軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あぶりだし

「団長、ここが訓練場ですか? もしかして、いきなり訓練するつもりですか。それとも、俺たち新人の実力を見ようということでしょうか?」

「ん、ちょっと違うよ、ウォルター。確かに実力を見せてもらう必要はあるかもしれないけど、それは後だな。今は先にやるべきことがある」

訓練場についた俺と新たな仲間となる傭兵たち。

その中のウォルターが訓練場を見て質問してきた。

訓練場といってもたいしたものではなく、建物がそばにあるだけの広場みたいなものだ。

そんなところに来て何をやるのかと疑問に思ったのだろう。

それに対して答える。

ここに来た目的はもちろんある。

それはこいつらの実力を見るなんかよりも先にやっておくべきことがあったからだ。

「今から、裁判を行う」

「え? 裁判ですか?」

「そうだ。今から行う臨時裁判の裁判長はこの俺、アルフォンス・バルカだ。被告人はウォルターももちろん含んだ新人傭兵たち全員だ。俺の質問に正確に答えてくれ」

「ちょ、ちょっと待ってください。いきなり裁判というのはどういうことですか。意味が分からないのですが」

「すぐにわかるよ。では、質問だ。このバルカ傭兵団への入団は他国、あるいは他勢力によるバルカ傭兵団への侵入任務ではない。はい、か、いいえ、で答えてくれ。そうだな、まずはウォルター。お前はどうだ?」

「ち、違いますよ。俺はただこの傭兵団の入団募集の話を聞いたから来ただけですよ。本当です」

「そうか。なら、次、お前はどうだ?」

「え、お、俺ですか。俺も同じです。けっして誰かの命令などでは……、グッ、ガハッ……」

「な、なんだ。おい、大丈夫か。どうしたんだ」

「心配いらないよ、ウォルター。そいつは罰を受けているだけさ」

「ば、罰?」

「そうだ。さっきやった儀式のことをまさか忘れたわけじゃないだろう? 裁判では正直に真実を話すこと。それが、さっきの儀式でお前たちが誓った内容だ。で、そいつはこの裁判で虚偽の証言を行った。だから、苦しんでいるだけさ」

教会からこの訓練場へとやってきた理由。

それは、この裁判を行うためだった。

俺が臨時の簡易裁判を急遽開き、その場で質問に答えさせた。

その結果、ウォルターはなにもなく、しかし、別の奴は苦しみ始めた。

それが何を意味するのか。

非常に単純だ。

ウォルターは真実を話し、もう一人は嘘をついた。

それだけだ。

この傭兵募集で入団者を決めるとなったとき、エルビスやクリスティナも心配していたことがある。

それは間諜と呼ばれる存在だ。

このバルカ傭兵団になにかよからぬ意志を持って近づいてくる奴がいるかもしれない。

そんな心配をしていたのだ。

それは決して考えすぎなどではないだろう。

なにせ、ここにはアトモスの戦士イアンもいる。

それに、霊峰を越えた先にある国からやってきたと主張している俺やエルビスの存在。

さらに、その異国にある薬という名の高価な化粧品の製造技術。

それらの情報だけでも欲しがる外部勢力というのは、いないと考えるほうがおかしいだろう。

それらの外部からの手の者をあぶりだすにはどうすればいいか。

そう考えた時、血の楔という儀式が使えるのではないかと思った。

そして、それは実際にうまく機能したようだ。

俺の質問に嘘を返してきた愚か者が胸を押さえて苦しんでいる。

「次、お前はどうだ? 他勢力の手の者で、バルカ傭兵団に対しての間諜ではない。そうだな?」

「……は、はい。もちろんで、うぐっ!!」

「連れていけ。次だ、お前はどうだ?」

俺が次々に質問していく。

そして、少なくない数の者が胸を押さえて苦しむことになった。

やはりか。

おかしいと思ったんだ。

俺の【威圧】に耐えられる強さの奴がいないとは思わない。

ただ、そんなにたくさんいるのは不自然だろう。

普通に考えて、ほかの奴を超える強さを持つ者が、そんなに新参の傭兵団に入りたがるものだろうかという思いがあった。

なんせ、強ければ強いほど傭兵は高額で雇われることも多いのだ。

それが、伸びてきているとはいえ新しくできたばかりのこの傭兵団に入りたがるとは考えづらかった。

もしも、それでも入団しようとやってくるような強いやつはどこかの勢力に与する者かもしれない。

そんな存在を確認するためにも、この裁判は必要だった。

もし、そういう存在がいるのだとしたらそれなりに魔力を持つだろうと考えて【威圧】でふるいにかけて数を絞り、そのうえで残った少人数の傭兵候補たちに儀式を受けさせて裁判を行ったというわけだ。

裁判長である俺からの質問に答えて、苦しみだしたのは何よりの証拠だろう。

こいつらはクロだ。

よそにこの新バルカ街の情報を流すためにどこからか送られてきた者たちということで間違いないのだろう。

嘘をつく、あるいは、沈黙する者は残念ながら、俺たちの新たな仲間だとは認められない。

苦しみ、倒れている者を訓練場にすでに待機していた傭兵たちが連れていく。

次々と残っている数は減り、最終的に残ったのはウォルターを含めても数人だった。

ずいぶんとだれからのおつかいでここに来た奴が多かったようだ。

どこからやってきたのか、しっかりと聞き出すようにしよう。

こうして、儀式を終えた新たな仲間は数十人はいたはずなのに、裁判後にはそのほとんどが退場するということになってしまった。

そして、それは儀式の効果の高さを証明する初めての事例となったのだった。