軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新バルカ街計画

「と、言うわけでまずは村を拡張しよう」

バルカ村の運営に携わる主だった者たちとの話し合い。

その中で、俺は自分の考えを説明した。

バルカ傭兵団を強くする。

そのためには、なにはともあれ戦力を、人数を増やすことが大前提だということになった。

できれば、今のように五十人くらいしか動けない体制ではなく、その十倍くらいはほしい。

となると、この村を維持する人数やここに残る予備役の傭兵も含めればかなりの人数を増やしていく必要がありそうだ。

「村の拡張はやはり情報漏洩が課題となるでしょうな」

「そうだね。スーラの言うとおり、このバルカ村はお金を稼ぐ手段として主に魔道具作りに頼っている。けど、それができているのは魔法陣の技術をこの小国家群の中で独占しているからだ。それが漏れ出ると、こっちの優位性が無くなる。そうなったら、人数を増やしても食料確保ができなくなる可能性があるからね」

「では、今ある壁の外に新たに土地を用意して、そこに新しい人員を配置する形にでもするのがよいかもしれませんな。機密情報は壁の中でのみ行う、という形にするのが現実的だと思います」

「だね。オリエント国みたいに内壁の中が今この村にいる人間用の土地って感じになるかな。その外に新しく壁を作ってとりあえずそこには何がいるかな? クリスティナはどう思う?」

「それなら、宿がいるんじゃないかしら? オリエント国からこの場所まで病院に治療を受けに来てもらうんでしょう。そうしたら、日帰りってわけにはいかないかもしれないし、泊っていく施設は必要よ」

「そういやそうだね。それを考えると、宿に泊まる人用に食事を出すところもあったほうがいいかも。ほかにも、物が買えるようにお店もあったほうがいいんじゃないかな?」

「そうね。すぐに必要なのはそのへんかしら。で、徐々に新しい移住者を受け入れていく、と。そうなると、その人たちの家も必要だし、仕事もいるわね。全員を傭兵にするんなら話は別でしょうけど」

「うーん。まあ、傭兵は志願者を募るくらいでいいんじゃないかな。ゼンの話だと、このオリエント国にいる傭兵たちの中にはバルカ傭兵団に入りたいって考えている奴もそこそこいそうなんだよね。ひとまずは、そういう連中を受け入れて、この村で傭兵ではなく仕事がしたいって人はできることをしてもらうって感じでいいんじゃないかな」

「ええ、とりあえずはそんなところかと思うわ。けど、そうなると結構準備が必要そうね。ある程度の受け入れの準備ができていないところで人が集まってきたら、対応できなくなるかもしれないし」

「だね。新しく壁で囲って建物を建てるんなら、人を入れていくのは来年くらいがいいかも。だから、先にもっと計画を練っておこうか」

スーラやクリスティナとあれこれ言いながら案を出していく。

やばい。

結構楽しいかもしれない。

この計画はいわば街づくりというものになるんじゃないだろうか。

それまでの村とは違う、都市国家でもあるオリエント国のような形に近い二重の壁に囲まれた新しい小さな街を創り出す。

そんな計画だ。

俺やクリスティナは、村を拡張して街のようにするなら、こんな施設があったほうがいいんじゃないかと思うものを次々と上げていく。

あれこれ言い出したらきりがないし、多分全部をやろうとすると来年どころか何年も先まで実現しないんじゃないかと思うものも出てきた。

さすがにそれは無理なので、途中で一息入れてから出てきた考えの絞り込みを行う。

とりあえずは、村から街に変わることで、病院という施設を使ってのバルカ村の悪い印象をぬぐいとるのが目的でもある。

それをするために、最低限必要なものはなにかということになった。

が、それとは別に、さらに今後必要になってくるものがあると主張したのがガリウスだ。

それは俺やクリスティナのように、欲しいものではなく、街としてなくてはならないものだった。

なにかというと、街に必要な水道や下水などの設備だ。

俺やこの村にいる者たちは魔法が使える。

その魔法の中には生活魔法があり、【飲水】や【洗浄】といった便利なものがある。

これがあると、そんな設備がなくてもそれなりになんとかなるので、完全に失念していた。

だが、確かに言われてみると、生活魔法は誰もが使えるものではない。

フォンターナ連合王国とは違って、この東方では今も魔法を使えない人のほうが多いのだ。

そして、そのことは歴史的にも街づくりと密接に関係している。

最近まで人から人に名付けをして魔法を授けるなんてことができなかったこの地では、新しい街を作る際にはしっかりとした設備を作る必要があった。

それは、この地の気候なども関係している。

季節によっては雨が続く日もあるからだ。

排水関係はしっかりとしておかないと大変なことにもなりかねない。

街を作ってから水道や下水をどうするかを考えるなんてことはあり得ないというガリウスの意見は当然だろう。

最初にしっかりと街づくりの計画に含めて用意しておかないと、できた後から大変なことになる。

ものづくりの職人でもあるガリウスは、そんな街づくりの基本中の基本が俺やクリスティナから抜けていることを指摘してくれたわけだ。

そんなガリウスの指導もあり、今あるバルカ村を中心として外に新たな壁を作り、上水道や下水道、井戸、畑、そして居住地などをどうするか、入念に計画を建てていく。

ああでもない、こうでもないと言い合いながら、将来的に常に数百人規模の傭兵を戦場に送り出せる街を作ることを目指す。

そんな新バルカ街計画がひそかに練り上げられ、そして、その工事が開始されたのだった。