軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めてのおつかい

「あなたが傭兵団の頭目なのですか?」

「そうですけど、なにか?」

「い、いえ。少々驚いただけです。まさか、あなたのような幼子が傭兵の頭を務めているとは思いもしておらず……。失礼しました」

「いいですよ。それよりも、スーラとは知り合いなんですよね?」

「はい。そのとおりです。スーラ殿とは以前より錦芋虫からとれる生地などの取引を通じてやり取りがあります。バイデンと申します。以後、お見知りおきを」

「アルフォンス・バルカです。よろしく」

バリアントから八日ほどかけて南へと移動した。

そこにある町へとたどり着き、そこで町を治めているバイデンという男性と面会する。

白いひげを蓄えた老人だ。

そのバイデンが俺の顔を見て困惑している。

まあ、それはそうか。

6歳になったばかりの子どもが傭兵団をまとめて行動していると聞いても、普通なら信じられないかもしれない。

もしかしたら、スーラの紹介がなければもっと扱いがぞんざいになっていた可能性もある。

やはり、スーラがついてきてくれたのは正解だったかと思った。

一応、舐められないようにだけ気を付けて話をする。

【威圧】を要所要所で飛ばして相手に圧力をかけながら、交渉なんかをしていく。

今日泊まる場所の提供や、食事の用意、そして情報を聞き出す。

オリエント国まで最短経路を通っていければそれでいいが、途中でなにか問題が発生しているようであればそれを迂回する必要もあるからだ。

そんな情報収集をしていると、面白そうな話題があった。

「盗賊がでる?」

「ええ。実はそうなのです。この町はスーラ殿らのような霊峰の麓に住む者たちから取引で得た品々をさらに大きな街に届けて商売をしたりもしています。ですが、近年その道中に盗賊が現れるようになりましてな。つい最近もその被害があって、困っておるのですよ」

「えっと、さっき言っていた錦芋虫とかの糸や生地を仕入れているって話だったっけ? それらが盗賊に奪われたんですか?」

「ええ。それに革製品もです。霊峰に住む動物の皮から作った革は人気があるために、この町にとってもいい稼ぎになるのですよ」

「なるほど。で、それを横取りするようなやつがいるってことか」

「そのとおりです。ですので、お願いがあるのです。もし、道中でそのような盗賊がいた場合、退治してもらうわけにはいかないでしょうか?」

……盗賊、か。

どんなもんだろうか。

バイデンの話だけを聞くと、いまひとつ規模などが分からない。

結構前から活動しているという話だし、その盗賊組織は小さくはないのではないだろうか。

だけど、盗賊がどこにいるのか、あるいはどのくらい強いやつがいるのかがわからなかった。

情報が足りない。

「いくら出せますか?」

「え?」

「だから、盗賊を退治したらいくら出すのかと聞いているんですよ。商売の邪魔になるくらいだから、その盗賊を退治したら当然その分の報酬は出るんでしょう?」

「え、ええ。もちろん、盗賊たちを退治していただけるのであればその分の報酬は約束いたします。そうですな。被害規模から考えて、その盗賊の討伐が確認できればこれくらいはお出しできると思います」

「……スーラ、どう思う?」

「そうですな。この金額は妥当でしょう。いや、バイデン殿にしてはなかなか出すほうではないでしょうかな。こやつはこう見えて意外と出し渋りますからな。アルフォンス殿の気迫に当てられておるのでしょう」

「いやはや、参りましたな。そのようなことを言わずともいいでしょう、スーラ殿。ですが、これは本当に最大限出せるだけの金額でもあります。これ以上となると厳しいのですが……」

「わかりました。それじゃ、その盗賊退治を引き受けましょう。つい最近も被害にあったって言ってましたよね? その時の被害者に会いたいんですけど、できるかな?」

「ええ。ありがとうございます。すぐにお呼びいたしましょう」

情報が圧倒的に不足している。

が、それでも俺はここで盗賊を退治してみることにした。

理由はいくつかある。

まず、最初はお金稼ぎだ。

盗賊を退治してその報酬を得る。

それと同時に盗賊がため込んだ財貨があれば、それをもらってやろうという魂胆だ。

どのくらい持っているだろうか。

意外とため込んでいるかもしれないし、まったくないかもしれない。

が、それ以上に大きな目的は、戦う、ということにある。

盗賊相手にバルカ傭兵団が戦いを挑む。

これは実戦経験を積むためだ。

この傭兵団の中でまともな実戦経験があるのはエルビスとイアンくらいだろう。

ほかはまともに戦ったことがないはずだ。

いかにエルビスが訓練をしていたとはいえ、一切の実戦経験もなしにオリエント国にいくのはどうだろうと思っていた。

あそこは周囲から攻勢にさらされて大変な状況になっていると聞いている。

そんなところに、戦った経験のない新人傭兵を連れていってまともに戦えるのかという心配があった。

だからこそ、ここで経験を積んでおく。

もちろんそれは、俺自身も含めてだ。

魔導迷宮で魔装兵相手と戦ったことがあるが、人相手に実戦で戦ったことがない。

ここらで、初めてを経験しておいてもいいかもしれないと思ったのだ。

こうして、バルカ傭兵団最初の仕事はオリエント国ではなく、小さな町の長であるバイデンからの依頼を受けての盗賊退治となったのだった。