作品タイトル不明
真の評価
「お見事です、アルフォンス様」
「ありがとう、アイ。けど、アイが見ていてくれたから勝てたってのもあるけどね。ずっと後ろから魔銃で狙いをつけて、鉄の騎士の気を引いてくれていたんでしょ?」
「はい。いつでも、撃てる準備をする必要がありましたので」
「多分、それで相手も意識が乱されていたんだと思う。助かったよ」
横たわる鉄の鎧を見ながらアイと話をする。
アイは僕の戦いをほめてくれてはいるが、この戦いはやっぱり一人で戦ったとはいえないと思う。
僕だってそうだ。
青銅の騎士が三体いた時は後ろにいる遠距離攻撃可能な相手にどうしても意識が向いてしまう。
その意味では、魔装兵もきっとそうなんだろう。
ただ、それが別に悪いわけでもない。
というか、完全に一人で迷宮内に現れる魔装兵を相手にしなければならないなんて決まりもないんだし。
それになにより、鉄の騎士に勝てたということが純粋にうれしい。
青銅の騎士とは違い、鉄の騎士は明らかに技能を持っている。
貴族院の講義でもその話は出ていた。
さっきのやつも剣の素人ではなく、きちんとこちらの攻撃に対応して動いてきていたところをみても間違いないと思う。
そんな相手に勝てたというのは、自分が強くなっているんだということを意識させてくれるからだ。
「けど、こいつが本当の男爵級ってわけではないんだよね?」
「そうですね。ブリリア魔導国の男爵級と呼ばれる鉄型魔装兵の評価は盾を持っていることという条件が付くようです。盾を構えて剣や槍で戦う個体を倒してこそ、男爵級の実力相当と認められるようです」
「盾か。それだけで、そんなに変わるのかな?」
「熟練した盾の技能を身に着けた相手は武器だけを持つ者よりも脅威であることが多いのは事実でしょう。剣だけを所持するさきほどの個体と比べても、かなりの強敵になるかと思います」
そういうものなんだ。
実は今まであんまり盾を持った相手と僕は模擬戦をしたこともなかった。
アイも基本的には盾を使ってこなかったし、アルス兄さんやバイト兄さんもそうだ。
だから、同じ相手が盾を持っているというので、どれくらいの差があるのかがいまいちわからない。
……盾持ちも探してみようかな?
さっきの感じだと、鉄の騎士相手にたいして僕が完全な実力不足だというわけではないというのが分かった。
それなら、その上位である盾持ちにも挑戦してもいいかもしれない。
まあ、その前に槍や斧なんかのほかの武器を持った鉄の騎士が出てくるかもしれない。
盾持ちがいればいいや、くらいの気持ちでもうちょっと見て回ろう。
そう考えて、再び感覚を強化して付近の魔装兵を探してみることにしたのだった。
※ ※ ※
「いた。盾持ちだね」
「どうされますか? 初めての盾持ちにたいして、まずは魔銃で攻撃を仕掛けてみましょうか?」
「ううん。僕が出る。アイは後方で待機だ。危ないと感じたら手を出してほしい」
「かしこまりました。お気をつけてください」
「うん、ありがとう」
最初に鉄の騎士と出会ってから、その後も何度か魔装兵と戦った。
ほかの武器を持つ鉄の騎士だったり、三体同時にいる青銅の騎士だったり。
だけど、それらと戦っても勝利を収めることに成功している。
そして、その調子を維持しつつ迷宮内を歩き回り、そろそろ休憩を入れようかと考えているときだった。
ようやくお目当ての盾を持つ鉄の騎士を発見したのだ。
壁に掛けられた照明用の魔道具の明かりに照らされて歩いている鉄の騎士。
その体は今まで何度か見たのと同じ鎧だった。
だが、一目で大きく違う点がある。
それは左手に持っている大きな盾だった。
……というか、でっかいな。
てっきり僕はもう少し小型の盾を持っているんじゃないかと勝手に思っていた。
円盤状の取り回しのよさそうな盾を想像していたのだ。
だが、実際には大分違うらしい。
かなり大きな盾で長方形のものを持っていたのだ。
その大きさは盾を構えていると鎧の半分は隠れるかというほどのものだった。
もしかしたら、盾を持った状態で重心を低くしてかがめば体のほとんどを隠してしまえるんじゃないだろうか。
そして、見たところ厚みもそれなりにありそうだ。
少なくとも鎧の鉄板よりも分厚いだろう。
そんな大きく厚みのある盾を持って鉄の騎士は迷宮内をうろついていた。
重くないのかな?
重くないんだろうな。
さすがに迷宮にいる魔物といわれるだけあるなと思ってしまう。
普通だったら重い金属鎧を着こんで歩いているだけでも相当疲れそうなものだ。
けど、魔装兵という特徴からか鎧を着て大型の盾を持って移動していても、その足取りは乱れていない。
疲れ知らずの体なんだろう。
そういう意味では様子を見て、無警戒のところを狙うなんて戦い方は狙えない。
意味ないし、そもそも最初からそんなことをする気もないしね。
これまでどおり、正面から戦って勝つ。
そう意気込んで、僕は盾持ちの前に飛び出していったのだった。