軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

治療依頼

「お願いします。なにとぞ、なにとぞよろしくお願いします」

オリバからの紹介で人に会う。

俺が会うことになったその人は、オリエント国に住む人物で評判の店を持つ商売人らしい。

夫婦そろって協力し、店を大きくしてきたそうだ。

だが、その奥さんが病気になった。

不治の病に侵されて、今は床に臥せっているのだという。

最初は軽い不調からだったが、今は一日の大半を横になっていなければいけないくらい調子が悪いらしい。

そして、その原因は心臓だと言われて、いろんな治療を試したがよくなることはなかった。

その話を聞くと、なるほど、マーロンの時と似ているのかもしれない。

偶然知ったというマーロンの話を頼りに、伝手を頼ってこうして俺のところにまで連絡を取ってきたのか。

「どうだ、ノルン? 治りそうか?」

「ん、まあ、問題ないだろ。あの時の娘と同じだからな。多分よくなる」

「本当ですか? でしたら、ぜひ治療をお願いいたします。お代はこのくらいでいかがでしょうか?」

「こんなに? 本当にいいんですか?」

「もちろんです。妻が治るのであれば、いくら払ってもおしくはありません。それに、この金額は薬の代金として用意していたものなのです。命を生き長らえさせる薬というのがありましてな。非常に高価ですが、不治の病で倒れた者の命をなんとかつなぎとめることができる薬です。その分を、治療費としてお支払いするのでお気になさらずに」

オリエント国内にあるバナージに借りていた屋敷。

そこで、その依頼主である商人の妻を診た。

ノルン曰く、穢れた血で侵されている状態だそうだ。

ということは、治る可能性は十分にある。

それに、この商人の妻はマーロンとは違ってまだ延命薬を使ったりはしていないらしい。

一応、体が悪いなりに今も最低限は動くことができるというので、治療後はしばらく休んでから動き始めれば問題なく復帰できるんじゃないかと思う。

ノルンと二人で治りそうだと話していると、商人から治療費の提示があった。

すでにお金を用意してきていたようだ。

が、その金額の高さに驚いた。

延命薬ってこんなに高いのか。

傭兵団が依頼を受けて戦場に行く報酬よりも高いかもしれない。

限られた土地である都市国家内でもそれなりの屋敷をすぐに買えるんじゃないかという金額がそこにはあった。

これは確かに破産しそうだ。

ガリウスが貧困街行きになったのもわかる気がする。

「わかりました。では、その金額でお引き受けしましょう。すぐに治療を行いますので、一度退室していただけますか?」

もらえるものは貰っておこう。

オリバに言われて会う約束をしたときには、治療費のことをあまり考えていなかったのもある。

というか、相場が分からない。

ただまあ、ほかでは治る見込みがないのであれば、このくらいの金額を貰ってもばちは当たらないだろう。

少なくとも、治療ができずに延命効果があるだけの薬でもこの金額をとっているみたいだし。

商人を部屋から出し、患者である女性だけが残る。

その女性にノルンが触れた。

すぐに治療を開始する。

胸に手を当てて、女性の体に流れる血液から穢れた血だけを除去する。

そうすると、やはりそれまで苦しそうにしていた状態が落ち着いた。

呼吸がまず安定し、顔色もよくなる。

一応脈などを診るが、多分大丈夫だろう。

「大丈夫ですか、奥さん?」

「……はい。ずいぶんと楽になったような気がします」

「そうですか。今、このノルンがあなたの体に流れる血をきれいにしました。これでよくなるはずです。しばらくは安静にして、栄養のあるものを食べて体をいたわってください」

「ありがとうございます。なんとお礼を言ってよいのか。夫や家族には随分と負担をかけていたのです。本当にありがとう」

「いえ、いいんですよ。ですが、聞きたいことがあります。この病気はいつからかかっているのでしょう。ご自分でこれが原因だと思うようなことは、なにかなかったですか?」

「病気の原因ですか? いえ、もう何年も前から少しずつ体が悪くなっていましたが、原因と言われてもわかりません。思い当たらないです」

「そうですか。ああ、無理に考えなくてもいいですよ。ちょっと聞きたかっただけなので」

体の状態が少し落ち着いた女性と軽く話す。

病気という名の呪いにかかった原因は特に思い当たらず、か。

まあ、そんなものがすぐに思い当たるくらいなら、誰かが病気の原因を突き止めていてもおかしくなさそうだ。

治療を終えて特に問題なさそうだったので、商人に治療が完了したことを伝え、治療費を受け取る。

それでおしまい。

そうなるはずだった。

だが、この商人はさすがにオリエント国内で商売を成功させた人物だけあったようだ。

だいぶ顔が広かったようで、この話をあちこちでしたらしい。

そうしたら、その話を聞いて別の治療話も舞い込んでくることになった。

どうやら、不治の病として呪いを受けている人物は結構いるらしい。

それから、俺はこの病気の治療を何件も引き受けることになったのだった。