軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔力の流れ

「えっと、でも質問したいことが……。貴族は魔法が使えて、それを配下に授けているんですよね? 騎士という立場にするために」

そうだ。

頭がテンパっていたが、すぐに復帰する。

俺も名付けを行っていたが、貴族だってしているはずだ。

魔法陣が使えるかどうかはともかくとして、名付けそのものは他の人もしていることになるはずだ。

貴族は独自の魔法が使える。

そして、戦で活躍した人などを騎士につく従士として取り立て、その後、その従士の行動を見て問題点がなく、功績があると認めれば騎士へと昇格させる仕組みがあるはずだ。

その際は、騎士として名付けを行い貴族が使える魔法を授けることになる。

ならば、俺の行動も多少は情状酌量の余地があるのではないだろうか。

「もちろん、貴族も名付けを行い、魔法を伝導することになります。が、それはあくまでも教会が仲立ちして行うものなのですよ」

「えーと、つまりパウロ神父のような教会関係者が儀式をして、名付けは貴族がするって感じになるんですか?」

「そうですね。そういうことになります」

「そうなると、さっき言っていた魔力的なパスっていうのはどうなるんですか? 名付けられた騎士の魔力は上位の親に送られるんですよね? 名付けた貴族側が取るのか、儀式を行う神父側が取るのかっていうのは……」

「そのことですか。儀式はあくまでも仲立ちに過ぎません。魔力の移動は名付けた親側、つまり貴族が貰い受けることになります」

なるほど。

つまり、貴族は騎士が増えると自分の魔力を増やすことができるということか。

基本的に戦場で活躍できる人というのは魔力が多く、バイト兄やバルガスのように呪文を使わない身体強化、つまり魔術を使っている人が多いはずだ。

そんな魔力が多い人を従士にして、魔法を悪用しないように教育してから騎士へと取り立てる。

貴族が自分の攻撃魔法を授けるのだ。

最低限の信頼がなければできないだろう。

だが、多少の危険があろうとも魔法を授けるメリットは大きい。

単純に自分たちの戦力増強にもなる上に、名付けをした貴族はその騎士から魔力供給を受けて、自分の魔力量を増やすことにつながるのだから。

「ん? それならどんどん魔法を授ければいいんじゃ……。魔力が増えれば貴族側も強くなるんだし」

「アルス、力というのは正しく使わなければ危険なのです。無秩序に増やしていっていいものではありません。教会がそれを防いでいます」

「防ぐ? 貴族が名付けをするのを止めてるってこと?」

「正確に言うと少し違いますね。教会は無秩序に、無制限に名付けを行わないようにしているということです」

「それってどういうこと? 名付けの儀式をするのに条件をつけているとかってことなのかな?」

「そうですね。儀式を行う際にはいくらかの喜捨をしていただいているということです」

「喜捨? ……って、お金取るってことか!」

「いいえ、神への感謝を込めていくらかの金銭を主に捧げる、というお気持ちを受け取っているだけですよ」

言い方の問題じゃねえか。

とはいえ、それもそうか。

教会しかできないことをするのにお金を取る、というのはそう間違ってはいないのだろう。

実際に効果があるわけだしな。

でも、そうか……。

俺は教会の秘法を勝手に使うどころか、営業妨害までしていたことになるのか。

これは本格的に弁明のしようがないのではないだろうか。

「ところで、もうひとつ聞きたいことがあるんですけど……」

「なんでしょうか」

「子から親に魔力が流れるって言ってたじゃないですか。でも、その親にもさらに親がいたらどうなるんですか?」

「自分の親にさらに親がいる。なるほど、それは当然いるでしょうね。その場合も同じです。子から親へと魔力が移動するのは変わりません。上位者へと流れていきます。もっとも、親の魔力の一部が、という形になりますが」

これはつまりどういうことだろうか。

子の魔力の一部、仮に1割の魔力が常に親へと流れているとする。

そして、その親もまた子であった場合、親の魔力の1割がさらに上の親へと流れることになるのだろうか。

この場合、真ん中の人は魔力があまり増えない可能性がある。

となると、どうするか。

俺なら自分の子の数を増やそうとするのではないだろうか。

これってようするにねずみ講なんじゃないだろうか。

あの、マルチ商法とか、ネットワークビジネスとかいう言い方をすることもある詐欺の手法だ。

自分の取り分を増やしたければ、子を増やし、さらにその子自身にも孫となる存在を増やすようにそそのかす。

だが、この方法には決定的な問題がある。

それは人の数が無限にいるわけではないということだ。

必ず子となる存在の数が頭打ちになってしまう。

つまりは、上位にいるものしかメリットを享受し得ないという点にある。

「……あれ? もしかして、俺の魔力ってパウロ神父に流れているんですか?」

そこまで話を聞いてようやく俺は理解した。

教会のやり方のうまさを。

子供が一定年齢に達したら、生活魔法を授けるとして名付けを行っているという意味に。

どうやら俺には両親以外にも親と呼べる存在がいるのだと、その時初めて気がついたのだった。