の傭兵を引き連れているというのは、信用につながったらしい。

ユーリ以外のその子らは、全員それぞれ違う身体的特徴を持っている。

ただ、体に鱗みたいなものがあるだけの子もいて、どういう獣人の血を引いているのかわからない子もいた。

魔大陸にはいったいどのくらいの数の獣人がいたんだろうかと思ってしまう。

「アイ、こいつらもほかの孤児たちと同じようにここで教育を頼む。俺の血を定期的に入れて、ハンナに【慈愛の炎】をしてもらう以外は普通にしてくれてかまわないから」

「かしこまりました、アルフォンス様。しかし、この方々をいずれどのようにしたいとお考えなのでしょう?」

「うーん、できれば【獣化】の魔法を作ってくれたらいいなと思っているんだけどね。魔法ができれば、名付けを使って他の人も獣人の力を使えるようになるかもしれないし」

「では、魔法創造を目的とした教育を実施いたしましょうか?」

「そんなのあるの?」

「キク様やハンナ様はいずれアルフォンス様のそばで活躍できるように、さまざまな事柄を伸ばす教育を行ってきました。ですが、目的が魔法を創り上げることであれば、それに注力した教育を施してもいいかと考えられます」

「なるほど。それはそうかも。なら、そんな感じでよろしく」

「承知いたしました」

集めた尻尾持ちたちは、俺の家で暮らすことになる。

そこでは、ほかの孤児たちと一緒に生活しつつ、勉強もしてもらおうと考えていた。

だが、アイの提案によって孤児たちとも少し違う教育方針で育てられることになった。

分かりやすく言えば、今までの孤児たちは傭兵団の幹部候補みたいな感じで育てられていたのだが、魔法創造部門みたいになるかもしれない。

もちろん、本人が数字や文章の読み書きを覚えたいというならアイは教えるんだろうけど、基本となるのは魔力の扱いなどの学習になるんだろう。

ちょっと毛色が違う育ち方をすることになるかもしれない。

それにしても、アイもだんだんと学習してきているような気がする。

多分、今までのアイはバルカニアでもほかのところでも、基本的には雑用仕事が多かったはずだ。

最初はカイル兄さんのシャーロット城で給仕の仕事をしていたというのを聞いたことがある。

それがだんだんと給仕の仕事を覚え、行儀作法のほかにも法律や事務仕事などを学んで、少しずついろんなことを覚えていった。

だけど、子どもの教育というのは俺を鍛え始めたのが最初だったんじゃないだろうか。

賢人たちの知識を集めた豊富な情報を子どもの俺に詰め込んで覚えさせる。

ただ、そのやり方もだんだんと効率化してきたみたいだ。

ここで孤児たちに教え始めたことで、アイの教育も変わってきているように思う。

前は覚えなくてはならない必要な情報をバンと出して、それを詰め込んでいくのが多かった。

だけど、相手は子どもだ。

しかも、俺とは違う孤児たちだ。

こっちは、騎士の家に生まれて貴族院にも通ったことがあったうえでアイから教えてもらったけど、孤児はそんな経験がない。

いきなりこれを覚えろと言われても、アイが思うほどには上手く進まないこともあったらしい。

そこで、だんだんと詰め込み教育ではなく、本人の興味に合わせた教育をするようになってきた。

覚えるべきことはもちろん教えるけれど、たとえばキクのように体を動かすことが好きなら戦闘技術を、ハンナのように戦闘を好まない子には事務的なことを多めに教えるようにしている。

そのおかげか、アイに育てられたキクたちは、得意なこと、興味のあることを伸ばされて個性が出てきたように思う。

そんなアイが魔法造りに特化した教育をしたらどうなるんだろうか。

どんどん新しい魔法を作ってくれる奴が出てきたりするんだろうか。

楽しみだ。

教育係としての経験をさらに積み上げつつあるそんなアイに、尻尾持ちを預けた俺は、そいつらが今後どうなるのか楽しみに見守ることにしたのだった。