軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

孤児への名づけ

「いいか、お前ら。俺についてくる以上はビシビシ鍛えて役立ってもらうからな? 途中でやめるなんて言ったら許さないよ。それでもついてくる覚悟はあるか?」

アルフォンス様に仲間を紹介した後、最後の確認としてそう言われた。

傭兵団が孤児を集めて教育する。

なんで私たちみたいな孤児を集めるのかはよくわからないけど、教育している間はごはんも食べさせてもらえるみたいだ。

私たちの誰もがアルフォンス様の忠告を聞いてもついていくと言った。

だって、その前にもらったおにぎりがおいしかったからだ。

あんなものを食べられると聞いたら、この貧民街から出ていくことを嫌がる子なんて誰もいないに決まっている。

それに、仲間の男の子は傭兵団に入ることができると聞いて目をキラキラさせていた。

この貧民街では大人の男の人が兵士として戦場に行くことがある。

その場合、傷を負って帰ってきてその後の生活が大変になることも多いみたいな話を聞いたことがある。

けど、もしも戦場で活躍すればこの貧民街から抜け出せるきっかけにもなるから、みんな戦場へと行く。

壁の外じゃなくて中で生活できるかもしれないと考えたら、やってみるだけの価値があるからだ。

特に男の子たちはそんなことをずっと考えていて、私よりも戦いの話に詳しい。

どこでそんなの聞いてくるのかと思っていたけど、今回はそれが役に立った。

アルフォンス様のバルカ傭兵団のことを知っていたからだ。

バルカ傭兵団は前にあった戦いに出ていたみたいで、活躍したらしい。

それも大活躍だったみたい。

だから、男の子たちの中には傭兵になるのもいいかな、みたいな話も出ていたそうだ。

忠告の言葉なんて耳に入っていないかのように、一緒に行きたいと言っていた。

「よし、じゃお前たちをバルカ村に案内する。ついてきて」

全員がアルフォンス様についていく。

そう決まったら、すぐにこの貧民街を出ていくことになった。

持っていく荷物なんかは特にない。

私たちはほとんど手ぶらで、アルフォンス様の後をついていく。

こうして、今まで暮らしていたこの場所を離れて、新しい土地に向かうことになったのだった。

※ ※ ※

「おねえちゃん、おっきなかべが見えてきたよ」

「あ、ほんとだ。もしかしてあそこかな?」

オリエント国の貧民街を出た私たちは、そこで待っていた荷車に乗せられて移動していた。

バルカ傭兵団というのはバルカ村というのを持っているらしい。

そんな村があるんだと驚いたけど、戦いで活躍した報酬に村をもらったそうだ。

そのバルカ村に向かって荷車に乗っているだけでついてしまった。

大きな壁が見える。

オリエント国でも見たことがある壁だ。

普通の村もこんなふうに壁で囲われているのかな?

私は貧民街しか知らないから村も国も同じようにしか見えなかったけど、住んでいる人の数は違うみたいだ。

バルカ村は傭兵団の人だけしかいないから百人くらいしかいないみたい。

確かに村というだけあって、壁を越えた先ものどかな場所っていう感じだった。

そんなバルカ村の真ん中にある建物につく。

ここがアルフォンス様のおうちだそうだ。

そして、私たちもここに住むことになるらしい。

「一緒に住むんですか?」

「そうだよ。孤児の数が少ないし、教育係はアイだからね。アイは他にもやってもらう仕事があるから、同じところにいたほうが効率がいい」

「あの……、アイさんって何人姉妹なんですか? その、アイさんそっくりな女の人がほかにもいるんですけど」

「ん? アイはアイだよ。姉妹じゃない。ここにいるのは全員アイだよ」

???

アルフォンス様が何を言っているのかよくわからなかった。

バルカ村についてお屋敷に案内された先には、私たちと一緒にいたアイさんとはべつのアイさんがいた。

着ている服が違うだけで、見た目がまったく一緒だった。

てっきり姉妹なのかと思ったけれど、そうじゃないみたいだ。

よくわからないけれど、全員アイさんなのだという。

意味がよく分からない。

「それよりも、お前たちには名付けをしておこうか」

「え? 名前ですか? あの、私たち一応名前はありますよ?」

「それは親がつけた名前でしょ? そうじゃなくて、魔法が使えるようにするために名付けをするんだよ。まあ、やってみたほうがはやいかな。命名、ハンナ。これから、君の名前はハンナだ」

ハンナ。

私が死んだ両親からもらった名前をもう一度アルフォンス様につけられた。

その瞬間、驚いた。

頭の中が変な感じがする。

そして、魔法が使えるようになるという意味が分かった。

自分が魔法を使えるようになっているということが突然理解できた。

「な、なにこれ? 魔法が使える、の?」

「そうだよ。なにか使ってみるか、ハンナ?」

「えっと、それじゃあ、照明」

「わあっ、すごいよ、おねえちゃん。あかるいねー」

魔法が使えた。

頭の中に浮かんだ【照明】という呪文を唱えたら、手のひらから明るい光が飛び出した。

すごい。

こんなことができるようになるなんて思いもしなかった。

私以外にもアルフォンス様は名前を付けていく。

そして、それが終わったらみんな魔法が使えるようになっていた。

すごい。

楽しい。

魔法を使えるようになった私たちは、しばらくの間、いろんな魔法を試して、そして、魔法の使い過ぎで全員倒れてしまったのだった。