軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武術会規定

「ちぇー、つまんねえ。なんで俺が出たらだめなんだよ」

「当たり前でしょう、アルフォンス君。この武術会は傭兵たちのためのものなんでしょう? それなのに、アルフォンス君が出て活躍する姿を見せても意味ないじゃない。それこそ、またバルカ御殿がどうとかって言われるわよ」

傭兵と女性陣とのお見合いを兼ねた行事。

そのひとつとしてバルカ村で武術会を行うことに決めた。

バルカ村の中にある、普段訓練をしている広場に集まって、戦う姿を観るというものだ。

その武術会に俺も参加しようかと思っていたが、話し合いの結果、それは却下されてしまった。

どうやら、傭兵たちから不満の声が上がったようだ。

もともとの開催目的を考えても、俺が出るのはおかしいという主張が一切間違っていないというのが悔しい。

それに、いくらなんでも子どもの俺と戦って負ける姿を見せてしまっては、女性たちに自分の強さを見せるどころではなくなってしまうというのもわかる。

武術会、出たかったな。

しばらく、そんなことを言っていたが、最終的にはあきらめて、その準備に専念することにした。

ちなみに、エルビスも出場はせずに救護班を務めてくれることになっている。

なにげに、エルビスはバリアントでの名付けの広がりから魔力量が上がってきていて、最近位階が上昇していた。

そのおかげで【回復】が使えるようになっているので、少々の怪我ならばすぐに治せるので安心だ。

「でも、武器は実剣を使ったりはせずに、木剣を利用するのよね。ほかには、槍や斧、弓といった武器ごとによる勝ち抜き戦もあり、と。こんなに武器の種類を増やして戦う必要あるのかしら?」

「微妙に個人によって得意な武器が違うしね。それに、勝ち抜き戦だとどうしても初戦で負けた奴が女性陣の目に留まる機会が少なくなるからね。一応、全員が複数回女性に自分を見せる機会は用意できたはずだよ」

「その分、時間がかかっちゃうけどね。一日じゃ終わらないかもしれないわね」

「まあ、いいんじゃないの? どのみち、品評会もやるつもりだし。それに、結婚話もそうすぐに決まるものじゃないでしょ。何回かに分けてやるのもありだと思うよ」

武術会は剣や弓などの武器ごとに、抽選で決めた勝ち抜き戦を行うことになった。

勝っていけば上に上がり、最終的に優勝を決めることになる。

その際には初戦で負けても再び戦える機会も設けた。

敗者復活戦をすることになっているので、一度負けただけでも終わりではないので、頑張ってくれるだろう。

武術会を行う広場で、周囲を取り囲むようにして女性陣に見てもらう。

成績上位の人から女性を指名して食事に誘う権利を得るようにしたり、あるいは、女性側から逆指名できるようにと考えている。

ちなみに、事前の話し合いの場ではローラが女性側の代表として意見も出してくれている。

ローラ曰く、あんまり過激に戦いすぎないでほしいということだった。

俺としては、できれば真剣勝負で生きるか死ぬかくらいのギリギリの戦いを見てみたいと思っていたが、どうも女性陣はそんなことを望んでいないようだ。

高級娼婦として都市国家であるオリエント国で生きてきたこともあり、普段そんなに血を見る機会もない女性たち。

いくら木剣などで戦うといっても血みどろの戦いを見せられたら、逆にお近づきになりたくないと思ってしまいかねないというのだ。

これが女性側から意外と多い意見だったので、実際に武術会をする前に予行演習も行っている。

適当な連中に目の前で戦ってもらい、どこまでならば許容範囲か確認もした。

その結果、俺が思っている以上にダメ出しが多かった。

可能な限り血が出るのを無くすようにし、痛々しい姿を観るのも防ぐほうがよいらしい。

というわけで、木剣でやるにもかかわらず、防具はしっかりとしたものをつけ、戦う際には側に審判をつけて判定を付けて行うことになった。

防具の上からの攻撃で、痛みに耐えればまだまだ戦えるという状況であっても、実剣ならば大きな損傷が与えられた可能性があると判断されれば有効打として判定をとる。

有効打を複数とれば、相手が動ける状態であっても勝者が決まるという仕組みまで用意している。

「なんか、この武術会規定だと、実戦での強さとは別の強さが求められそうな気もするけどね。力いっぱい戦うよりも、いかに有効打を集めるかが勝負を分ける気もする」

「それでいいじゃない。娼婦をやっていた子のなかには、いろんな経験をした人もいるのよ。それこそ、男性の暴力を観たいとは思わない子もいるの。そういう子でもある程度楽しめるようにしておくことは悪いことだとは私は思わないわよ」

「ローラにも同じようなことを言われたよ。おかげで、けが人の少ない武術会になりそうだね」

ちなみに、戦いの判定を行う審判はアイに担当してもらうことになった。

最初は傭兵たちの中から選んで審判をさせようかという案もあったが、模擬戦で試してみると判定基準が人によって違ってしまうことになったからだ。

ある人は実戦さながらの強さで武器が当たらない限り有効打の判定をしなかったと思えば、別の人が審判だとポンと当たっただけでも有効打を認められてしまう。

それに、仲のいい人に対してのみ有利な判定をする可能性もある。

それらを防ぐために、アイが審判を務めることとなった。

アイならば毎回同じ基準で判定をつけてくれるだろうし、もし判定に不満があったとしてもあまり文句を言われないだろう。

このバルカ村ではアイの立場は結構高く、アイに文句を言うのは俺に言うのに等しいし。

こうして、バルカ村で行われる武術会は初めての開催の割には非常に荒々しさのない、きれいな戦いの場となることになったのだった。