軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外部の診療

「ありがとうございました。墓参りできてよかったです」

そう言ってゼンやその仲間が頭を下げる。

バルカ村へとやってきたゼンたちは、自分の家族のお墓参りを終えていた。

普通ならば、墓参りのついでに実家に顔を出したりするのだろうが、すでにその家はない。

あったとしても、すでに別の奴がそこに住んでいるだろうしね。

そんなわけで、あっという間に用事が済んでしまったので、今は俺の家に来て休憩している。

「……すごいですね。美人さんが多くてドキドキします」

「ああ、ローラたちのこと? 身請けしてここに移り住んだ女性はだいぶ結婚相手が決まって、その相手の家に移り住んだんだけどね。まだ結婚していない人は俺の家で残っているんだよ」

「ローラさんですか? 聞いたことありますよ。オリエント国の娼館の中でも有名な人だって。そうか、あのローラさんがそうなんですね」

「あんまりジロジロ見ないほうがいいんじゃないの? ゼンは新婚さんなんでしょ? 奥さんに怒られるよ」

「そうでした。あいつ、結構やきもちやくんですよね。美人に目がくらんでいたなんて知られたら、機嫌が悪くなっちゃいますね」

お茶を飲みながら、ゼンたちとたわいもない話をしていく。

「そういえば、ゼンって今はオリエント国に住んでいるのか?」

「そうですよ。戦いで働きを認められて都市の中に入れるようになったんです。でも、まだ土地を買うようなお金はないんで、住むところを借りて生活しているんですよ」

「ふーん。それって、お金かかりそうだね」

「そうですね。お金を稼いで家でも買えればもうちょっと生活も安定するんでしょうけど、なかなか大変ですよ」

「頑張ってね。で、それとは関係ないかもしれないんだけど、ちょっと聞いてもいいかな。ゼンたちみたいなそんなに金持ちじゃないけど都市で生活している人って、病気になったときとかどうしているんだ?」

「どう、というのは?」

「治療を受けるのかってこと。医者に診てもらったりするわけだよね?」

「えっと、基本は寝て治るのを待つんじゃないかと思いますよ。よっぽど悪いときには、医者に頼るかもしれませんけど、適当に薬を買って飲むのも多いかもしれません」

「ふむふむ」

「それがどうかしたんですか?」

「いやー、ゼンが言ってたでしょ。このバルカ村に来た女性の扱いがオリエント国とかでは実態と違ったかたちで広まっているかもしれないってやつ。あの誤解を解けないかなって思ってたんだけどね。この村にある病院を使ってさ」

「病院ですか? すごいですね。ここって三百人もいないくらいって言ってませんでしたっけ。そんなところに病院なんてあるんですね」

「作ったんだよ。で、研究もしていてね。薬の効果を確認していたりもする。だから、なるべく多くの患者をみたいっていうのもあるんだよ」

「もしかして、オリエント国にいる病気持ちを治そうとかそういうことですか?」

「そうそう。ここにある病院に来てもらって治療を受ける。そのときに村のことを知ってもらえれば、そのうち誤解も解けるかなと思ったんだ」

「へえ。いいんじゃないですか。わざわざそこまでする必要があるのかって気もしますけど」

ゼンとの会話で少し気になることを聞いてみた。

どうやら、オリエント国に住む一般人は病気になったときにはそれほど簡単に医者にはかからないようだ。

基本的には寝て治す主義の人が多いらしい。

それ以外だと、薬以外の独自の治療法を披露している治療師を頼ることもあるのだとか。

ならば、そこにバルカ村の病院が食い込むことはできないだろうかと考えた。

戦場でも少し考えたが、この村では薬を作っている。

その薬を今後売ろうかとも考えていたが、それとあわせて病院での治療を外部の人間でも受けられるようにしてみようかというのが俺の考えだ。

アイの治療効果の検証の件もある。

ここの病院で治療して、一定の効果を出して治療技術があることを示す。

そして、そこで出す薬の品質と効果の高さも知ってもらう。

ついでに、バルカ村にきた女性が生き生きと生活していることも知ってもらったうえで、オリエント国に帰ってもらい、その話を周囲に広めてくれれば、いずれ間違った風評もなくなっていくんじゃないだろうか。

ただ、それをやるとなると準備が必要かもしれない。

この村の中では魔道具を作っている。

ほかのものはともかく、魔法陣なんかについてはできれば秘匿したい技術だ。

病院に治療を受けに来た人がそのへんの技術を見ることができないようにしておくぐらいは必要だろうか。

うん、そうしよう。

どのみち、この村の中だけでは人数が少ないためにアイの検証が思うように進んでいなかったというのもある。

ある程度、外からも患者を受け入れたほうが調べる速度が上がるだろうし。

そのときは、値段設定をどうするかは考慮が必要だろうか。

この村の住人は無料で診ているが、さすがに外の人間に対して誰でも無料にしたら、どれだけ人が集まってくるかわからないしな。

そのへんの金額調整なんかは議員であるバナージにでも確認しておいたほうがいいかもしれない。

こうして、ゼンとの会話の中での思い付きによって、バルカ村の病院は外部に開くことになったのだった。