軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな商機

「ソーマ教国製の美容液。まさか、これが本当にあの呪いの原因なのでござるか?」

「間違いないと思うよ、ガリウス。奥さんやマーロンもこれを使っていたんだよね?」

「うむ。そのとおりでござる。というよりも、今もマーロンはこの美容液を欲しがっていたのでござるよ。きれいな肌を取り戻したいと言って」

オリバが突き止めた呪いの原因。

それはソーマ教国から取り寄せられて販売されていた高級化粧品だった。

バルカ村でそのことを聞いたガリウスが肩を震わせる。

この化粧品は亡き妻が愛用していたもので、当時幼いマーロンには母の形見としてこの化粧品を分け与えていたのだそうだ。

それが原因で体を悪くするとも知らずマーロンは肌に乳液を塗り体調を崩すこととなり、さらにはその元凶であるソーマ教国から高い金額で延命薬などを買うことにもなったのだ。

怒らずにはいられないだろう。

「ただ、評判自体はすごくいいみたいだね。こいつを使うとお肌がつるつるでプルンプルンになるのは間違いないらしい。今回、回収騒動になったけど、それに反対する意見もあるみたいだよ」

「反対の意見でござるか? 自分が病気になってもいいとでも言うつもりなのでござるかな?」

「その可能性はあるかもね。なんせ、俺とノルンの治療成績は抜群だから。もし体が悪くなっても治せるんだったらかまわないだろうと考える人もいるかもよ。まあ、それだけ美容が大切なんだろう」

「いやはや、世も末でござるな」

今回、オリエント国のバナージなどに掛け合ってこの化粧品の使用を禁止するように通達を出すことに成功している。

が、それがどこまで有効かはよくわからない。

というのも、使用禁止といいつつ、使ったとしてもなにか罰せられるわけでもないからだ。

あくまでも自己責任。

ただ、これは危険ですよと周知する効果くらいしかないかもしれないのだ。

だが、だからといって、これからも遠慮なく使い続けられても困る。

というか、治療が可能だからといって、治療方法が確立したわけでもない。

俺やノルンなら治すことができるとはいえ、それはあくまでも個人技みたいなものである。

もしも、俺たちがいなくなったら治せないのだ。

そんな危険性のあるものをいつまでも野放しにしておくのはどうかと思う。

一応、最初に見た患者の商人などもこの薬が流通しないように手を打つと言ってくれている。

使用者が化粧品を手放さなくとも、商人が売らなければ人の手に渡らなくなり、病気にならなくなるかもしれないという考えからだ。

それは一理あるかもしれない。

が、バナージは別の意見も持っていた。

それは闇取引で出回る可能性があるというものだった。

効果の高いものなどは、下手に禁止にして市場に出ないように制限すると表面的には流通しなくなる。

が、それはあくまでも見えにくくなるというだけのこともある。

たとえば、かつてどこかの小国ではお酒を禁止にしようと試みたことがあったらしい。

が、結局は密造されたお酒が闇取引されて、裏社会の勢力拡大につながったという出来事があったらしい。

お酒と化粧品は違うだろうが、そういう可能性もあるために注意して様子を見ているのだそうだ。

まあ、そもそもの話としてオリエント国で流通を止めたところで、ほかの国で売っていたら意味ないというのもあるのだろうが。

「なるほど。なかなか難しいものでござるな」

「でも、これはいい機会かもしれない。新たな儲け話にもなりえるからね」

「新しい儲け話でござるか? なにかするつもりなのでござるか、アルフォンス殿?」

「ああ。ソーマ教国製の問題の化粧品を強く使用禁止にできないなら、その代わりのものを用意すればいいんだよ。ある意味ではそれだけ化粧品に需要があるってことだろ? もっと美容効果がある化粧品を市場に流せばいい」

「どういうことでござるか? もしかして、アルフォンス殿がなにか化粧品を作って売るということでござろうか?」

「そのとおりだ。バルカ村発の化粧品を販売しよう。不治の病を治療した俺謹製の新たな化粧品。クリスティナたち以外の商人にも伝手ができたことだしね。大々的に売り出せば、飛びつく人は多いと思うよ」

「それはそうかもしれないでござるが、そんなにすぐに効果の高い化粧品など用意できるのでござるか? 新たな商品開発はある意味でものづくりの一番難しい部分でもあるでござるよ?」

「大丈夫だ、問題ない」

ガリウスに話した計画。

それは、くだんの化粧品の代わりとなる効果の高い新しい化粧品をバルカ村から売り出すというものだった。

このバルカ村では魔道具作りで成功しているが、できれば魔道具以外でも安定した収入源がほしいと思っていた。

今回の件はちょうどいい機会なのではないだろうか。

新しい化粧品については考えがある。

ガリウスの言うとおり、これから化粧品を新たに開発するというのであれば多分実現しないだろう。

が、問題ない。

なぜなら、すでに材料と製法が俺の手元にはあるのだから。

新商品の原料は塩害対策として植えた塩草だ。

こいつは土中の過剰な塩分を取り除いてくれる変わった植物でもあり、そして毒物でもあった。

触れると毒性を持つ塩草。

だが、その毒性をうまく処理して精製すると媚薬になるのだという。

実はこの塩草は媚薬という使い方以外にも活用法がある。

というよりも、カイル兄さんがそれを見つけ出したからだ。

カイル兄さんの持つ領地も多くが塩害の被害にあったそうで、そこでも塩草を植えたりしていたそうだ。

そして、その塩草を見た植物の高位精霊と契約しているカイル兄さんは、媚薬ではなく化粧品として活用する方法を開発した。

人体に強く作用する成分が入っている塩草は、うまく処理しさえすれば効果の高い薬にもなるのだそうだ。

カイル兄さん仕込みのその化粧品はリード家の領地だけではなく、今やフォンターナ連合王国内の各地で使われて、高く評価されているらしい。

使えば肌荒れはあっという間に改善し、しわやシミは消え去り、さらには髪の毛もうるおいあふれるものになるのだそうだ。

もちろん、その化粧品の作り方はアイが知っており、カイル兄さんにもすでにこちらで作って販売してもいいという許可は貰ってある。

こうして、バルカ村では新たに高品質の化粧品を作り始めることになったのだった。