作品タイトル不明
演習の後に
「どうでした? バルカ傭兵団の評判は」
「上々でござるよ、アルフォンス殿。規律のとれたあの動きを自分の目で見た者ほど高い評価を下していたでござる」
「それは良かった。なら、今後も少しずつ傭兵の数を増やしていっても大丈夫ですね」
「そうでござるな。ただ、それもやはりローラ殿が指揮を執っていたのが大きいと思うでござる。もしも、あそこでアルフォンス殿やイアン殿が無双状態で勝利していたら、もしかすると危険視されていたかもしれないでござるからな」
軍事演習が終わり、数日が経過した。
その後のオリエント国内での評価はかなり良かったようだ。
都市国家のそばでやっていたこともあり、俺たちのところ以外でも見学していた人もたくさんいた。
そういう人からもやはりあそこまでの完勝は高く評価されていたようだ。
また、突出した個人が出なかったこともよかったみたいだ。
真っ赤なワルキューレに乗った美しい女性が軍を指揮し、オリエント国の軍勢に圧勝する。
弱小国家として交易と外交で国を保っていたこの国の人間ほど、その光景は輝いて見えたみたいだ。
もしかすると自分たちも同じように戦うことができる参考になるかもしれないと思ったのだろうか。
それに、アイの作戦がきれいに決まったのも功を奏した。
もし、俺やイアンが力の限り戦って勝利しても、多分野蛮だなんだと言われたんじゃないかと思う。
俺たちの場合、たいてい先頭で突っ込む突撃攻撃で蹴散らすからな。
ただ、そんな戦い方だと相手の負傷率はもっと高かっただろう。
今回は、押したり引いたりで双方ともにけが人が少なかった。
事前に、ケガをしたり、致命傷になりそうな攻撃を受けたらきちんと退くようにと伝えていたこともあって、大けがをした者はほとんどいない。
けが人が多く出ていれば、おそらくはもっと反感の気持ちを持たれていた可能性もある。
本来印象が良くない傭兵たちがきちんと統率されてきれいに戦ったことで、この国の人に安心感を与えることができたようだ。
自分たちを守るための頼りになる戦力になりえる。
そう思わせることができた。
十分なできだろう。
そして、そのおかげで、多分もう少し傭兵の数を増やしたところで危険視されにくくなりそうだ。
今後も定期的に募集をかけて戦力を増強していくことにしよう。
「ローラは選挙に受かると思いますか?」
「そうでござるな。拙者は以前から議員であって、後援会もいるのでござる。そのため、ある程度、獲得できる票が読めるのでござるよ。ただ、ローラ殿はそうではないでござるからな。おそらくはいけると思うでござるが、あまり不確実なことは言えぬでござるよ」
軍事演習の効果でローラの票は多分増えるはずだ。
ただ、絶対ではないとバナージは言う。
というか、バナージってそんなに票を集める自信があるのか。
そう考えると、もともと議員だった奴というのはほとんど当選する仕組みにでもなっているのかもしれない。
その中にローラが割って入れるかどうかはわからないが、多分大丈夫だろう。
なんだったら、もう一度娼館のほうにでも顔を出しておこうか。
向こうも、ローラがこんなに有名になるとは思ってもいなかっただろうし、以前よりもさらに協力的になってくれるかもしれない。
それからはしばらくオリエント国に滞在し、ローラが票を獲得できるように活動することとなった。
どうやら、その効果があったようだ。
その後の選挙で見事議席を確保できたのだった。
※ ※ ※
「おめでとう、ローラ。って、そうか。ローラ議員って呼んだほうがいいのかな?」
「そんな必要はないですよ、アルフォンスくん。私が議員になれたのはアルフォンスくんのおかげなんですから」
「じゃあ、今までどおり、ローラって呼ばしてもらうね。改めておめでとう」
「ありがとうございます。これからは議員として、アルフォンスくんを支えていこうと思います」
「うん、よろしくね。って言っても、ぶっちゃけ議員が何をしているのか、あんまり知らないんだけどね」
「ふふ。実は私もそうです。新人議員として覚えることが多そうで大変です」
「頑張ってね。まあ、最初はバナージとかにいろいろと聞いて覚えるのが一番だろうね。あとは、前に言っていたようにアイをそばに置いておくから大丈夫だよ」
「……そのことなんですけど、本当にいいのですか? アイさんをお借りしても」
「大丈夫、なんだけど扱いには注意してね。もし、アイに何かあったらすぐに報告すること。ただ、アイは結構強いからね。もしもローラの身に危険があれば、アイに守ってもらうといいよ」
「分かりました。頼りにさせていただきます」
選挙は無事に終わった。
初めての選挙はどんなものなんだろうとワクワクしていたのだけれど、特に何もなく終わってしまった。
選挙日に特定の場所に行って、そこに置かれた紙に票を入れたい人の名前を書いて提出する。
それだけだ。
オリバが言うには会場前の広場などで議員立候補たちが議論を交わしているところを観たほうが面白かっただろうとのことだが、票集めに動いていたので見れなかったしね。
なんにせよ、結果的に新バルカ街からはローラという議員を輩出することに成功した。
バナージがいなくなった時の保険程度のものだけれど、ローラのそばにアイを置いておくので多分いろんなことをアイが学んでくれるだろう。
とりあえず、都市国家内でのローラの活動拠点が必要になるかな?
そのための建物を内壁の中の土地で探してもらい購入することになったのだった。