軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

呪い

「終わったのか?」

「ああ。多分、これでどうにかなるんじゃねえか? つっても、俺も久しぶりに見たからな」

「マーロンの病気のことについて、やっぱり知っていたんだな、ノルンは」

女性の体から離れるノルン。

それと入れ替わるようにマーロンのもとへとガリウスが駆けていった。

慌てた様子でマーロンの体を抱き上げて、呼びかけるガリウス。

しばらくすると、マーロンが片手をあげてガリウスへと手を伸ばす。

さっきまでは息をしているのかしていないのかわからないような仮死状態だったのが、動き出したのだろうか。

ということは、ノルンは本当に病気を治してしまったのだろう。

こいつ、意外と役に立つな。

ミーティアの混血もなんだかんだと言いながら解決してくれていた。

吸血鬼になるための道具として作られた魔剣だが、さすがに長い年月を過ごしてきたというだけはあるなと感心してしまう。

「つーか、あれは病気じゃねえよ」

「え? 病気じゃなかったのか? 不治の病だとか言われていたみたいだけど」

「違う。あれは病気じゃない。呪いだ」

「……呪い?」

「特殊な方法で作られた薬。その薬を飲むと時間をかけてゆっくりと死に至る。そういう呪いが込められた薬ってのがあるのを昔見た。それと似ていた」

「ちょっと待ってほしいでござる。呪い? 薬? どういうことでござるか。マーロンの病状は心臓の病気が原因であると言われているのでござるよ?」

ノルンが急に変なことを言い出した。

呪いがどうだと言っている。

そして、それを聞いたガリウスがマーロンの体を観ながらも、首だけを回してノルンの言葉に反応した。

そうだ。

さっきまでの話でマーロンの体は心臓に問題があったのだと聞いていた。

それが薬が原因というのはいったいどういうことなんだろうか。

「あの女の体は確かに心臓が悪かったんだろう。だが、それは原因ではない。結果だ。体が呪いによって侵されたから心臓が悪くなっていた。いくら心臓に対して治療をしても意味はない。なぜなら、原因は他にあるんだからな」

「ノルン殿、それは本当でござるか? 今までそのような話を聞いたことがないゆえに、到底信じられないでござるよ」

「信じる、信じないはお前の自由だ。だが、現実を見ろ。その女は動き始めた。それが何よりの証拠だろう」

「た、確かにそうでござるが、にわかには信じられないでござるよ。薬が原因なのでござるか? だが、呪いというのはいったい?」

「さっき、お前が自分で言っていただろう。呪いを使う国がある、と。禁呪とかなんとか言っていたっけか?」

「……まさか、呪いというのは禁呪のことなのでござるか? ソーマ教国の禁呪が関係している?」

「だろうな。これはその女の中にあった血の一部だ。黒くなっているのがわかるか?」

そう言って、ノルンがガリウスに向けて手を出す。

その手には、マーロンの体から取り出したらしい血の塊があった。

ノルンの力で血を固めたので塊となっているが、その血はどす黒く、気味が悪い印象を与える。

あんなものが体の中にある血液と一緒にあったら、そりゃあ調子も悪くなるだろうと思ってしまう。

「アルフォンス、これが何かわかるか?」

「さあ……、何って言われても困るな。なんだろう? 腐った血の塊にしか見えないんだけど」

「これは穢れた血だ。呪いによって血の一部が穢れていたんだ」

「穢れ?」

「そうだ。今はいるかどうか知らんが、大昔に不死者というのが出てな。その不死者を研究しているって奴が呪いを生み出した話があったはずだ」

「えっ!? 不死者ってあれだろ? なんか、他の者にも影響を与える穢れってやつのはず。大丈夫なのか、ノルン?」

「多分、これは大丈夫だろ。こいつは不死者そのものじゃないからな。そこから作った特殊な薬によってできたのがこの穢れた血だったはずだ。こいつが血の中にできるとゆっくりと体を腐らせて死ぬんじゃなかったかな? 大昔のことだから記憶があいまいになってきているが、確かそんな感じだったはずだ」

ちょっと待て。

ノルンが言う内容について考えてしまう。

ノルンはマーロンの体の中から血の塊を取り出した。

それはどす黒い血の塊で、腐っているようにすら見えた。

そして、それを見て、ノルンはマーロンの体は不死の病ではなく、呪いが原因だと言った。

どす黒い血の塊は穢れた血だとも言う。

その穢れた血は不死者と関係しているという。

あのアルス兄さんも戦った、不浄なる者。

周囲を穢れた魔力で汚染し続けるとかいう、災害みたいなやばいやつだ。

そんな不死者のことを調べて作られた呪いの薬。

それがマーロンの体を冒していた。

「呪いを作った呪術師の奴はさすがにもう死んでるよな? 禁呪ってのを使う国はソーマとかいう神を信仰しているとか言っていたが、なんか関係あるのかね?」

ノルンがそう言っているのを聞きながら、俺はガリウスと目があった。

戸惑いながらも、俺もガリウスもノルンの言うことを頭の中で整理し続ける。

ということは、なにか?

ノルンの言うことが正しければ、呪いは禁呪と同じということになる。

そして、不治の病の原因となる薬という名の呪いを作ったのはもしかしたらソーマ教国が関係していて、その不治の病に侵されたマーロンを生き長らえさせたのも教国の薬の効果だ。

ということは、最初からソーマ教国がかかわっていたのだろうか。

俺たちは、ノルンの言うことをしばらく頭で考え続けながら、お互いの顔を見つめ合っていたのだった。