軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

頭のおかしい錬金術師

アルス兄さんが兄じゃない?

僕の原典?

造られた?

なんだ?

こいつは、ノルンはいったいなにを言っているんだ?

質の悪い冗談をいきなり言い出したりでもしたのだろうか。

……ゾクリ。

だが、ノルンの言うことは時間がたつほどに僕の中に浸透していくように感じた。

嫌な感じだ。

なんでかわからないが、とにかく嫌な感じがする。

これ以上、こいつの言うことを聞いてはいけないような、そんな予感がした。

(ああ、そういえばこんなことがあったな。昔いた頭のおかしな錬金術師の話だ。たしか、永遠の命を求めて研究していたそいつは最終的に人造人間を造ろうとしたらしいぞ)

だけど、そんな僕の考えを無視してノルンは話し続ける。

思念という特殊な方法で、一方的に向こうの考えをこちらに送り続けてきた。

嫌な予感がしつつも、僕はその思念に否応なく向き合わざるを得なかった。

(自分とまったく同じ人造人間を造って、そこに自分の意識と記憶を植え付ける。そうすることで、肉体による死から逃れようって話じゃなかったか? ああ、そうだそうだ。確かそんな馬鹿な考えを本気で実現しようと研究していたんだったか)

(…………違う。アルス兄さんはそんなことをしない)

(本当にそうか? だが、そういうことがあったのは事実だ。なぜなら、俺がその人造人間を斬ったんだからな。気持ち悪かったぞ。兄弟や親子で血が似ていることはある。が、ふつうはどこか違うし、その違いは俺様なら間違いなく分かった。だけど、どの人造人間もその錬金術師とまったく同じでな。そんな体がいくつも部屋にあったんだよ。もっとも、失敗作ばかりでただの肉塊にしか見えなかったがな)

(……嘘だ)

(嘘なもんかよ。ま、信じるか信じないかはお前次第だけどな。ただ、これだけは最後に言っておく。お前とこのアルスってやつは同じ血をしている。間違いねえよ)

ノルンの言うことに証拠なんて一つもない。

ただ、こいつが言っているだけだ。

本当に昔そんな錬金術師がいたのかどうかすら僕にはわからない。

だけど、その話をまったく気にしないなんてことはできなかった。

だってそうだろう。

僕はアルス兄さんによく似ているんだから。

ほかの兄弟であるヘクター兄さんやバイト兄さん、カイル兄さんよりも圧倒的にアルス兄さんに似ていた。

それも、生き写しのようだ、なんて言われるくらいには似ている。

(アルス兄さんがそんなことをするはずがない。じゃあ、なにか? アルス兄さんがいずれ僕の体を乗っ取るつもりだなんていうつもりなのか?)

(そんなことはわからねえよ。さっき話した錬金術師も肉体の複製については実験していたみたいだが、意識と記憶のほうはどうなったのかさっぱりだったしな。そんなことができるかどうかは俺様にだってわからねえ。ただ、な…)

(ただ、なんだよ?)

(アイっつったっけな? この別嬪の人形だ。こいつを作ったのはこのアルスってやつだとか言ってなかったか? もしかして、アルフォンスっていう生身の肉体を造る前に、人形で実験でもしていたんじゃないのか? 人格を植え付け、肉体を操る方法を確立するためにな)

(そんなわけないだろ。アイを作ったのはアルス兄さんだけじゃなかったはずだ。カイル兄さんも協力して……)

(だったら、兄弟でやったってだけだろうな。まったく、えげつねえぜ)

否定の言葉を紡ごうとする僕にたいして、ノルンはすかさず切り返しの言葉を投げ返してきた。

アイもそうなのか?

かりそめの器にアイという人格を植え付けて動かす。

それができるなら、人間にも同じようにできるのか?

「おーい。本当にどうしたんだ、アルフォンス。また黙りこくってさ」

「あ、ああ。ごめん、アルス兄さん。なんかその、思ったよりも疲れちゃったのかな。話はあとでもいいかな。ちょっと横になって休みたいかな」

「ん、そうか。わかった。ゆっくり休みな」

「うん、ありがとう。それじゃ僕は部屋に行くね」

駄目だ。

思考が追い付かない。

頭に魔力を送り込んでも、答えが出ない。

ずっとノルンの言ったことが頭の中でぐるぐるしてしまっている。

アルス兄さんにこの話を聞くべきだ。

それが一番手っ取り早い解決方法だと思う。

きっと、ノルンの言ったことを聞いたら、そんなわけないだろ、って笑い飛ばしてくれるはずだ。

だけど、もしそうじゃなかったら?

僕がアルス兄さんに造られた、なんて話が本当だったら、僕はどうすればいい?

……わからない。

ただ、怖い。

そんなことを言われる可能性があるというだけで、僕にはアルス兄さんにそのことを尋ねることができなかった。

本当に気分が悪くなったのかもしれない。

そのあと、どうやって自分の部屋に戻ったのかあまり記憶になかった。

いつの間にか部屋にいて、その部屋の寝台に前のめりに倒れこむようにして眠ってしまっていたみたいだ。

だけど、それでも僕の中でのモヤモヤは晴れてはいなかった。

結局、アイが夕食の準備が整ったことを告げにくる時間になっても、僕はただ茫然とノルンの言ったことを考え続けていたのだった。