軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

変わりゆく戦場

「いよいよか。……で、オリバもこっちについてくるってことで合ってるの?」

「はい。私は今回の作戦に当たってバルカ傭兵団に帯同するようにと命じられています。土地勘などないバルカ傭兵団を補助するようにとのことです」

「そっか。じゃあ、よろしく頼むよ、オリバ」

バナージと会ってから数日が経過した。

その間にバルカ傭兵団はずっと待機していたのだが、なんだかんだで結構忙しかったりもした。

到着してすぐは疲れをとるように休息日も用意したけれど、基本的にはそれは必要なかったりもする。

傭兵団の面々は【瞑想】という魔法を使えるからだ。

【瞑想】を使ってから一晩ぐっすりと休めば、たいていの疲れは完全に消え去っている。

そうして、長旅の疲れはあっという間にとれたものの、その後にいろいろとすることがあった。

宿泊地としての屋敷はあったが、泊まる場所だけがあればそれでいいというわけでもない。

特に重要なのが、食料だ。

百人の大所帯が食べていけるだけの量を用意する必要がある。

それに、武器の手入れも必要だった。

ここに来るまでに、俺は傭兵たちに武器を渡していた。

ブリリア魔導国の魔導迷宮で手に入れた、魔装兵の使っていた鉄の武器だ。

剣や槍、弓や斧といった様々な武器は、しかし、硬牙剣ほど頑丈ではない。

使えば当然傷むし、手入れを怠れば使い物にならなくもなる。

そんな武器の手入れを自分たちでもやっていたのだが、結局は素人だ。

ここにいるのは全員霊峰の下で生きてきたやつばかりで、まともな知識も技術もない。

だが、この場所にはそんな仕事を専門的に扱っている奴らが大勢いた。

なにせ、ここはあのグランが生まれた土地なのだから、職人だけはたくさんいる。

バナージに言わせれば優秀な職人が多く失われたみたいだけれど、それでも傭兵団内で武器の手入れをするだけよりははるかにいいだろう。

というわけで、バナージにその手入れをお願いしようとしたところ、あっさりと断られてしまった。

さすがに忙しかったみたいだ。

だが、完全に放置されたわけでもなかった。

オリバを派遣してくれたのだ。

この地に来た時に、バナージのもとへと案内してくれた男。

そのオリバに優秀な職人の情報を聞いてくれと言われ、教えてもらった。

その後もなんやかんやでオリバにはこの国のことを聞きながら、数日後に迫った戦いのための準備を進めていたのだ。

そうして、当日になったときには当たり前のようにオリバは俺たちバルカ傭兵団と一緒に行動を共にしようとしていた。

どうやら、上からの命令でバルカ傭兵団と一緒に動くように言われているらしい。

これは素直に助かる。

船で下って材木所を襲撃する作戦だが、もちろん俺たちは行ったことがない。

このあたりの土地を知っているオリバのような人間がいないと困るかもしれないからだ。

「そういえば、材木所に行く人数って結局どのくらいになったんだろ?」

「2000ほどになると聞いています」

「2000か。その数で足りる作戦なのかな?」

「……イアン殿の活躍次第ではないかと思います。個人的な意見ですが」

「確かにアトモスの戦士であるイアンは強いけどさ。なんか歯切れが悪いね?」

「正直なところ、この小国家群は以前までの状況と違いすぎるのです。誰もが正確な予想を立てられない。それ故に戦乱が起きているとも言えますし、オリエント国がなんとか保っているという面もあります」

「んん? どういうこと、オリバ? 言っていることがよくわかんないんだけど」

というか、もしかして勝てる見込みが立っていない状態で戦いにでもいくつもりなんだろうか?

本当に大丈夫か、オリエント国は。

オリバの話を聞いて俺はそう思ってしまうが、どうやらこの国の連中にも言い分はあるらしい。

「魔法の存在が大きいのですよ、アルフォンス殿。オリエント国では一部の方々が魔法を使えるようになりました。どれもが非常に便利なものだと聞いています。ですが、その魔法がほかの国にも広がってしまっているのです」

「ああ、その話か。そっか、今までに魔法がないところに、魔法という便利なものが登場した。それが戦局に大きな影響を与えているってことかな?」

「そのとおりです。【身体強化】などの戦いに役立つ魔法もあるようですが、特に大きな影響を与えているのが【壁建築】、あるいは【アトモスの壁】です。呪文を一言唱えるだけで、瞬く間に壁ができてしまう。それも、アトモスの戦士すら乗り越えられないような巨大な壁が一瞬でできるのです。その影響は計り知れません」

やっぱり、魔法の影響って大きいよね。

特に短期間で守りを固めることができる壁を作る魔法はかなりの存在感を発揮しているらしい。

まあ、この手の魔法はアルス兄さん率いるバルカ家が躍進した理由の一つでもある超絶万能魔法だからな。

しょうがないとはいえ、ここでもアルス兄さんのやったことの影響がもろに出ているらしい。

そうか。

そして、それは今回の作戦の材木所でもいえることなんだろう。

それまでの材木所とは違い、壁でかつてよりも守りを固められているのかもしれない。

あるいは、戦っている最中に壁が出来上がるかもしれないんだ。

今までこの地で戦ってきた人ほど、そんな激変した戦場の環境に思考が追い付いていないのかもしれない。

魔法を使った戦場。

今までの常識を打ち破って、新たな戦い方が広まりつつあるこの小国家群では、それまで優秀な戦術家と言われていた人が負けたりもしているという。

だからこそ、どうなるかは最終的にふたを開けてみないとわからないとオリバは言う。

「どう思う、エルビス? お前はアルス兄さんと一緒にバルカの魔法を使って戦ってきたんだろ?」

「そうですね。まあ、戦闘中は特に問題はないかと。【アトモスの壁】は【整地】や【土壌改良】よりもはるかに魔力を使う魔法ですし、魔力量が少ない者には使えなかったり、使える回数が少ないですから。事前に作られた防衛用の壁の位置さえしっかりと把握しておいて、壁で分断されることだけに気を付けていればさほど問題にはならないと思いますよ」

「そうなのか?」

「ええ。もともとあった遠距離攻撃できる【散弾】や【氷槍】なんかは、ここらの連中には使えませんしね。壁を作って守りを固めるだけであれば、戦い方はいくらでもあるかと思います。ただ、攻城戦は基本的に攻め手が大変というのは間違いないでしょうけれど」

そうか。

そういえば、なぜかこの東方ではアルス兄さんの使える魔法が制限された状態で広まっているんだったな。

【散弾】とかのほかにも、【塩田作成】とかは使えなかったはずだ。

そもそも、遠距離攻撃できる魔法があるんだったら、バナージたちも魔弓を作るために柔魔木なんて求めなかっただろうし。

そんなことをオリバやエルビスと話し合いながら、船に乗る。

川を下るための小さな船に傭兵たちやそのほかのオリエント兵を詰め込んで、出発する。

この川を無事に下りきっていけば、川の中に材木所がある。

そこへ向けて、俺たちは水の流れに身を任せて移動を始めたのだった。