軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生まれ変わり

「全員、整列! いいか、貴様ら。このお方はわれらの神にも等しいアルス・バルカ様の生き写しにして生まれ変わりでもあるアルフォンス・バルカ様だ。これより、貴様らの所属するバルカ傭兵団をまとめてオリエント国へと向かうことになる。アルフォンス様からのお言葉を心して聞くように!!」

「はっ!!」

空に浮かんだバリアント城から地上へと降り立った。

そして、その地上にあるバリアントの街の中にある広場へといく。

その広場は中央に神殿のようなものがあるようだ。

その前に100人ほどの人が集まって、きれいに並んで立っていた。

その前に進み出る僕とエルビス。

イアンは僕たちの少し後ろで腕を組んで見ている。

ここにいる100人がエルビスの言っていた傭兵団に所属予定の者たちなのだろう。

そんなふうに考えていると、エルビスがいきなり大きな声で話し始めた。

アルス兄さんが神?

僕がアルス兄さんの生まれ変わり?

いったい何の話だと思わなくもない。

というか、アルス兄さんは死んでないし。

が、それは別に僕がアルス兄さんと血が一緒だ、という話とは全く関係なく、このバリアントで広まっている認識だった。

ここバリアントはもともと街などない小さな集落だったそうだ。

こちらでは霊峰と呼ぶ、大雪山の麓に住んでいた人たち。

ただでさえ厳しい自然環境の中で大変な生活を送っていた。

が、さらに大昔の先祖にさかのぼったとき、このあたりに住む者は全員が咎人として東方の諸国から追放されてこの地に流れてきた子孫たちだった。

ほかの国では受け入れられない者として扱われる地域に生まれ、極貧生活を送りながらなんとか生きてきた人たち。

それが、霊峰の麓の社会だった。

そこに、突如現れて今までの常識を撃ち砕き、生活面を大きく改善したのがアルス兄さんだった。

アルス兄さんはこの地に住む人たちに魔法を授けた。

それは、生活魔法のほかにも【土壌改良】や【整地】などの収穫量を大きく変える効果のある魔法もあった。

さらには、いくつもの集落に吸氷石の像を建てて、その周囲から寒さを吸い取り、凍死する者の数まで減らしてしまった。

だからだろうか。

このバリアント地方ではアルス兄さんは神のように扱われていた。

バリアントの街ではアルス兄さんの姿をかたどった吸氷石の像を神殿内部に安置し、そこにお参りに来る人までいるくらいなのだから、そうなってもおかしくないと思う。

が、そのアルス兄さんの姿をした像が問題だった。

いや、正確に言えば僕がその像の見た目に似ているというのが大きいのだろう。

今、僕はアルス兄さんから買った角なしのヴァルキリーに騎乗している。

そして、その身には鬼鎧を着て、さらに防寒用の服であるトレンチコートという外套を身にまとっていた。

その姿は吸氷石の像そっくりで、年齢による違いを除けば本人に見えないこともない。

だからだろう。

今まで何度かバリアントの街に来た時には、僕を見た住民たちはその辺の道であっても膝をつき、頭を下げて僕を拝んできたのだ。

しかも、その状況をさらに悪化させたのがエルビスだった。

どうやら、彼はもともとこの地でアルス兄さんの実力や活躍ぶりを大きく喧伝していたようだ。

それが、ここで傭兵団を作ると決まってから僕の話も加えるようになったという。

それによって、さらにバリアント住民たちの認識がゆがんだ。

アルス兄さんと僕という存在の同一化が起きているらしい。

ようするに、バリアントの住人にとってはアルス兄さんは神のような存在で、その兄弟であり、姿のそっくりな僕も同じような崇拝する相手である、ということになるのだろう。

なんだそりゃ、と思ってしまう。

が、これはこれで助かるのも事実だ。

正直なところ、なんの実績もない子どもが傭兵団の団長になったところで、そこについてくる人なんているのかという心配もあったからだ。

仮についてくるとしても、それは東方のもっと大きな国に出たいという個人的な動機でしかないだろう。

そうであれば、傭兵団としてオリエント国に行っても、しばらくすれば傭兵団を抜けてその地に住みつこうとするかもしれない。

けれど、どんな理由であれ僕に対して特別な感情を持つのであれば、それを利用できる。

組織として統率をとりやすくなるだろう。

だから、僕はそのことをいちいち否定する気はなかった。

エルビスの行動に乗っかる形で、傭兵団の団長としてここにいる者の命を預かることを受け入れる。

「我が名はアルフォンス・バルカ。天空王アルス・バルカの生まれ変わりとは俺のことだ。これから君たちを率いて小国家群オリエント国へと向かい、武功を上げる。君たちの命は俺が使う。俺に従い、俺のために働き、俺のために死んでくれ。バルカ傭兵団の栄光はここから、君たちと一緒に始まるのだ。ついてきてくれるな?」

「「「「おう!!」」」」

団員の前に立ち、声を上げる。

語気を強めるために、僕とは言わず俺という言葉を使った。

そして、その時に魔力も飛ばす。

【威圧】と同じ要領で、整列している全員に対して、一人一人に向かって鋭く尖った魔力を放ち、その胸へと突き立てる。

さらに、体の中の横隔膜や声帯、あるいはお腹全体にも魔力を集めながら声を出す。

オペラ家の【歌唱】と同じ要領で魔力を使い、言葉を耳ではなく心に響かせる。

どうやら、この方法は思った以上にうまくいったようだ。

全員が大きな声で返事をしながら、感動している。

たったあれだけの言葉で、涙を流している者までいた。

正直、自分の生殺与奪の権を握られて何を感動するのだと思ってしまうが、彼らの中では感動的な言葉に聞こえたのだろう。

とにもかくにも、この短い演説によって俺は完全にバルカ傭兵団を掌握することに成功した。

その後、全員の名を確認した後、バリアントから持ってきた銘酒カルロスをふるまい、宴会を開く。

お酒の力でさらに連帯感を高めて、その数日後、いよいよオリエント国へと向かうことになったのだった。