軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユーリの家族

「ユーリ、無事だったのか。どこに行っていたんだよ」

「ごめんなさい、兄さん。えっとね。実は誘拐されちゃってて、閉じ込められていたの。そこをアル様に助けてもらったんだ」

「くそ。やっぱり誘拐されてのか。……って、あれ? アル様ってもしかしてバルカ傭兵団の団長さんのことなのか?」

「久しぶりだね、ゼン。もしかして、ユーリってゼンの妹なの?」

貧民街でつかまっていた子どもたち。

その子らをそれぞれ送り届けて、最後に家に着いたのは都市国家内に住むユーリだった。

【洗浄】で体も服もきれいにしたユーリに案内してもらって、家まで送り届ける。

そうしたら、そこにいたのはゼンだった。

ゼンは以前一緒の戦場で戦ったことのある青年傭兵だ。

もともとは新バルカ街の前にあった廃村で生まれ育ったそうで、傭兵として身をたてて都市国家内部に住むことができるようになったと言っていた。

だが、まさかこんなところで再会するとは思いもしていなかった。

「お久しぶりです。あの、本当なんですか? ユーリが誘拐されていたって」

「本当だよ。うちのミーも連れ去られてね。貧民街で檻の中に閉じ込められていたんだよ。で、ミーを追いかけてそこを見つけた俺がその場にいた全員を倒してね。で、檻に閉じ込められていたユーリたちも解放してきたんだ」

「そうなんですか。ありがとうございます。なんてお礼を言っていいのか。もう何日も前からユーリの姿が見えなくなっていて。散々探したんですけど、全然見つからなくて焦っていたんです」

「あれ? けど、そういえばゼンの家族ってあの廃村で全員亡くなっていたんじゃなかったっけ?」

「あ、そうです。よく覚えていますね。俺の身内は全員死んでいますよ」

「だよね。けど、ユーリは妹じゃないの?」

「ああ、それはあれですよ。俺、結婚するって言っていませんでしたっけ? ユーリは妻の妹なんですよ。あいつも俺と同郷なんですけど、村が襲われるより前にここに引っ越して住んでいて難を逃れていたんです」

そういえばそんなことを言っていたような気がする。

戦う前に結婚するとかどうとか言っていたから大丈夫かとちょっと心配したことを思い出した。

まあ、特に何もなく普通に勝ったからなんともなかったんだけど。

けど、そうか。

それで、あんまり似てないわけか。

というか、妹のユーリはウサギ耳のかわいい女の子なのに、ゼンは傭兵らしく体格がしっかりしているからな。

見た目からつながりを予想できなかったのはしょうがないだろう。

「ユーリ!!」

そんな風にゼンと話していると、俺たちの話し声が聞こえたのか建物の中から女の人が顔をのぞかせ、そして叫んだ。

ユーリの名を何度も呼びながら駆け寄ってきてぎゅっと抱きしめる。

もしかして、この人がゼンの奥さんなんだろうか。

「美人さんだね」

「でしょう? 自慢の嫁です。おい、ラーミア。この人はあのバルカ傭兵団の団長さんだ。団長さんがユーリを助けてくれたんだ」

ゼンがラーミアと呼ばれた女性に話しかける。

ただ、よほどユーリのことを心配していたんだろう。

泣きながら、ありがとうございますと言いつつも、ユーリに抱き着いたまま離れない。

その泣き声でユーリも泣き出してしまい、そしてそれを見ていたミーティアまでもがわんわんと泣き始めてしまった。

いつまでも終わらない涙と、その声を聞きつけて近所の人も顔を出してくる騒ぎだ。

だが、もう何日も前からユーリが行方不明になっていて、ゼンとラーミアが必死になって探していたことを知っていたのだろう。

見つかってよかったな、と声をかけてから一度自分たちの家に戻り、ふたたびやってきたと思ったらどっさりと食べ物などを置いていく。

どうやら、ユーリが見つかったお祝いに食べろということなんだろう。

その間にも三人は泣き続け、そのそばにはいろんなものが積み重ねられていったのだった。

※ ※ ※

「失礼いたしました。ユーリを助けていただき、ありがとうございます。本当になんとお礼を言ってよいのか」

「もういいよ。助けたのは偶然だから」

「それでもお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」

そう言いながらラーミアが頭を下げる。

今は、ゼンの家にいる。

あれからしばらく泣き続けて、そうしてようやく治まった思ったら、今度は強引に家に上がれと言われたのだ。

すでに何度もお礼を言われているので、もういいよと言い続けている。

だが、それでもこうして頭を下げてくるのでちょっとまいってしまう。

「さっきから言っているけど、本当にただの偶然だから気にしなくていいよ。ミーのことがあったからね。けど、これからどうするつもりなんだ、ゼン?」

「え? どうする、というのは?」

「ユーリのことだよ。獣人の血を引く者の子孫だろ? 倒した連中が言っていたけど、そういう人って高値で取引されるみたいだ。もしかしたら、またなにかあるかもよ」

「獣人、ですか。実はあんまりそのへんのこと俺はよく知らないんですよね。結婚するまでユーリの体に動物の耳や尻尾があるってことも知らなかったんで」

「ラーミアは獣人の特徴が出ていないのか?」

「ないですね。そうだよな、ラーミア?」

「はい。私は全然。なんでユーリだけにこんな変化が出てきたのかよくわからなくて」

「俺も理由はよく知らない。けど、兄弟姉妹でも獣人の特徴が出るかどうかは違うみたいだね。でも、問題はそれがなんで出てきたかじゃなくて、今後どうするかだ。ユーリを閉じ込めていた奴は倒したけど、誘拐したやつは多分別にいる。二度あることは三度あるっていうし、また危険な目に合うかもよ?」

俺の言葉を聞いてゼンとラーミアの二人が戸惑ったような感じで目を合わせる。

まあ、こう言われても困るだろう。

なにせ、ゼンは傭兵だ。

なにかあれば戦場へと飛び出してしばらく帰ってこないこともざらだろう。

そうなったときに、ユーリがまた攫われるかもしれない。

いくら気をつけていてもありえない話ではないというのは二人ともよくわかっているはずだ。

「もしよかったら、新バルカ街に来ないか? うちは人の出入りをしっかり管理しているから、ここよりは安全だよ」

だから、勧誘する。

獣人であるユーリを安全な場所に保護するという名目で、移住しないかと誘ってみた。

そのための費用くらいは出してもいいしな。

だが、新婚早々に引っ越すのはさすがに考えたようだ。

ゼンとラーミアはしばらく二人で話し合い、しかし、結局はユーリともども新バルカ街へと引っ越すことに決めたのだった。