軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

活用法

「みてみて、おねえちゃん。見稽古」

「わー。上手よ、ミー。うん。うまくできているよ」

「えへへ。そうでしょー。これからは、ミーだってこれくらいできるんだからねー」

俺は【見稽古】という魔法を開発した。

これで、今まで以上に子どもたちの訓練が進む。

実際にそれは正しかった。

今も、キクやほかの子たちが【見稽古】を使ってさまざまな武器の扱い方を習得していっている。

が、それとは別の【見稽古】の使い方をする者がいた。

この呪文は本来の俺の意図としては、武器を使った戦闘訓練で活用するための魔法だ。

そのため、俺の中では訓練以外では【見稽古】を使うことはないだろうと思っていた。

しかし、その考えは間違っていたようだ。

ハンナやミーティアは訓練以外で【見稽古】を活用している。

「それ……、なにしてんの?」

「アルフォンス様、見てください。ミーがごはんを作っているんです」

「うん。それは見たらわかるんだけどさ。なんでその食事作りで【見稽古】を使ってるのかって聞いてるんだけど」

「えっと、今までミーは料理ができなかったんです。でも、この【見稽古】を使ってアイ先生から教えてもらったら、料理できるようになったんですよ」

見ててください、とハンナが言う横でミーティアが包丁を手に取って食材を切る。

本当だった。

これまでたまに見たことがある料理風景で、ミーティアが厨房に立っているときは、よく失敗をしていた。

食材を切るという工程だけでも、全部同じくらいの大きさで切るというのがなかなか難しい。

それが、今はトントントンと包丁を動かしてきれいに切っている。

戦闘訓練で使うために作った魔法を、まさか料理で使われるとは思いもしなかった。

というか、そんな発想自体俺にはなかった。

ただ、考えてみれば料理も技術だ。

アイの料理の腕はそれなりにいい。

アルス兄さんの住むバルカ城や、カイル兄さんの住むシャーロット城でアイは働いている。

そこでは厨房の仕事もあるらしい。

といっても、アイは味を感じることはできない。

なので向こうでは下ごしらえや盛り付けの作業をやったりしているみたいだ。

が、それでも、そこでいろんな食材を扱っているので、普通のここらの人よりははるかに料理が上手だ。

そのアイの料理の腕をハンナとミーティアは【見稽古】で吸収しているらしい。

もしかしたら、そのうちアイを超える料理人になれるかもしれないな。

「いやー、けどそうか。頭が柔軟だな。料理もその呪文を使えば上達速度が速めれられるものだったんだな。自分で魔法を作っているときにはそんなこと考えもしなかったよ」

「えへへ。どうですか、アル様。これ、ミーが作ったの。ちょっと食べてみてください」

「へー、どれどれ。……うん、おいしいよ」

「やった。じゃあ、こっちも食べてください」

どうやら、ミーティアは料理がうまくなったのがうれしいらしい。

作りたての料理を味見しろと次々と差し出してくる。

それらを一口ずつ味わう。

うん、悪くないな。

「【見稽古】って本当に便利な魔法ですね、アルフォンス様。料理以外にも使えるんですよ」

「そうなのか? 俺はキクと一緒に訓練していたから知らないけど、ハンナは料理以外にも【見稽古】を使っていたのか?」

「はい。というよりも、とりあえずアイ先生の動きを全部学ぼうと手あたり次第に【見稽古】を使っているんです」

「ふーん、例えば?」

「えっとですね。例えば、さっきまでは裁縫もやっていたんですよ。【洗浄】があるんで服はいつでもすぐにきれいになりますけど、破れたりしたのは自分で繕うじゃないですか。そのやり方も教えてもらって【見稽古】で覚えたんです」

「裁縫もか。俺にはない発想だったな」

「やってみたら、剣術を覚えるよりも簡単でした。剣術は実際に戦うなら相手がどう動くかも考えて自分が動かないといけないじゃないですか。糸で縫うくらいなら、そこまで難しくもないですし」

なるほど。

相手がいないと成立しない技術よりは、一人でもできることのほうが覚えやすいのか。

考えてみれば当然だな。

いくら剣の型を完璧にできるようになったところで、それが実戦でうまく使えるかは話は別だからだ。

まあ、裁縫も極めようと思えばそれはそれで難しいとは思うけど、とりあえずできるという程度の技術なら一人で完結する分、覚えは早く済む、と。

「それ、使えるな」

「え、なにがですか、アルフォンス様?」

「いや、二人にはいいことを聞いた。ありがとう。これなら、このバルカ村をもっと発展させられるかもしれない」

本来の俺の考えていた使い方とは少し違う【見稽古】の使い方。

それをハンナとミーティアが示してくれた。

というよりも、自分で魔法を作っておいて、この魔法の可能性を低く見すぎていたんじゃないかと思う。

俺は自分で思っている以上にいい魔法を作れたと、この時になって初めて気が付いたのだった。