軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オリバの頼み

「お疲れ様です、アルフォンス殿。今回のバルカ傭兵団への報酬がこちらとなります」

「ありがとう、オリバ」

オリエント国に攻め入る小国の軍がある。

そんな情報が入り、その迎撃のために俺たちバルカ傭兵団が呼ばれた。

すぐに人数をまとめて出陣し、小競り合い程度の戦いが終わった。

都市国家であるオリエント国はその周辺にもいくつか支配下に置いている村などがあるが、そこが襲われたのだ。

あっさりと奪い返した後は、追撃をかけることもなく戦闘終了となり、傭兵団は引き返すこととなった。

この一年はずっとこんな感じだった。

小さな戦いに出向いてはすぐに終わる。

攻めてくる相手に逆侵攻をかけることもないので、あっという間に役目も終わってしまう。

正直、つまらない。

もうちょっと派手な戦いがあってもいいのにと思ってしまう。

唯一の救いはオリエント国がきっちりと報酬を支払ってくれていることだろうか。

実は、オリエント国はバルカ傭兵団以外にも傭兵を雇っている。

たまに違う傭兵団と同じ戦場へと行くことがあり、何度か情報交換もした。

そこで聞く話では、傭兵団に対しての支払いを踏み倒す国もあったりするようだ。

というか、そもそも、防衛だけでは金にならない。

むしろ、よその土地を攻めとっていかない限り、戦いというのはお金を消費するのみなのだ。

ほかの傭兵たちに言わせれば、オリエント国は最近のなかではいい雇い主なのだという。

今まであまり流通していなかった魔道具の開発に成功し、そこで金を稼いでいることが金払いの良さにつながっているんじゃないかと言っていた。

確かに、魔道具はかなりの儲けを出しているようだ。

というか、下請けとして実際に魔道具を作っているバルカ村も結構儲けさせてもらっている。

なんなら、傭兵として実戦に出るよりも、そのための人員を魔道具作りに当てたほうが儲かるくらいなのだ。

ということは、バルカ村から魔道具を仕入れて売りさばいているバナージなどはもっと稼いでいることになるんだろう。

クリスティーナなどは、戦場に出なくてもいいんじゃないか、なんてことを最近言うようになってしまった。

「……あの、報酬、足りませんでしたか?」

「いや、そんなことはないよ。間違いなく今回の代価は受け取ったよ、オリバ」

「よかったです。バルカ傭兵団のことは私もバナージ議員も信頼しているんですよ。アトモスの戦士がいるだけではなく、救援に向かった村でも乱暴なことをしないと評判なんです。だから、仕事を依頼するのにまず最初に声をかけるのですが、報酬は他の傭兵団のこともあってあまり高くはできなくて……」

「バルカ傭兵団はきっちり訓練しているからね。とくに略奪とか暴行しないようには普段から徹底しているんだよ」

「素晴らしいですね。いつも助かっています」

オリバから得た報酬をきちんと数えなおしてから、そんな世間話をする。

ほかにいる傭兵団の中には助けに行った先の村などで暴れるやつもいるそうだ。

とくに報酬に不満があると村から金品を持っていこうとする連中までいるらしい。

なので、傭兵団の評判についてはオリエント国も結構気にしていた。

その中で、バルカ傭兵団は優等生とされていた。

エルビスが日ごろ厳しく訓練してくれているからだろう。

とくにあいつは規律にうるさいところがあるから、略奪なんてしようものなら容赦なく処分されることになる。

なので、それが分かっているからか暴走するような傭兵は今のところバルカ傭兵団の中には一人もいなかった。

「ところで、もう少しだけお話してもいいでしょうか?」

「ん? どうしたの、オリバ?」

「実は、ちょっと頼まれごとをしたものでして。今、アルフォンス殿が治めているバルカ村にはあのガリウス殿がおられるのですよね?」

「うん。そうだけど、ガリウスがどうしたんだ? 先に言っておくけど、あいつは俺が引き入れたから、オリエント国に戻せとか言われても無理だぞ」

「ああ、違います。そうではありません。いえ、確かにあのガリウス殿ほどの人がずっと貧民街でくすぶっていたのも問題で、ぜひともオリエント国に帰ってきてその腕を見たいという気持ちもあるのですが。そうではなく、ガリウス殿の娘さんのことについてです」

「ガリウスの娘? マーロンのこと?」

「そうです。そのマーロンさんですが、聞いたところによると死んだと思われていたマーロンさんは、実は不治の病に侵されてずっと臥せっておられたのですよね。それが今は回復しているという噂がありまして。そのことについてお聞きしたかったのです」

どうやらオリバはガリウスよりも娘のマーロンのことが気になっていたようだ。

よくそのことを知っているな。

というか、不治の病か。

あれはノルン曰く病気ではなく呪いだということだったが、やはりオリバや他の者もあれを病気としてとらえているようだ。

「マーロンなら元気になったよ。ただ、ずっと体調が悪かったからね。まだまだ様子見が必要だけど」

「いえ、それが聞きたかったのですよ。というより、どうやって不治の病から回復できたのか不思議なのです。もしかして、バルカ村にはあの病気を治せる秘密があるのでは?」

「まあ、そんなもんかな? っていうか、なんでそんなにあの病気のことが気になるんだ? もしかして、知り合いに誰かいるのか? その病気にかかっている奴が」

「……実はそうなのです。もし、本当にあの不治の病を治せる方法があるのであれば、お願いです、アルフォンス殿。ぜひ、その病気の患者を紹介させてもらえないでしょうか? 今までどのような手段を使っても治らなかったと嘆いているところに、ガリウス殿の娘さんの話が流れてきたではないですか。その治療を受けてみたい。そう言っている人がいて、私にアルフォンス殿へそう伝えてくれないかと頼んできたのですよ」

オリバがそう言いながら頭を下げてくる。

そういえば、マーロンの受けた呪いは不治の病であると知られるくらい認知度があったのだったか。

ということは、もしかして、それなりの人があの呪いを受けて不調を訴えているのかもしれない。

そして、そのうちの一人がオリバの知り合いであり、マーロンの話を聞いて俺にその話を伝えてくれと頼みこんできたのか。

どうしようかな。

まあ、会うだけならいいか。

もしかしたら、実は違う病気だったりしたら治せないかもしれないけれど、そのときはそういえばいいし。

マーロン以外も同じように呪いを受けているのだとしたら、それを確認してみたい。

そう考えた俺は、オリバの願いを受け入れてあの呪いに侵された者と会う約束をしたのだった。