軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

人を集めて

「しかし、なんで傭兵なんだ、アルス? アルフォンスをオリエント国に送るというなら、この天空王国から兵をつけて送り出せばいいんじゃないのか?」

「そういうわけにもいかないよ、父さん。この国はフォンターナ連合王国との決まりで持てる兵数が決まっていて、むやみに戦力を外に出すことが認められていないからね。東方のこととはいえ、アルフォンスに兵を預けて軍を動かすなんてできないよ」

「だったら、傭兵でもあんまり変わらないんじゃないのか? まさか、6歳になるばかりのアルフォンスに一人で行ってこいというわけじゃないんだろう?」

僕が傭兵としてオリエント国に行く。

そう答えた後、母さんがものすごく反対した。

異国の地へ子どもを傭兵として出すなんて何を考えているんだ、と猛反対したのだ。

それをなんとかとりなして部屋から出てもらい、その後はアルス兄さんと父さんが今後のことについて話をする。

父さんは積極的に賛成だというわけでもないけれど、ほかにどうしようもないか、くらいに思っているみたいだ。

それでも、僕のことを考えて天空王国から軍として派兵をしてはどうかとアルス兄さんに提案してくれた。

だけど、それは難しいみたいだ。

この国は兵員数にも規定があるし、勝手に軍を送ることはできない。

けど、それなら本当に僕は一人で戦場に行くことになるんだろうか?

「そりゃ、救援を求めてきたオリエントに子ども一人送ってもしょうがないでしょ。アルフォンスには傭兵団でも作ってもらおう。けど、それはここでじゃない。東方でだ」

「東方で? 向こうで子どものアルフォンスが兵を集めることなんてできるのか?」

「できるよ。バリアントならね。あそこは大雪山の麓にあるいくつかの集落から人が集まってきている。けれど、その誰もが大変な生活をしているんだ。できればその生活から脱却したいと考えている者も多い。けど、学もない山の民みたいな連中が街に出ても差別されて満足な生活を送れるはずもなく、バリアントで生活しているんだ。そこで人を集める」

「……なるほど。それならば、ついてくる者がいないでもない、か。でも、危険だろう。子どもの団長に素直に従うかどうかわからないと思うが」

「その点については問題ない。エルビスがいる。あいつは以前からスーラと一緒に自警団を結成させてその指導もしているからな。自警団と言いつつ、バルカ軍でのやり方を踏襲しているようで、上官の命令に従うように厳しく訓練しているみたいだ。そこから人を集めれば傭兵団という組織として使い物になると思うよ」

エルビスさんか。

この前に会ったばかりだ。

あの人なら信用できると父さんも頷いていた。

もともとは農民で、バルカ軍を経て出世した人だ。

初めて会ったときに熱く語っていたことを覚えている。

いかにバルカ軍が厳しく、規律にうるさいかをずっと言っていた。

けど、多分自分が体験したそれをもとに同じような組織として自警団を育てたんじゃないだろうか。

「あの、アルス兄さん。それなら、アイもそばにつけてほしいな」

「ん、ああ、いいぞ」

「ふむ。まったく考えも準備もなしに言っていたわけではないのか。それなら、母さんもどうにか納得するかもしれないな」

「悪いね、父さん。母さんの説得は頼むよ」

「厳しい戦いになりそうだよ。報酬にいい酒を用意しておいてくれよな、アルス」

父さんがそう言う。

だけど、本当にできるんだろうか。

結構、本気で母さんは怒っていたような気がする。

しばらく話をしてもらえなくなるんじゃないかという気がするけど、その報酬がお酒なんかでいいんだろうか?

父さんを見ながら僕のほうが心配になってしまった。

「じゃあ、ちょっと状況を整理しようか。アルフォンスは傭兵として東方のオリエント国へと行く。アイと一緒に、バリアントで人を集めて出発だ。移動のことを考えてすぐじゃなくてもいい。だいたい春になったら、かな? そこまではいいな?」

「うん、大丈夫」

「で、オリエント国についての話だ。あそこはグランの出身地でもある。その周辺の小国家群についても含めて、アルフォンスはどの程度知っているんだ?」

「えっと、いくつもの国が乱立して、争い合っているって聞いているよ。ブリリア魔導国や教国の間に挟まれた土地で、大国からも手を出しにくい場所だってことくらいは知っているかな」

「そうだな。小国家群はお互いが争っているわりに、外から大きな国が来た場合は連携してそれをはねのけることがあるらしい。それで、帝国なんかも含めて大きな国は手を出さずに放置されているらしい。けど、最近になって小国家群の中での争いが激しくなっている。まあ、その原因は俺なんだけど」

「またなにかしたのか、アルス?」

「またってなんだよ、父さん。俺がいつもなんかやってるみたいじゃないか。と、言いたいところだけど、こればっかりは否定できないんだよな。実は、オリエント国のバナージに魔法を授けたんだよ。それも、【命名】っていう、教会でしている名付けができる魔法をね」

「……聞かなかったことにしたい。そんな馬鹿なことを本当にしたのか、アルス? さすがの父さんもちょっとそれはどうかと思うぞ。教会に知られたら何を言われるかわからんぞ」

「東方に聖光教会はないからいいんだよ。けど、授けた魔法には【命名】以外にも【レンガ生成】や【魔石生成】みたいな有用なものも多い。オリエント国は最初それで結構利益を出したみたいなんだけど、それが他国の目を引いてね。周りから襲われることになって、助けを求めてきているってわけ」

「そりゃあそうなるだろうな。アルスとかかわったばかりに大変なことになったな、その国は」

「ま、そういうわけで、喜べ、アルフォンス。オリエント国に行けば戦う相手には不自由しないぞ」

そう言いながら、アルス兄さんは親指をグッと突き出した握りこぶしをこちらに突き出してきた。

それを見て父さんは呆れている。

僕も、ああ、アルス兄さんらしいな、と思いながら親指を突き出して返事をしたのだった。