軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

服と建物

「アルフォンス・バルカ殿。どこです? 返事をしてください」

「ん? ここだけど?」

「あ、ああ、これは失礼しました。話に聞いていましたが、本当に子どもが傭兵団の団長をされておられるのですね。バナージ議員がお呼びです。ついてきてください」

「全員、都市の中に入っていってもいいのかな?」

「はい。かまいません。ですが、バナージ議員に会うのは少数でお願いいたします。こちらへどうぞ」

オリエント国という都市の中からやってきた男。

どうやら、こいつは連絡係のようだ。

こちらを探し出し、そして、バナージのもとへと案内すると言ってくる。

この使いの男が来る前に一応着替えておいた。

ここに来るまでは旅の装いで、鬼鎧の上から外套を羽織っていた。

それは毎日【洗浄】できれいにしていたので、それほど汚れているわけではない。

けれど、見た目は重要だ。

相手に与える最初の印象でこちらへの態度が変わるかもしれない。

そう思って、上等な服に着替えておいた。

今着ているのはブリリア魔導国の貴族院でも着ていた格式ある服だ。

これをみて、さすがに自由市民以下の扱いをしてくることはないだろう。

もしそうなら、無礼討ちしても文句は言わせない。

そう思っていたのだけれど、相手もこちらの格好を見てそれ相応の対応をしてくれるようだ。

ただ、気になるのはオリエント国の連中の着る服がブリリア魔導国のものともだいぶ違っているということだった。

そういえば、グランも変わった服を着ていたような気がする。

着流しとか言ったんだったっけ?

布をそのまま羽織って、腰のところでくくるようなそんな恰好をしている。

防御力とかなさそうだけど、大丈夫なんだろうか?

それに、ちょっと足のところがひらひらしていて走りにくそうにも見える。

そんな装備で大丈夫かと尋ねたい。

「あの、なにか?」

「いや、この辺の人はみんなそんな恰好なのかなと思って。小国家群に来るまでは、そんなひらひらした服はあまり見なかったから」

「ああ、そのことですか。ここらは川が多く、これからの時期は湿度が上がるのです。あまりぴったりした服よりも、こちらのほうが幾分涼しいのですよ」

「へー。そんなもんなのか。その布は木綿でできているのかな?」

「そのとおりです。このあたりの肥沃な土地で作られる木綿は名産品でもあるのです。とくに、それぞれの川の水によって生地を染めた時の色合いが変わるので、あちこちで独自の染織物が作られていますよ」

「ほうほう。ってことは、庶民が着る衣服はそこまで高価じゃないって感じなのか」

「よくお分かりで」

「ここまで商人と一緒に行動してきたからね。どこで何が取れるかは気になったりするんだよ」

都市に入る間も使いの男と話しながら進んでいく。

こいつはオリバという名前らしい。

真面目そうで、こっちが話を振ればそれにすべて的確に返事を返してくれる。

ほかにも、あれこれと聞きたいことを聞いていく。

どうやら、オリエント国はすでに今年になって一度どこかの国から攻め込まれたらしい。

それをなんとかはねのけることには成功している。

が、やはり被害というのはそれなりに出ているようだ。

戦える者は歓迎しているそうだ。

けれど、だれでもいいというわけにもいかないのが難しいところだろう。

なにせ、適当な人を戦えそうだというだけで引き入れてしまったら、どんな目に合うかわからない。

味方だと思う相手に後ろから攻撃されることほど危ないことはないからだ。

そういったことがあり、思うように戦力が集められず反攻できるだけの武力が揃えられない状況が長らく続いていたらしい。

攻められても必死に防衛を続けてきたものの、それも年々大変になってきているのだそうだ。

「アルフォンス殿はブリリア魔導国の貴族院に通っておられたのですよね?」

「そうだね。よく知っているね、オリバ」

「バナージ議員から聞いておりましたので。しかし、よくそんなところからこの危険な戦場となっているオリエント国まで来られましたね。こういってはなんですが、危ないですよ?」

「だからだよ」

「え?」

「ここには戦いに来たんだ。それも、なるべく強いやつとね」

「そ、そうですか。まあ、それなら心配ありません。いくらでも強いやつらが襲ってきますからね、ここは」

「そっか。楽しみだね」

「あ、そろそろ目的地へとつきます。傭兵の方々は向こうの建物で長旅の疲れをとってください。アルフォンス殿とそのおつきの方はこちらへどうぞ」

「わかった。スーラ、傭兵たちを頼む。エルビスとイアン、アイはついてきて」

この都市は結構な大きさがあるようだった。

入ってしばらくは土でできた家が多かった。

けれど、都市の中にも内壁があり、そこを超えると建物の雰囲気が変わった。

木をふんだんに使った建物が多くなっているのだ。

もしかしたら、ここから先は一級市民だけが住んでいるのかもしれない。

そんなことを思いながら、さらに先へと進んでいく。

すると、広い庭の中に平屋の面積の広い家があった。

どうやらそこにバナージがいるようだ。

大きな、お屋敷と呼ばれるらしいその建物に入り、ようやくバナージに出会うことができたのだった。