軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

指揮官

「よし、ローラには傭兵団の指揮をとってもらおうかな」

「……え? 今、なんて言いましたか、アルフォンスくん?」

「ローラに指揮官になってもらう。そう言ったんだけど?」

「意味が分かりませんが……。え、傭兵団ってバルカ傭兵団のことですよね? なんで私が? 私は戦ったことなんてありませんよ?」

今年行われる選挙に新バルカ街からローラを議員として送り出す。

そんな計画は着々と進んでいた。

一級市民の権利を持つ者が複数推薦人として名を連ねた既定の用紙もすでにオリエント国に送っている。

そして、立候補に必要な額のお金も用意して、納めた。

その後、オリエント国にある娼館や商会などを回って、一人でも多くローラに票を出してもらえないかと頼むことになった。

どうやら、オリエント国にある娼館に勤める娼婦たちはその動きに賛成してくれる者が多いようだ。

というのも、今までにも何度か娼婦たちは団結して議員を出そうとしたことがあるらしい。

が、残念ながら今のところそれは実現していない。

そんなところに、もともと高級娼婦として名が知られており、しかも必要なお金まで用意して立候補までしてくれるのだ。

そこに便乗するだけならば損することもないので、ぜひ頑張ってくれということだった。

そして、その娼婦の動きに娼館も動いた。

多くの娼婦がローラの立候補を応援していることを知り、経営者側もその動きに乗ったのだ。

ローラがうまく交渉してくれたというのもあるだろう。

もっとも、娼館経営者からするとそのほかの商人と似たようなものだろうか。

うまく当選してくれて自分たちの頼みも聞いてもらえれば御の字だということだ。

ただ、あくまでもそれは自主的な応援という扱いになるそうだ。

ゆえに、以前までローラが仕事をしていた娼館の支配人が言うには、ローラに票を入れない者もいるだろうということだった。

当選するかどうかは現状では微妙な感じだそうだ。

ゆえにもう一手、票を集めるためのなにかをしたい。

そう考えた俺が思いついたのが、ローラ指揮官作戦だ。

選挙が行われる前に実施されることが決まっているバルカ傭兵団による軍事演習。

その統率を俺ではなく、ローラに任せてみようと考えた。

「いえ、おかしいでしょう? どうして、アルフォンスくんではなく私が指揮を執るのですか? たしか、もともとの目的はアルフォンス君が新しく集まった傭兵さんたちの統率ができるかどうかを示すためなのではなかったかしら?」

「おかしくはないよ、ローラ。それに、違う。軍事演習の目的は確かに新バルカ街を作るときに集めた傭兵という名の暴れん坊たちをきちんと統率できるかどうかを示すことにある。けど、それは俺が指揮を執らなくちゃならないわけじゃない。オリエント国から見て傭兵団がきちんと制御された存在と分かればそれでいいんだよ」

「そうかもしれないけれど、やっぱり無理ですよ、アルフォンスくん。私は娼婦だったのですよ? 今までそんなことを経験したこともありません。できる気が全くしません」

「大丈夫。言ったでしょ? ローラにはアイを貸し出すって」

「アイさん? アイさんは傭兵団の指揮を執ることができるのですか?」

「もちろん。アイに任せておけば大丈夫。ローラは傭兵団の指揮を執る本陣にいるだけでいいから。あ、最初の号令だけはお願いするかもしれないけどね」

選挙への立候補を頼んだ時以上に拒否反応を示すローラ。

まあ、それはそうだろうという気もする。

さすがに、最悪の場合は落ちてもかまわないという立候補と、この街の今後がかかる軍事演習の責任者では話が違ってくるだろう。

さらにいえば、自身で一度も経験したことのない戦闘集団の指揮などできるはずもない。

断ることは当たり前と言えば当たり前だった。

だが、その拒否も強引に押し切って、俺はローラに指揮官を務めてもらうことにした。

もちろん、それは選挙のためでもある。

もうじき行われる予定の軍事演習だが、バルカ傭兵団はオリエント国の用意した軍と模擬戦をすることが決まっている。

オリバ曰く、結構話題になっているそうだ。

当日はその戦いを見るために見学に来る人も多いだろうということだった。

そこでの戦いで傭兵団側の指揮を執るのがローラなら、必ず大きな話題になるだろう。

そして、上手く勝つことができればオリエント国でのローラの評価は必ず上がる。

少なくとも、ただの娼婦として見られることはないはずだ。

票数を増やすことにつながることと思う。

さらには、バルカ傭兵団の印象も変えられるかもしれない。

霊峰の向こう側からやってきたという俺という未知の存在や、野蛮とされるバリアント地方の人間で構成される謎の傭兵集団。

だが実はその傭兵団はオリエント国出身の議員候補が手綱を握って操っている。

しかもそれが、規律のとれた動きで強ければどうだろうか。

今まで弱小国家として危険にさらされ続けてきたオリエント国の人間にとっては、怪しさ満載の謎の集団という認識から頼りになる国を守る存在に見える、かもしれない。

まあ、実際のところはどうかわからないが、ローラを頭に据えて軍事演習することに少なくとも損はないはずだ。

そして、ローラの代わりに指揮を執るのがアイでも遠目から見ているだけではわかりっこないだろうしな。

こうして、バルカ傭兵団による軍事演習は俺ではなくローラが指揮官となって行われることになった。

事前にその話を商人たちを通じて広げて、いよいよその日が近づいてきたのだった。