軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

援護射撃

「作戦会議っていっても、また僕が突っ込むつもりでいるんだけど。アイにはなにか考えがあるの?」

「はい。僭越ながら、今回は私が援護をしてはいかがかと思っています」

「援護? アイが?」

「はい。鉄型の魔装兵は男爵級と呼ばれており、青銅型三体の騎士級と比べても上位の強さを持つといわれています。ですが、その実力を我々は知りません。未知の相手に真正面から当たるよりは協力して戦うという選択肢はありでしょう。相手の実力が分かったら、その後は一対一で戦ってもいいのですから」

どうやら、アイが協力して戦ってくれるらしい。

その意見を聞いて、ちょっと考え込んでしまう。

この場合は、いろんな考え方がありそうだ。

たとえば、本当の実戦であれば相手の実力が分からない状態で戦うことなんていくらでもあるんじゃないかと思う。

そのときに、相手の実力をうかがう、なんて余裕があるかどうかはわからない。

ここに来た訓練するという目的を考えると、いつでも未知の実力を持つ相手にぶつかっていくということは大切な経験なのではないかと思う。

が、ここではアイに協力してもらうのもありかと思った。

というか、多分、アイも自分の力が魔装兵にどれくらい通じるかがわかっていない部分があるんだと思う。

アイは言っていた。

騎士級である青銅の騎士三体相手だとアイの実力も通じるだろう、と。

だが、そのとき、必ず勝てるとは一切断言をしていなかった。

もしかしたら、勝てない可能性もある。

その考えがあったからこそ、いざというときには自分の体を犠牲にしてでも逃げる時間を稼ぐと言ってくれていたのだ。

つまり、アイはここで自身がどれほど戦えるかを検証しておきたいのだろう。

鉄の騎士相手に僕とアイの二人で戦う。

そうして、アイは相手との実力差を正確に把握したうえで、僕の安全度を見極めたいと思っているのだ。

「わかった。それじゃあ、一緒に戦おうか、アイ」

だったら、その申し出を断る理由はない。

あくまでも、アイは僕のために考えて行動してくれている。

であれば、一緒に戦うことを否定する気はない。

「それで、アイが使う武器はそれでいいんだよね?」

「はい。アルフォンス様が迷宮に入ると聞いて、アルス・バルカ様が用意してくれました。新型の魔銃・改です」

「……魔銃・改って、もうちょっといい名前がなかったのかな? ま、それがどれだけ魔装兵に通じるかどうかの確認も兼ねてるんだよね? じゃあ、最初にアイがそれを使って攻撃して、そのあと、僕が突っ込んで硬牙剣で攻撃するよ」

「かしこまりました。それでは、いきましょう、アルフォンス様」

今、アイが手にしている武器は剣でも槍でも弓でもない。

その両手で抱えるようにしているのは、魔銃と呼ばれる武器だ。

長い筒のような形状をしていて、手元にある引き金を引くことで攻撃することができる。

その筒の中を通って、発射された魔弾が空を切り裂くように飛んでいき、目標に命中する。

つまり、攻撃魔法のように遠距離攻撃を可能にする魔道具というわけだ。

そして、その魔銃を新しくバルカニアで改良したようだった。

あんまり詳しい話は知らないけれど、もともとは魔装兵器を改良しようとしていたらしい。

城の中でも警備できる等身大くらいの大きさの魔装兵器を新しく作ってみようとかいう計画だったそうだ。

だけど、その計画は中止になった。

アルス兄さんとグランさんが別のことに夢中になったからだ。

なので、その代わりにバルカニアの研究者たちが作り上げたのがこの魔銃・改だそうだ。

それまでの魔銃とはそう変わらないけれど、細かな部分が改良されているらしい。

特に、前までの魔銃よりも威力を高めて、遠くまで飛ぶようにしたのだとか。

引き金の上には単眼鏡がついていて、それをのぞき込んで遠くの目標も狙いやすくしたとかなんとか。

「準備はいいですか、アルフォンス様? 合図を出したら私から攻撃を開始します。こちらが先制攻撃をしたのを確認後、突入してください」

「わかったよ、アイ」

「……いきます。3・2・1・発射」

そう言って、アイが引き金を引いた。

その瞬間、魔銃から魔弾が発射された。

改良前よりも大きめの弾でより攻撃力を高めたものが、迷宮内を飛び、鉄の魔装兵へと吸い込まれるように命中する。

ドゴッ!!

鉄の騎士の胴体に魔弾が命中した。

次の瞬間、その鉄の鎧からとんでもないほど大きな音がして、しかも、鎧に穴が開いた。

完全に相手の虚を突いた攻撃だったからだろうか。

魔銃は発射するときに、音を立てることもない。

こちらの話し声に反応することもなく迷宮内を移動中だった魔装兵は、飛来する魔弾に気が付くこともなく、そのために攻撃されて防御もできなかった。

遠目で見ていた限りでは鎧の胸部に命中した魔弾は鉄の防御を貫通して、さらに背中側からも突き抜けていたように思う。

が、それ以上に気になるのが当たりどころだ。

さっきのはもしかして、魔石がある場所なんじゃないだろうか?

青銅の騎士を倒したあと、僕はその鎧の中から魔石を抜き取っていた。

当然、それは先ほどの青銅の騎士三体を倒した時にアイも見ていたはずだ。

鎧の胴体部分のどの辺に魔石があるのかを。

もしかすると青銅の騎士と鉄の騎士では鎧内部の魔石がある位置が異なっている可能性がないわけではない。

が、一緒かもしれない。

なぜなら、魔弾が命中した鉄の騎士は後方に倒れた後も、一切動かないからだ。

あれもこれまで何度も見た光景に見える。

魔石が砕かれたことによって機能停止してしまった魔装兵の成れの果てだ。

本当ならばアイの魔銃による初撃の後に僕が攻撃を行うはずだった。

だが、目の前の光景に驚いて出ることを忘れてしまっていた。

が、それでも特に問題なかったらしい。

その後も鉄の騎士は倒れたまま起き上がることはなかったのだった。