軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フォンターナ家の事情

「アルス、貴様もまだ子供ながらに集団をまとめているようだな。苦労しているだろう」

「え? ええ、そうですね。見た目で侮られることもありますし」

「そうだろうな。少し俺のことでも話してやろう。アルス、貴様は俺が何歳のときにフォンターナ家の当主になったか知っているか?」

「いえ、知らないですけど……」

「3歳だ。先代である親父が死に、3歳のときに俺がフォンターナ家の家督を継いだ。だがな、3歳の子供が領地をまとめることなどできると思うか?」

3歳か。

俺が畑を耕しはじめた頃くらいだろうか。

俺のように前世の記憶があっても領地をまとめるのは無理だろう。

なにせ、俺もあれこれ言われたりしたのだ。

俺の言うことも子供がいうたわごとだなどと言われてまともに取り合ってくれる人はほとんどいなかった。

結果、家の裏でほそぼそと畑いじりをするくらいしかできなかったのだ。

「そこで俺の代わりに領地をとりまとめることになったのがレイモンドだ。やつは俺の後見人という立場を利用して領地を経営していった。その後、俺が大きくなってもその状態が続いていたんだよ」

「それは別にいいのでは? 問題ないように思いますけど」

「いいわけがないだろう。やつはフォンターナ家に俺しか男児がいないことをいいことに、領地のすべてを牛耳ってきたのだ。俺を傀儡としてな」

ああ、そういえば少年であるカルロスがフォンターナ家の家督を継いだというのは上の世代がいなかったということになるのか。

なるほど、トップを子供にしておけば実質的にその領地を私物化することも可能というわけだ。

思い返してみれば俺がヴァルキリーをフォンターナ家に献上しにいったときも、レイモンドの一存で販売許可などが決まっていたように思う。

だが、その許可証にはフォンターナ家の紋章が使われていた。

もしかすると大事なハンコを後見人のレイモンドが勝手に使っていたりしたのかもしれない。

「俺はずっと機会をうかがっていたのさ。レイモンドが失敗するのをな。そして今回の出来事が起きた」

「ん? 俺に倒されると予想していたってことですか?」

「まさか。さすがにそんなことは考えもしなかったさ。だが、やつが許可した北の森の開拓地にフォンターナ家の関知しない砦が築かれ始めているというだけでも十分失脚の原因となる。だから、お前が暴動を起こしたときにレイモンド自身に責任を問うて鎮圧に向かわせたのさ」

「ああ、ようするに俺に土地所有の許可証を出したことがレイモンドの失敗だったってことか」

「そのとおりだ。小さな失点でもそれを理由にやつの勢力を切り崩すきっかけにはなる。だが、まさかの当人が急にいなくなったというわけだ。苦労したぞ。レイモンドが死んだあと、フォンターナ領の勢力を俺が手中に収めるのはな」

そうか。

野戦で俺がレイモンドの率いるフォンターナ軍を打ち破ってから、フォンターナ家のその後の動きが遅かったのはそこに理由があったのか。

混乱した家中をとりまとめるための時間が向こうには必要だったのだ。

俺が城壁のある街へと攻撃を仕掛けるよりも城造りに集中したものだから、その余裕が生まれた。

あのとき攻撃を仕掛けていたらどうなっていたんだろうか。

まあ、もしもを考えるのはやめよう。

攻城戦になれば間違いなくこちらの死傷者の数も増えていただろうしな。

「ということはカルロス様はすでにフォンターナ家の権力を一本にまとめて握っているということですか。それだと、こちらと和睦する意味ないんじゃ……」

「そうでもないさ。レイモンドの親族や部下は奴からの甘い汁を吸って生活してきたからな。俺が代わりに権力を握ると、その旨味がなくなる。つまり反発がでることになる。今は表面上従ってはいるがな。それを貴様という存在で抑える」

「俺ですか?」

「そうだ。家中をまとめたといっても俺自身の手駒は数が少ない。だが、バルカという新たな力を取り込んでおけば、その抑えとなる。ゆえに、今回の話になるわけだ。アルス、貴様を騎士として領地もやろう。俺の配下になれ」

うーむ、貴族というのも大変なんだなと思ってしまう。

まさか、自分の住んでいる土地が権謀術数渦巻く情勢だったとは思ってもみなかった。

今回のカルロスの提案だが、俺にとってどうなるんだろうか。

どうやらフォンターナ領を抑えたもののイマイチ家来たちとの力関係で微妙な立ち位置にあるカルロスという当主。

だが、そうは言っても貴族としてこの地をまとめているのは間違いない。

その当主自らがやって来て部下になればこれまでのことを水に流して小さいながらも土地を任せようと言ってきている。

部下になったあとに何を言われるのか分からない部分も多いが、悪い話ではないのではないだろうか。

少なくとも今回の件での罪を問わないでいてくれると言うのはありがたい。

それになにより、この話をけるということは話をまとめてくれたパウロ司教との関係にも影響を与えてしまうだろう。

ぶっちゃけ教会に睨まれ続けるかもしれない、という可能性のほうが怖い気がする。

よし、決めた。

もともと、俺が戦い始めたのは土地を取り上げると言われたからであり、兵士を手に掛けたことにより引くに引けなくなったからだ。

別に貴族から領地をぶんどってやろうなどと思っていたわけではない。

だが、このままの条件ではこちらも困る。

もうちょっと条件面での待遇をよくしてもらう。

こうして、俺とカルロスによる秘密会合は夜更け過ぎまで繰り広げられたのだった。