軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盗賊の拠点

追尾鳥を追いかける。

どうやら、この森の中に盗賊たちはいないようだ。

一度、来た道を引き返して森から出る。

そして、町へと向かう方向とは少し進路がずれた場所へと向かって飛んでいった。

それをひたすら追いかけ続ける。

追尾鳥は本当ならばもっと速く飛ぶことができるが、今は少し速度を抑えてくれていた。

本来ならば、ヴァルキリーに騎乗した騎兵団を先導できるくらいの飛行速度があるのだが、その速さで飛んでしまうと傭兵たちがついてこられない。

傭兵団の中でヴァルキリーに騎乗しているのは限られていて、あとは全員歩兵ということになるからだ。

だけど、こういう時に使役獣というのは役に立つ。

傭兵たちの速さにあわせて先導するように飛んでくれと声をかけておくだけで、向こうが速度を調整してくれるからだ。

速足くらいの速度で飛ぶ追尾鳥を傭兵全員が追いかけ続けて、しばらくしたころ、それが見えた。

地面が大きく盛り上がり、その一面が小さな崖のようになっている場所があった。

そこの一部に穴が開いている。

おそらく奥に続くような洞窟でもあるのだろう。

そんな盗賊の拠点と思しき場所を発見したのだ。

「こんなところにいたのね。あんな洞窟があるとは知らなかったわ。この辺りは普段から人があまり近づかない場所なの。けど、確かによく見ればこの辺の地面は人や荷車が通った跡が残っているわね」

俺たちと一緒についてきているクリスティナがそう言いながら地面を指さす。

たしかに、地面には最近になってからできたであろう形跡が残っている。

わだちが洞窟の入り口のほうにまで続いていた。

「洞窟、か。体が大きくなるアトモスの戦士はああいう場所では戦いにくそうだね」

「そうだな。だが、巨大化しなくても俺は強いぞ、アルフォンス」

「たしかに。というか、ほかの傭兵たちのほうが心配か。実戦経験を積みたいとは言ったものの、被害が出ても面白くないかな。ちょっと作戦を考えようか」

洞窟の入り口を遠くから見ながらイアンと言葉を交わす。

盗賊の拠点と思われる場所を見つけたのまではいい。

だが、ここからどうするかが問題だ。

洞窟内部に入るのももちろんありだ。

けれど、中の状況が一切わからない。

どのくらいの大きさの洞窟なんだろうか。

あるいは、ほかにも出入り口となりえる場所があるのだろうか。

内部に突入するとして、そこで戦えるのかどうか。

そんな情報が全くないのだ。

魔導迷宮でのことを思い出す。

あの時も、行き止まりに追い込まれるような状況に一度だけなって焦ったことがあった。

いざというときの逃げ場がないというのは、それだけで嫌な気分になってしまう。

もしかしたら、冷静に戦えないかもしれない。

となると、突入するのは危険が大きいかもと思った。

別に全員無事で勝利を収めなければならないというわけでもないけれど、オリエント国に向かう途中でいきなり数を減らす必要もないだろう。

だから、ある程度確実に勝ちをとれる状況を作りたい。

「追尾鳥、盗賊の臭いをもう一度たどって、ほかに出入り口になる場所がないかを探してくれ。もしあるのなら教えてくれ」

とりあえず、わかることだけでも調べておこう。

ほかに出入り口になる場所があるのかどうかだけを追尾鳥に命じて探させる。

もしも、普段からほかのところを出入り口として使っているのであれば、臭いをたどりさえすれば見つけられるだろう。

「エルビス。傭兵たちに命じて燃えるものを集めさせて。なんでもいいから数を多くな」

「わかりました。それと、洞窟の外にほかにも盗賊がいないかを警戒しておいたほうがいいかもしれません。そちらにも人を回しましょうか?」

「うん、そっちも頼む。追尾鳥がほかの出入り口を見つけたら、そっちにも傭兵を使いたいから多少残しておいてくれ」

「了解です」

エルビスへと命じて、傭兵団を動かす。

盗賊の拠点攻略へと向けて、その下準備を進めていったのだった。

※ ※ ※

「準備はいいな?」

「はい。言われたとおり、すべての準備を終えています。いつでもかまいません」

「よし、それじゃ、火をつけろ」

発見した盗賊の拠点を攻略する。

そのために、俺たちはその拠点に火を放つことにした。

といっても、洞窟全体を燃やすことなんてできっこない。

だから、目的は火そのものではなく、木などを燃やした時に出る煙にあった。

洞窟入り口のところでで集めさせた木の枝に【着火】で火をつける。

乾燥している木の枝もあれば、そうでないものもあるが、結構な煙の量になっている。

そして、その煙がどんどんと洞窟内部に入っていった。

今回の作戦は単純なものだ。

盗賊たちが洞窟の中にいる。

それは追尾鳥の調べで確実だ。

だが、内部に突入して戦うと何があるかわからない。

だから、中から出てきてもらおうということにしたわけだ。

洞窟はほかにも出入り口があるのを確認している。

そして、いくつか見つけたその別の穴はすでに塞いでいた。

洞窟をふさぐこと自体は簡単だった。

【壁建築】を使えば、一瞬で穴の外に大きく分厚い壁を作ることができるからだ。

バリアントに住んでいた傭兵の中にもこの魔法を使える者がいたので、何人かを別の出入り口に送り込んですでにそれは完了していた。

そして、ほかの出口を塞いでおいてから、最初に見つけた穴の前で木を燃やして煙を送り込んでいるというわけだ。

別にこれはただの煙で毒なんかが含まれているわけではない。

が、もしも自分たちの寝床として使っている洞窟内で煙の臭いが充満してきたらどうするだろうか。

普通は火事を疑い、そして、逃げるはずだ。

洞窟内を逃げ、どこの出口から出ようとするかはわからない。

が、ほかの出口はすでにつぶしている。

ということは、最終的に内部にいる全員がこの穴から出てくるだろう。

それを待ち構えてやろう、というのが今回の作戦だ。

傭兵たちが何人かで苦労しながら、煙を洞窟内に送り込み続けていた。

その間、そばで感覚を強化して洞窟内部の様子を確認し続ける。

「来た。中から人の気配がする。こっちに近づいてくるぞ」

そうして、ようやく盗賊たちのお出ましだ。

中から何人もの人間がばたばたとした足音をたてながら、俺たちの待つ洞窟の穴までやってきたのだった。