軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

廃村

「……村?」

「そうでござる。アルフォンス殿に報酬として渡す土地でござるが、議会でも少々もめたのでござるよ。だが、拙者もアルフォンス殿と約束したでござるからな。その約束を守るために必死に食い下がって引き出した条件が、住民のいない廃村を譲ろうというわけでござる」

バナージと報酬の話をして数日が経過した。

土地をくれ、という俺の要求をバナージは飲んでくれた。

そのはずだった。

だけど、そこにケチが付いたようだ。

グルーガリア国との戦いでの報酬をバナージの一存で決めることはできなかったのかもしれない。

そこで、バナージは戦の報酬として俺が土地を求めていることを議会へと報告した。

そして、その議会で話し合われた結果、その話は却下されてしまったみたいなのだ。

オリエント国というこの都市国家は壁の中に数万から十数万人がひしめき合って生活している。

外壁があり、その外壁の内側にも内壁というのがあって、裕福な人ほど中の方で生活していた。

なので、外に行くほど土地の金額というのは安くなる。

外壁の外ならば貧民が住み着くような場所なので、簡単に土地の所有を認められるかとも思ったのだが違ったみたいだ。

まあ、そりゃそうかと思わなくもない。

都市国家の壁の外によその国の出身者が土地を所有して陣取っている、というのはなかなか危険なことだろう。

もしそいつらが外壁を壊して内部に侵入してきたらどうだろう。

危険極まりない話だ。

さらに、それが外部勢力とつながっていたら、オリエント国はあっという間になくなってしまうかもしれない。

国の防衛上の理由から、壁の外にアトモスの戦士を含めた傭兵たちを野放しにしておくわけにはいかない。

そう言われてしまったら、それ以上何も言えないだろう。

だが、それでもバナージは粘ってくれたみたいだ。

それならば、外壁の中の土地が安いところでもいいからバルカ傭兵団のための土地を用意してはどうか、と主張してくれた。

が、それも叶わなかった。

どうもこの辺の話はバナージと議会の駆け引きが深く関係しているらしい。

柔魔木の確保という作戦を立て、その柔魔木から魔弓オリエントという遠距離攻撃可能な武器を作って国を守る。

それを考えて実行したのがバナージだ。

そして、それは現在のところうまくいっている。

そうすると、議会内でのバナージの発言力が大きくなる可能性があったらしい。

が、議会内にはそれを面白く思わない人もいるみたいだ。

スーラやクリスティナが教えてくれたが、これほど国が疲弊するような状態にありながらも、中枢では権力闘争が起きているらしい。

それまでいた有力な議員やその関係者の勢いが落ち、それまで目立たなかった人材が頭角を現してくる。

が、それが気にくわずに足を引っ張ろうと、あれこれあるらしい。

バナージもまだ若い議員であり、しかし、最近勢いに乗っている者でもある。

それが気にくわないとして、バナージの行動を邪魔する者がいたようだ。

「でも、廃村ってどういうことですか? 村があったけど放棄された場所ってこと?」

「そうでござるよ。もともと小さな村でたいしたものが取れる場所でもなかったのでござるが、今は廃村になっている場所があるのでござる。この都市の外でならバルカ傭兵団に土地を与えることができると言われたのでござるが、その時指定されたのがその廃村なのでござるよ」

「うーん、まあ、別に都市の中にこだわるわけでもないんでいいと言えばいいんですけど……。なんでその村ってなくなったんですか? 人が住める土地があるなら、再建してもう一度住もうって人もいるんじゃないかと思うんですけど」

「それがそうもいかないのでござるよ。なにせ、その廃村の土地では作物が育たないのでござる」

「はあ? 土地が死んでいるってことですか?」

「そのとおりでござるよ。もう何年も前になるのでござる。よそからオリエントが攻められたのでござる。その時に、その村が相手に占領されてオリエント国を攻撃するための仮の拠点となったのでござるよ」

「へー、そんなこともあったんですね」

「あったのでござる。で、激闘の末、なんとかそいつらを追い返すことには成功したのでござる。が、奴ら、やってはいけないことをそこでしていったのでござるよ」

「やってはいけないこと?」

「然り。農地に塩を撒いて逃げていったのでござる。嫌がらせでござろうな。知っていると思うのでござるが、農地に塩を撒かれてしまうと土地が死んでしまうのでござるよ。その時の影響で、今もそこでは作物が育てられない状態で、廃村となってしまったのでござるよ」

なるほど。

ひどいことをする奴らもいたものだ。

だけど、今回、オリエント国にとってその廃村が都合がよかったんだろう。

戦力になる傭兵団に土地を与えてこの国に居続けてもらう。

けれど、壁の外で生活はさせない。

そこで、自給自足できない農地が死んだ廃村を与えることで、食べ物などを通して傭兵団に干渉できる。

いろんな計算が働いた結果、俺たちが手に入れられる土地はそんな廃村になったみたいだ。

……まあ、問題ないよな?

いや、むしろ外壁ではない場所に土地をもらえたほうが好きに行動できるかもしれない。

堅っ苦しいことをしなくてもよさそうだ。

それにものづくりをするのであれば、農地はあまり関係もないしね。

こうして、俺たちバルカ傭兵団はオリエントという都市から距離の離れた廃村の土地に住むことになったのだった。