軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷宮を出る

「お見事です、アルフォンス様。いい剣を手に入れましたね」

「うん、そうだね、アイ。多分、硬牙剣よりも硬さはなくても、こいつは鋭さがあるんだと思う。いい剣と出会えたよ」

手に入れた魔剣ノルンの性能は申し分ない。

鉄にたいして刃こぼれせずに使えるのであれば十分だろう。

それに、これは現状での強さだった。

ノルンによる言い分ではもっと強くなることもできるらしい。

といっても、剣が強くなる、というのがどういう意味なのかはいまいちピンときていないのだけれど。

(おい、小僧。いや、アルフォンスとか言ったな? お前、なかなかいい剣の腕を持っているじゃないか。正直、見直したぞ)

(えへへ。すごいでしょ? アイに剣術を教わったからね)

(この別嬪の人形にか。そのわりには、この姉ちゃんは剣を持っていないみたいだが)

(アイは僕の援護を頼んでいるからね。今は他の武器を主に使って助けてもらっている。けど、剣聖と呼ばれた人の剣術を使えるんだよ)

(ほう、すごいもんだな。まあ、いい。とにかくだ。俺が言いたいのは、お前が俺を使うに値する腕前を持っているってことだな。ただのガキなら俺を使いこなせんだろうが、お前ならいいだろう。アルフォンス、お前を俺の使い手だと認めてやろう)

(……何言ってるのさ。逆でしょ? 僕がお前を認めて使うんだよ、ノルン。ま、けどいいか。それならこれからよろしくね)

どうやら僕はノルンに認められたらしい。

認められなかったらどうなっていたんだろう。

剣が持ち主を拒否するなんてことがあるんだろうか。

ただ、ノルンを見つけたのが今日でよかったとは思った。

もし、迷宮に入った初日だったらノルンは僕を認めていなかったかもしれないからだ。

最初は鉄の騎士に結構苦戦もしていたからね。

力づくで剣をたたきつけて、折っていたかもしれない。

なんにせよ、結果的に僕はいい迷宮土産を手に入れられたことになる。

「よし、それじゃあ帰ろうか。アイ、また道案内をお願いしてもいいかな?」

「かしこまりました。案内いたします」

(ん? なんだ、アルフォンス。もう帰るのか?)

(うん、そうだよ、ノルン。さっきノルンを見つけたのは偶然だしね。もともと、帰る途中だったんだよ)

(そうか。まあ、それもいいだろう。こんな穴蔵の中にいても面白いことは何もないしな。動く金属の塊なんていくら相手しても血が吸えないし)

(そういえばそうだね。ノルンにとっては、この迷宮ってあんまりいい場所じゃないのか)

(そりゃそうだろ。シャバの空気が懐かしいぜ。早く出ようぜ、アルフォンス)

(ふふ。そうだね。それじゃ、さっさと帰ろうか。ただ、途中で魔装兵の気配があったら戦うからね。その時はまたよろしく、ノルン)

どうやら、ノルンも早く迷宮から出たがっているらしい。

それは僕も同じだ。

何日も迷宮内にとどまっていて、しかも汗をかいた状態で匍匐前進までしたんだ。

パンパンと砂を払ってはみたものの、体のあちこちがざらついた感じがしている。

早くこの迷宮を出て体をきれいにしたい。

そう思って、今度こそ最短経路を通って寄り道せずに迷宮の出入り口を目指して進んでいったのだった。

※ ※ ※

「……君、大丈夫だったのか? 一人で迷宮に入って、それから出てきた記録がないから心配していたんだぞ」

「え、そうなんですか? ありがとうございます。けど、僕は大丈夫です」

「本当か? ずっと一人で中にいたのか? それとも、もしかして途中で誰かと合流していたのか。まあ、とにかく無事でよかった。迷宮内では気が張っているから、自分で思っている以上に疲労がたまっていることもあるだろう。しばらくは、ゆっくりと休んでおくようにな」

「ありがとうございます」

あれから迷宮を歩き続け、出口までやってきた。

そこで、迷宮の入り口にいた警備をしている騎士に呼び止められた。

どうやら、僕が迷宮に入った時にいた人みたいだ。

何日も出てきた様子がなかったから気にしてくれていたみたいだ。

ちなみに、出入り口近くになったあたりで起動していたアイを核の状態に戻して魔法鞄の中に入れている。

つまり、僕は一人で迷宮に入って、一人で出てきたように見えるんだろう。

そして、僕の持っている鞄が魔法鞄だと知らなければ、中で何日も滞在するような格好には見えていない。

だから、この騎士は僕が迷宮内で誰か別の人と合流して行動していたように思ったんだろう。

この迷宮は僕のように中に入って戦うことを目的にしている人というのは、実はそれほど多くはない。

それというのも、基本的には魔力量を上げたいからこそ迷宮に入るからだ。

迷宮核が存在し、魔力密度が高い迷宮内で過ごす時間を長くすることで自身の魔力量を底上げすることができる。

つまり、自分の魔力量を上げるのに、魔装兵と戦う必要はないのだ。

一般的には魔装兵とあえて戦うのは近衛騎士になりたい者が、伯爵級を倒すために動く時だけだろう。

ただ、一切戦わないというのも難しい。

それは内部で魔装兵が動き回って、迷宮への侵入者を見つけたら襲ってくるからだ。

なので、貴族の子息たちはこの迷宮を使って強くなろうとするとき、迷宮には人を連れていく。

護衛の騎士を複数連れて内部に行き、しばらくそこで滞在し続けるのだ。

場合によっては、知り合い同士で同じ場所に滞在することもあり、同じブリリア魔導国の貴族の子どもであっても、より深くまで行きたいときには格上の貴族家にお願いして一緒にいさせてもらうこともあるという。

多分、この騎士は僕も中で誰かと落ち合ってしばらく迷宮にいたんだろうと思ったのかもしれない。

もっとも、外国からの留学生の場合はよほどの伝手がない限り、そういう相乗りは難しいことも多く、だからこそ心配してくれたのだろう。

ただ、僕の場合は目的が違った。

魔力量を上げたいというのもあったが実戦経験を積みたいというのも大きな目的だったからだ。

なので、ただ迷宮内でとどまるのではなく、自分から魔装兵を探して動き回っていた。

あえて、内部で滞在しやすい場所を避けるようにして動くことで、アイと一緒にいるところを見られずに行動し続けられたというわけだ。

そんなあいさつをしつつ、宿へと戻る。

そこには、シャルル様の屋敷にいたときからいたアイがいた。

アイはすでにお風呂に入る手はずを整えてくれていたようだ。

久しぶりに汗を流して、湯船につかる。

温かいお湯に包まれて、騎士の言う通り、自分で思っていた以上に体が緊張していたのが分かった。

魔道具によって適温に調整された温度のお湯でじっくりと体がほぐされていくのを感じて、その後、ごちそうを食べ、十日以上ぶりとなる柔らかな寝床でぐっすりと眠り続けたのだった。