軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

演習開始

「まさか、アルフォンス殿が軍事演習に出られないとは思わなかったでござるよ」

「指揮官はローラに任せてますからね。ちなみにイアンも出てませんよ、バナージ殿」

春になった。

寒い時期が終わりをつげ、暖かな日差しが出始めたころ、軍事演習が行われることになった。

都市国家オリエント国。

この都市はグルー川のような規模の大きな川の氾濫の影響を受けにくい場所にある。

そのため、少し土地が盛り上がっているようだ。

そんな都市の近くにある見晴らしの良い場所で俺やバナージ、あるいはこの国でも力のあるとされる人物などがいた。

目的は今回行われる軍事演習の観戦にある。

見晴らしの良い場所から見下ろすようにして、そこで行われるオリエント軍とバルカ傭兵団の戦いを観戦しようというわけだ。

すでに両軍ともに布陣についていた。

それを見ながらバナージが俺に言う。

最初はこの軍事演習には俺も兵として戦うつもりでいた。

が、それはやめておくことにした。

わざわざローラが指揮を執ることにしたのも関係している。

俺やイアンの個人の力でごり押しするような戦い方をしても、あんまり意味がないというのもあった。

この軍事演習の目的はもともと傭兵たちをきちんと制御下におけるかどうかの確認でもあるからだ。

ならばいっそ、完全に制御された組織としてだけの力を見てもらおう。

そう思って今回俺は見学に回ることになった。

大丈夫だよな?

一応、エルビスだけは傭兵団の隊長として配置しているので、そんなにひどいことにはならないと思うけれど、心配ではある。

が、その内心をバナージらには悟られないようにしながら受け答えしていた。

「それでは、オリエント軍とバルカ傭兵団による軍事演習を開始いたします。今回は初めての軍事演習ということでまずは説明を行います。両陣営は合図とともに行動を開始し、模擬戦に移行。実際に戦うことになりますが、使用する武器などは木剣などを利用し、死傷者がなるべく出ないように配慮して行うことになります。攻撃を食らってしまった者は負傷兵として速やかに場外に退去。両陣営の戦力差がついたとこちらが判断したら終了となります」

太陽が昇り、お昼になった。

その時を待ってから、俺が話を始める。

この場に見に来ている者たちに、軍事演習についての説明を始めた。

すでにこのような説明は聞いているはずだが、念のためでもある。

「今回の軍事演習の目的はここにおられる皆様にバルカ傭兵団の統率のとれた動きをご覧になっていただくことにあります。昨年新たにできた新バルカ街では、傭兵を募り、戦力を増強いたしました。その新生バルカ傭兵団の力をこの場で直接見ていただくことで、その強さと規律のとれた戦いぶりをご理解いただけると思います。また、今回は特別に、バルカ傭兵団の指揮は次の選挙で議員として立候補しているローラ女史が行うこととなります。彼女の奮闘にもご期待ください」

事前に考えておいた説明をさらに続ける。

都市国家として長年ここにあり、しかし、近年他国から攻められ続けたこの国のそばに新たにできた街。

傭兵を主体として作られているその新バルカ街がどれだけ強いかをここにいる者たちに見てもらう。

それと同時に、議員に立候補する女性がその傭兵団をまとめて戦うことを主張する。

普通ならば何の力もない女性の言うことを実戦で戦う男たちが聞くはずもない。

が、それができているというところを見せることで、いかにきちんと制御された組織かが一目瞭然となるだろう。

その辺もしっかりと見てもらっておくように一言添えておいた。

ちなみにローラには俺のワルキューレを貸してある。

真っ赤なワルキューレは高台から見下ろした時によく目立っているので、ここからでもよく見えている。

俺の言葉を聞いて、改めてバルカ傭兵団を見る者たちは確かにそこに女性指揮官がいることが分かるだろう。

「それでは、そろそろ始めましょう。両陣営、戦闘開始」

俺が魔力を込めた大声でそう言うと、しっかりとそれが聞こえたようだ。

オリエント軍とバルカ傭兵団がそれぞれ動き始めた。

「それにしても、よかったのでござるか、アルフォンス殿? オリエント国のほうが数が多いでござるが」

「そうですね、バナージ殿。バルカ傭兵団が兵力五百。対してオリエント軍は千ですか。倍ほどの戦力差がありますね」

「見ただけで数の違いがわかるでござるよ。数を合わせなくともよいのでござるか?」

「かまいませんよ。実戦では人数差が同じであることのほうが少ないですし。それに、今回オリエント軍は魔弓オリエントを使っていませんしね」

「あれはさすがに殺傷能力が高すぎるでござるからな。先のとがっていない矢を使ったとしても魔弓オリエントから放たれたものに当たれば命にかかわるのでござる」

「確かに。そういう意味では今回の軍事演習では古典的な戦い方と言えるかもしれませんね。あ、そろそろ両軍が攻撃範囲に入りました。矢の応酬からですね」

オリエント国には近年配備された魔弓オリエントがある。

これはグルーガリア国から柔魔木を奪ってきて作った魔道具だ。

魔法陣を用いた強力な弩によって発射される矢はさすがにあまりに危険すぎたので、今回の軍事演習では禁止にしている。

装備の質が軍の強さにつながるのでありでもよかったのだが、もともとの目的を考えて無しとなったわけだ。

そんなオリエント軍とバルカ傭兵団が戦闘に入った。

まずはギリギリ弓矢の届かない範囲で矢を放つ両陣営。

それらの動きを、俺はバナージと会話するようにしながらも、この場に見に来ている者たちに聞こえるように多少説明口調で会話を続けながら、俺自身どんな戦いになるのか楽しみに見つめていたのだった。