軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

条件整備

「……というわけで、強制的に誓わせる法の内容ってのはこんな感じなんだけど、どうかな、スーラ? 年長者のスーラの意見を聞きたい」

「ふむ。そうですな。いいのではないかと思います」

「本当? よかった。スーラにそう言ってもらえるのは安心するよ」

「いえいえ。ですが、考えましたな。特にこれらは重要な決まり事になると思います。街中での魔法使用の制限と、裁判では真実を話すこと、ですか。これらが約束事としてきっちりと決まっているというのは非常に大きなことだと思います」

カイル兄さんの指導のもと、俺は新バルカ街の新しい規則ともいうべき大原則の法を定めた。

それをスーラに見せ、意見を聞く。

どうやら、スーラからみてもそれなりにいいものだったようだ。

特に、この大原則には重要なものがある。

街中での殺すな、傷つけるな、盗むなといった秩序を守るために必要なこととは別に、これだけはいれておいたほうがいいというものを教えてもらったからだ。

それは、街中での魔法使用の制限があった。

というのも、すでにこの小国家群ではそれなりに問題が発生しているらしい。

あちこちで【命名】を利用して魔法が使える者が出現し、そして、その者たちが魔法を使う。

その中でも、特に問題となるのが【道路敷設】や【壁建築】などだ。

自分の土地かそうでないかにかかわらず、魔法があれば簡単に大きな壁や道路を造り出すことができる。

これはかなり揉める原因になる。

そりゃそうだろう。

気づいたら自分の土地に壁を建てられていたり、道路を造られていたら誰だって怒る。

それに、国としても道路は防衛上の問題にもなる。

あえて他国の軍が通りにくいように整備されていない道を、【道路敷設】で勝手に移動しやすい場所へと変えられたらたまったものではないからだ。

新バルカ街を作るにあたって、後々発生するかもしれないそれらの問題を事前に防ぐ意味も込めて条件を定めておくことにした。

そのために、血の楔を使った条件付けのなかには街中での使用が可能な魔法を明示することにしている。

【飲水】や【洗浄】といった生活魔法や、【身体強化】や【瞑想】などの効果が限定的なもののみが使用できることとなっている。

この条件が付くのであれば、魔法の使用者が増えても問題に発展しにくいのではないかと期待している。

そして、それとは別に設けた条件が「裁判では正直に、真実を話すこと」だ。

俺の血の楔という魔術について、話を聞いたカイル兄さんが強く勧めてきたのがこれだ。

というのも、カイル兄さんから言わせれば、事前の条件付けというのは実際に運用を始めれば必ず不備が出てくるものだと確信できるものだそうだ。

どれほど、考えに考え抜いて条件をひねり出そうと、それが万能に機能しつつ、覚えやすいようにまとめるなど不可能だと言い切られてしまった。

血の楔を実行したところで、必ずあとから、あれもこれもとほしい条件が出てくることになる。

が、それらを法の改定ごとに、その都度俺が街の全員に血の楔をやり直すのかと言われれば、無理だろう。

ならば、やるべきは細かい決まりを守らせることではなく、きちんと裁きが行えるようにすべきだ、というのがカイル兄さんの意見だった。

そのための条件が、先ほどの裁判では真実を話すことというものだった。

これならば、誰でも覚えやすい短文でありながらも、万能に効果を発揮する。

法改定した後でも、条件付けを変えることなく機能するだろう。

話を聞いてすぐにこれを出してくるあたり、きっとカイル兄さんは裁判でそうとう苦労していたんだろうなと思った。

「しかし、それだけではないのですな。血の楔は二段階に分けて使うというのも、面白いものですな」

「うん。いろいろと考えたんだけどね。やっぱりどう考えても、街で暮らす人に対する血の楔と傭兵に向けたものでは条件を変えたほうがいいかと思ってね」

「そうですな。傭兵であれば、上位者の命令に従うこと、というのはある程度納得できるでしょう。ですが、傭兵以外の一般人からすればこの上位者が誰を指しているかあいまいですからな。分けて運用するというのは良い考えかと思います」

俺が用意した血の楔での条件付け。

それの対象となるのは複数になることを想定している。

スーラがそれらを箇条書きしたものを見ながら、その点にも触れてくる。

今回の血の楔は、二種類ある。

ひとつは先ほどまで話していた街中で暮らす一般人用だ。

そして、もう一つは傭兵向けのものだった。

というか、もう傭兵というよりは俺の私兵みたいなものだろうか。

この兵はオリエント国の要請を受けて戦に出かけることもあれば、街での治安を守る仕事をすることもあるだろう。

だが、そのような仕事の時に、傷つけるな、の条件などがあると困ることがあるのではないかと思ったのだ。

いざというときに力を使えないのはいろいろまずい。

というわけで、条件付けは二段階に分けることにした。

一般人用と兵士用で、条件付けは異なるものとなる。

いくつかの項目では一般人よりも条件が緩和されているものもあれば、逆に厳しい制約が課せられている部分もある。

上官に従うこと、などはそのためだ。

兵士は一般人よりもできることがあるが、その分、問題を起こした時には厳しく罰せられる。

これがあるかないかで、街の人々の安心感も変わってくるだろう。

兵士用に分けた条件をスーラは細かく確認していたが、それらも特に問題なさそうだということで合格をもらった。

まあ、スーラだけの意見ではあれなので、あとでほかの人にも見てもらおうか。

こうして、着々と新バルカ街の受け入れ態勢が整っていったのだった。