軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特産品

自由市を開く前に、俺は一つの作業に取り掛からなければならなかった。

それは、新たな道路造りである。

今回新しく道路を作るのは、バルカ村から南に作った川北城までをつなぐ道路を延伸しフォンターナの街までの道路だ。

なぜ、自分の領地の外に道路を作るのかというと、そういう取り決めがあったからに他ならない。

フォンターナ家との停戦合意に際して出された条件の一つに、城と街をつなぐ道路を敷設すること、という条項があったのだ。

俺にとっては道路というのは移動を早める便利なものという認識しかない。

だが、戦乱の続く土地を治める貴族側から見ると別の意味があるのだ。

それは軍隊の侵攻ルートである。

整備された広い道路は軍隊の移動を早める。

それは逆に言えば、相手の軍隊の進行スピードを早めてしまうことにもなる。

そのため、多くの貴族は自分の領地の内部では道路の整備をしても、他家との境にあたるようなところではあえて道路を作らないことが多いのだそうだ。

道路がなければ、その分だけよそからの軍が侵攻してくる速度を遅くできるということで、防衛上重要な意味があるのだ。

フォンターナ家が俺に道路を敷設しろ、と命じたのは俺自身に道路を作らせて、もし何かあればいざというときにはそれを逆用して侵攻するぞ、というわけである。

わざわざ俺が川北城に配備できる兵の数を最低限に抑えるように停戦合意時の条項に決めているだけに、やはり警戒されているのだろう。

じつはこの川北の城のことはカルロスと一番揉めた話でもあった。

いろいろな問答の末、俺が「数日あったらいつでも新しい城を作れるぞ」という発言のもとに所有権を認めさせた。

ただ、俺としてもカルロスとの関係をあえて悪くしたいわけではない。

この川北の城はこれからバルカと街の間の関所兼宿場町的な位置づけになることだと思う。

だが、これは俺にとってはメリットもある。

それまでの道とは呼べないような細い道しかない状態で街に行くよりも格段に行き来しやすくなるからだ。

バルカ騎士領が商売を行っていくなら、なによりも街との交通ルートを確保しておく必要がある。

フォンターナ家にとっても、俺にとってもこの道路造りは意味のあるものだった。

今、バルカ騎士領には魔法を使えるものが多数いる。

そのなかで自分の農地を持つ人は帰らせて、すぐに農地の【整地】と【土壌改良】を行うように指示を出した。

そして、残りの農地を持たない連中を引き連れて道路工事をしていく。

おっさんから土地代として巻き上げたお金を一部切り崩して日雇いとして働かせる。

一度道路造りを経験している連中ばかりなので、割と混乱なくサクサクと工事は進められていった。

魔力量の少ないものには細い道を広げるように【整地】をさせ、俺が目印を建てるようにしてから残りのもので【道路敷設】を行う。

こうして、それまでは3日ほどかかっていたバルカ村からフォンターナの街までの距離を大幅に時間を短縮して移動できる街道が完成したのだった。

※ ※ ※

「坊主、本当にいいのか?」

「ま、いいだろ。自分の農地がないやつも稼げるようにしなきゃならないしな」

バルカ騎士領とフォンターナの街が街道で結ばれた直後のことだ。

俺はさんざん悩んだが、とある決断を下すことにした。

俺が魔法を授けた連中の中には農地を持つものと持たないものがいる。

だが、その比率でいうと農地なしのほうが圧倒的に多かった。

それは俺が戦いに参加したものにだけ魔法を授けたからだった。

最初に俺がバルカ村で人数を集めたときには声をかけて集めたという面もあり、父さんのような農地持ちもそれなりにいた。

だが、隣村でバルガスを仲間にした際にくっついてきたやつらや、野戦で勝利したあとに集まってきたやつらはほとんどが農地なしだった。

農家の次男三男といった日陰者にならざるを得ない連中が、火の光に誘われる虫のように集まってきたのだから当然だろう。

俺はこいつらをなんとしてでも食わせていけるようにしなければならなかった。

自分の農地も持たない連中が、急に魔法という力を手に入れた。

だが、魔法は手に入ったものの満足に仕事がなかったらどうなるだろうか。

おそらくは力ずくで問題解決をしようとする荒くれ者の集団になってしまうだろう。

一応治安維持のための人を用意するが、抑えきれるものではないと思う。

だが、仕事が与えられ、それで食べていくことができるとなれば、犯罪率はまだマシなのではないだろうか。

俺は領地内の治安維持のためにも、仕事を作り出す必要があったのだ。

俺が北の森を開拓して広げた土地。

自分のスペースとして4km四方に壁を作り出した土地があるが、実際はその壁のさらに外側も整地された土地が広がっている。

かつて開拓した土地の残りが壁の外にもあるからだった。

この壁の外の土地の一部にいくつも宿屋型建物を建てた。

そうして希望者はこの建物に居住する権利を与えて、さらに仕事を与えたのだ。

仕事の内容は主に2つだ。

かつて俺が主に行っていたレンガ作りと魔力茸の栽培だった。

レンガ作りは元手ゼロでできる商売だ。

なにせ全員が俺の授けた魔法を使える。

魔力を消費する代わりに毎日作り上げることができる。

だが、俺がレンガを作っていたときとは状況が違う。

あのときはフォンターナの街で外壁工事がされており、特需があった。

だが、今はそれも終わっている。

だから、俺は作るレンガを指定したのだ。

他の土地では絶対に手にはいらないであろう硬化レンガを作って売るようにさせたのだった。

これは自力で作ろうとすると大猪の牙とヴァルキリーの角という魔法関係の素材などが必要になってしまう。

材料的な意味でもほかではまず手にはいらない、バルカという土地でのみ手に入る品物だ。

それなりに需要があると思う。

そして、断腸の思いで許可したのが魔力茸の栽培だった。

この魔力茸は間違いなく儲かる。

なので栽培方法はなるべく伏せて俺が独自に育てていたのだ。

だが、後でわかったことだが魔力茸の栽培でいちばん重要なのは原木に【魔力注入】することだったのだ。

【魔力注入】しないで作ると栽培しても実りは少なく、一度とるとできなくなってしまう。

だが、きちんと【魔力注入】していると同じ原木でもたくさんの魔力茸が生えてくる上、数年間はその原木から採取することが可能なのだ。

なので、俺はこの栽培方法を領民に教えることにした。

俺が名付けをした連中であれば【魔力注入】ができるのでうまく栽培に成功するだろう。

これはいずれ俺がフォンターナ家に招集されることも見越している。

魔力茸をたくさん育てて収穫しておけば、その分魔力回復薬を作って備蓄しておくこともできる。

魔力回復薬の量が多ければ、それだけ魔力量の残りを気にせずにバンバン建物をたてられるだろう。

これは生き残る可能性を大きくあげてくれると思う。

俺の直接の稼ぎが減ってしまうというデメリットはあるが、長い目で見ればメリットのほうが大きいだろうと判断した。

こうして、バルカ騎士領は新しい特産品を作り出す土地に早変わりしていったのだった。