軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての対複数戦

「僕がやる。アイは後ろで見ていてくれ」

「承知いたしました、アルフォンス様。ご武運を」

現れた魔装兵三体を前にしてこちらも動く。

僕が前に出て、アイは後ろに控えていてもらった。

万が一を考えてアイを起動させてはいるが、基本的にはアイに戦いを手伝ってもらうつもりはなかったからだ。

あくまでも、この迷宮に来たのは僕の実戦経験を積むためだ。

通路の奥からやってきた魔装兵は先頭が剣、その後ろに槍がいて、最後尾が弓を持つ個体だった。

ガチャガチャと音を立ててこちらへと近づいてくる。

そして、最初に動いたのが弓持ちだった。

後方から剣と槍を持つ魔装兵を盾役のように自身の前方に配置して弓を射かけてくる。

ヒュッと音がして矢が飛んできた。

その矢は僕の胴体へと向かって正確な軌道を描いて近づいてくる。

が、その動きはこちらもしっかりと認識できていた。

余裕を持って飛来する矢を躱しながらも、全力で駆ける。

僕が動いたことを見て、剣と槍が武器を構えて迎え撃とうとしてくる。

が、こいつらを相手にしている暇はない。

まずは弓持ちを倒さないといけないからだ。

青銅の騎士を複数相手にするうえで一番厄介なのが、その中に弓持ちがいた場合だという。

それは、弓での援護射撃が思った以上にいやらしいという点にあった。

普通の人間同士の戦いであれば、弓は遠距離攻撃には使えても、剣や槍をもって戦う味方を援護射撃するのにはあまり向いていない。

なぜなら、弓での援護が味方の体にも当たる可能性があるからだ。

なので、相手に近づかれる前に弓で攻撃し、近づかれたら近接武器で応酬するというのが一般的な動きではないだろうか。

だけど、魔装兵たちはそうではなかった。

こいつらは全身が鎧でできていて、しかも生身の肉体を持たない。

ゆえに、味方の弓持ちの援護射撃が体に当たってもなにも気にしないのだ。

そのため、剣や槍が相手に攻撃を加えている真っ最中に、味方に当たることを気にせずにバンバン矢が飛んでくることになる。

たとえ、一対一の戦いで青銅の騎士に勝てるといっても、矢が飛んでくる中でだと話が違ってくる。

相手は矢に当たってもいいのかもしれないが、こっちはそうはいかないからだ。

かすっただけでも隙ができて危険な状況に追い込まれてしまう。

なので、複数を相手にして戦う場合には、何をおいてもまず最初に弓持ちを攻撃する必要がある。

もちろん、それは相手もわかっているのだろう。

僕が矢を避けながら弓持ちに向かって走り始めたら、すぐに剣と槍の二体が進行方向をふさぐようにして前に立ちはだかったというわけだ。

あくまでも、弓持ちへの攻撃を防ぎ、三体で協力して僕を倒そうとしているらしい。

どうしようか。

新たに飛んできた矢を見ながら考える。

魔力を流動させて脳にも送っているからか、相手に近づくまでのわずかな時間でも思考を巡らせる余裕があった。

ここで、剣と槍の二体へ攻撃をすべきか。

あるいは、二体を避けるように迂回して後方の弓持ちへと向かっていくか。

どうすべきかを選択する必要がある。

ただ、取り回しのしやすい短弓を利用している弓持ちの攻撃頻度はそれなりに高かった。

二体を相手に攻撃している間に矢は何本飛んでくるだろうか。

その間の危険性を考えると、やはり迂回したほうがいいのかもしれない。

が、その場合、問題になるのがこの迷宮という場所だった。

ここが元坑道である、という点が問題なのだ。

坑道だったにしてはそれなりに広いのかもしれないが、それでも通路の幅は無限に広がっているわけではない。

迂回するといっても、大きく相手を回り込むことはできない。

そうなると、剣と槍の間をすり抜けて後方に行くか、あるいはやはり一度攻撃して相手の体勢を崩したところを突破するか。

そのどちらかが普通の選択肢なのだろうと思う。

だけど、僕はそうしなかった。

わずかな時間、考えに耽っていたが、その後すぐに再び魔力を流動させる。

脳から下半身の筋肉に魔力を多めに送り込み、それまでの走りよりもさらに走力を高めて剣と槍を持つ青銅の騎士へと急接近した。

そして、その両者の間合いへと入り込み、相手が武器を振り上げた瞬間に、再び魔力を使った。

だが、今度は魔力の流動ではない。

【威圧】を使った。

それも、今までのように相手へと魔力をたたきつけるような【威圧】の仕方ではなかった。

練り上げた魔力を全力で相手へとぶつけるようにするのではなく、逆に絞るようにする。

それはまるで魔力の針とでもいうようなものかもしれない。

鋭くとがった針のような形状を想像しながら、魔力を魔装兵に向かって飛ばす。

その狙いはこれまで何度も倒してきてわかった相手の魔石のある場所へだった。

青銅の鎧の中にある魔石。

その魔石に向かって、鋭くとがった針のような魔力が突き刺さる。

これまでに何度か試して改良した【威圧】の方法。

毎回全力で魔力をぶつけるのではなく、より少ない魔力で相手を効果的に動きを止めるために模索した新しい【威圧】によって、二体の青銅の騎士に隙が生じた。

生身の肉体を持たないはずの魔装兵がビクンと跳ねるようにして動きを止めた。

その瞬間を見逃さず、すぐさま二体の間を走り抜ける。

そして、その先にいた弓持ちへと急接近する。

もしかしたら、こいつらも驚くことがあるのかもしれない。

まさか、一切剣を交えることもなく、大きく迂回することもなく二体に守られた自分に相手が近づいてくるとは考えていなかったのだろう。

弓を引き絞っている姿勢のままで、しかし、弓持ちの行動は明らかに立ち遅れていた。

対して、こちらはすでに攻撃態勢にある。

走り抜ける勢いを殺さず、剣を振り下ろした。

一太刀で弓持ちの弓と手首を切り落とし、そのまま流れるような動作で二撃目に移行してさらなる攻撃を繰り出す。

二撃目で相手の鎧の前面に大きく傷を入れ、三撃目はその鎧の傷の隙間を通すようにして魔石を直接攻撃する。

その攻撃によって弓持ちは完全に機能を停止した。

ガシャン、と音がして鎧が崩れ落ちる。

こうなれば、魔装兵は動かないのはこれまでに何度も確認している。

すぐに意識を後ろに向け、体も振り返った。

どうやら、ようやく剣と槍の二体は再起動を果たして振り返ったところだったようだ。

大丈夫だ。

厄介な弓持ちがいなければ、二体同時であっても青銅の騎士相手には後れを取ることはない。

だが、油断はしない。

しっかりと相手を見据えて、近寄ってくる二体の魔装兵に再びこちらから向かっていったのだった。