軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

解決のために

「パウロ司教が俺をかばうってことですか?」

「ふふふ、そう怯えなくとも大丈夫ですよ。別にとって食おうというわけではありませんから。話は簡単です。あなたは私を通して村人にバルカ姓を与えた。そう説明するだけですべて丸くおさまるというだけの話です」

「だから、わざわざパウロ司教がそれをする理由っていうのがわかりません。なぜ、かばうような真似を?」

「それも単純な理由ですよ。すべての原因はあなたです。今回わたしの位階が上がり、司祭から司教へとなることができたのは、あなたからの魔力がキッカケです。もし、あなたがいなくなれば私の位階が下がる危険性があるのです」

「……なるほど。ていうか、下がったりもするんですね、位階って」

「そのような事例があるのは事実です。さらにいうと、私の管轄である教会で名付けを行ったアルスが命名の儀の秘法を悪用して勢力を増やした、という話は私にとってはなるべく隠しておきたいという面もあります」

「ああ、スキャンダルのネタってことか」

「であれば、あなたとは今後もうまく関係を保っておきたいと思うのは当然でしょう。多少上層部への報告に誤りがあることくらい、よくあることですしね」

「教会組織って怖いですね……。いや、でもそうしてくれるなら助かります」

「ですが、何もなしでとはいきません。やはりあなたの行動は目立ちすぎました。せめて、手順前後とはなりますが、喜捨を行ってもらいましょう」

また金の話か。

いや、それも仕方ないか。

本来貴族が配下を騎士にするためには教会を通して喜捨を行ってから名付けをしてもらう。

ということは騎士が増えたということは教会に金が入るということを意味するのだ。

今回、バルカ村を中心に爆発的に魔法を使うことができる人間が増えた。

それを俺がパウロ司教へと名付けを依頼して魔法を広めたのだという報告をするのであれば、当然そのための代価が発生していなければおかしい。

虚偽報告するための見せ金が必要だということだろう。

「わかりました。払いましょう。おいくらですか?」

「そうですね。ざっとこのくらいあればいいでしょうか」

「いっ!! 高すぎないですか? 俺が今まで貯めたお金が全部吹っ飛んでいくんですが」

「ということは払えない額ではないということですね。正直驚きです。普通こんな金額はとうてい払えませんよ。さすがこれだけのことをしでかしただけはありますね」

くそ。

簡単に言ってくれるぜ、この人は。

俺が今まで使役獣販売から魔力茸の販売、その他諸々で稼いだ金がすべてなくなってしまう金額をふっかけてくるとは。

それって本当に正規の値段なのか?

俺の資産総額を知った上で言ってきているんじゃないだろうかと思ってしまう。

「ちょっと待ってください。今回の騒動を解決するためなら有り金全部出しても別に構いません。けど、教会との関係だけの解決に全財産消費するんだったら意味ないですよ。パウロ司教はフォンターナ家も含めての解決法を提示するんじゃないんですか」

「ふふ、よく気が付きました。その問題も私がなんとかしてみせましょう」

「なんとかって、どうにかできるんですか、パウロ司教?」

「可能だと思いますよ。先日まで私がこの地を留守にしていたのは理由があります。それは位階が上がったことによる司教への昇格とともにいくつもの教会をとりまとめるエリアを決めるためでした。そうして、私はこのバルカ村を含めたフォンターナ領の教会統括を仰せつかったのです」

「フォンターナ領? それってフォンターナ家の領地にある教会すべてをまとめるのがパウロ司教だってことになるの?」

「そのとおりです」

「そりゃまたすごいけど……、そのことがフォンターナ家とのやり取りにどこまで有利に働くのか俺にはわからないんだけど」

「そうですか。ならば、ここであなたに質問します。今回、あなたはフォンターナ家と敵対しました。では、フォンターナ家の視点から見ると、今回の騒動のどこに一番注目していると思いますか?」

「フォンターナ家が注目するポイント? 一度俺に負けたから、次は勝てるかどうかが気になってるんじゃないのかな?」

「それは違います。あなたは問題の本質が全く見えていません」

なんだそりゃ。

また本質が分かっていないとか言われたんだが……。

昔マドックさんにそのことを言われたときも、木こりと揉めかけたんだったか。

あのときは木こりとしての誇りをないがしろにしているとかだった。

「貴族のメンツをどう保つか、とかですか?」

「はあ、全然違いますよ。いいですか、アルス。今回の騒動でフォンターナ家が一番重要視しているのは、バルカ勢が使う魔法はどこから来たのか、ということです」

「どこから? 俺が名付けをしていたっていうのは、貴族ならば調べそうなものだけど、まだわかっていないとか?」

「そうではありません。普通、魔法を使える人材などそうはいません。ましてや、それを他者に授けるなど農民はしません。では、誰だったらするのか。それは貴族以外にはいないでしょう。しかし、バルカ勢が使う魔法はどれもフォンターナ家のものではない。つまり、よその貴族がフォンターナ領の農民に魔法を授けて暴動を起こしているのではないか。フォンターナ家はそう考えているのですよ」

なるほど。

確かに言われてみれば当然だろう。

そもそもの出発点は森が急激なスピードで開拓され、その地に砦のような壁が築かれはじめたことにある。

不穏分子がいるのではないか。

そう思って土地を接収しようと動いた瞬間に兵士のひとりが殺されて、農民が扇動されたように暴動を起こして貴族軍まで襲った。

こう考えると、単純に農民反乱とは思えないのかもしれない。

むしろ作為的なものがあると思うほうが普通ではないか。

他の貴族が関わっているのではないか。

そう思うのが当然の流れではないか。

「そこで、私がフォンターナ家に話を通してきます。今回の件は他の貴族は関係なく、あなたが使う魔法を私が農民に授けたものだったと。貴族による干渉などは存在せず、住民が土地を取り上げられそうになって反抗しただけだったと、そう言うのです。幼い頃からあなたを知っている私だからこそ言える内容ですね」

「それってパウロ司教は危なくないの?」

「そのために事前に根回しを行います。もっとも、あなたからの喜捨がなければとうてい無理でしょうが」

説得や根回しにも金がかかるか。

地獄の沙汰もなんとやらっていうしな。

パウロ司教も危険はあるだろうが、それだけ俺の存在が重要なのだろう。

一度上がった位階が、もし仮に俺が死んでしまえば失われるかもしれないのだ。

ならば、俺のためといいつつも、本音は自分のために積極的に頑張ってくれるのではないだろうか。

こうして、俺は今回の騒動の解決のために、パウロ司教に金を払って、フォンターナ家へと話をつけに行ってもらうことにしたのだった。