軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無力化

「ふう……。なんとかなったな」

倒れた槍持ちの魔装兵を見て、息を吐く。

相手の攻撃を躱して魔力をたたきつけるようにして動きを止める。

その隙を逃さず攻撃に移れたことが勝因だったのだろう。

その後、数度の攻撃を繰り出すことで槍を持った青銅の騎士を倒すことが出来た。

残された青銅の鎧と槍を回収する。

周囲へと気を配りながらも、それらの作業をしながら、ふと先ほどの気合いについて考えていた。

あれはやはり、最初の不発に終わったのは叩きつける魔力量が少なかったことが原因なのだろうか。

あるいは、二度目の気合いが成功したのは相手の動作の隙間を狙ったのがよかったのかもしれない。

攻撃を躱され、それに追撃をせんとしたまさにその瞬間に魔力をぶつけられたことで一瞬停止してしまったのかもしれない。

もしそうならば、あれが成功するのは相手の状況次第ということにもなりうる。

検証が必要だろう。

まあ、それはそれとして呼び方をどうにかしようと思った。

さっきの魔力を練り上げて相手にぶつけて動きを停止させる行為を気合いと呼ぶのは、なんとなくすっきりしないのだ。

なにかほかにしっくりとくる呼び方はないだろうか。

迷宮の中だというのに、少しの間、そんなことを考えてしまっていた。

「そうだ。【威圧】っていうのはどうだろ? 気合いよりも【威圧】のほうが相手の動きを止める感じがして強そうだし、これからは勝手にそう呼ぼうかな」

別に呪文になっているわけでもなんでもないが、さっきまで気合いと呼んでいたものを【威圧】ということにした。

これからは実戦でもう少し試していこう。

が、【威圧】なしでも槍持ちと戦っておこうとも思った。

相手の動きを止めなければ勝てない、というのでは本当の意味で勝ったことにならないのではないかという思いからだ。

たとえ、相手の武器がこちらよりも間合いが遠くとも勝てるように強くなろう。

グッと手に力を入れて心の中でそう誓った僕は、その後も迷宮内を歩き回ったのだった。

※ ※ ※

「っふ。やあ!」

縦に一閃。

【兜割】をお見舞いしたことで、相手に損害を与えることに成功する。

僕が振り下ろした硬牙剣は青銅の騎士の鎧のなかでも弱点であると考えられる関節部分に正確に当たっていた。

左手首の部分が斬り飛ばされて、地面へと転がる。

今、戦っている相手は弓使いだった。

青銅の鎧を着た魔装兵が弓を使ってこちらを攻撃してきたのだ。

しかも、剣や槍を持つ個体と違って、遠くからこちらのことを認識していたようだ。

もしかしたら、弓持ちは相手の位置を遠くからでも特定することができるのかもしれない。

そんな弓の魔装兵が遠距離から矢を射てきたのを察知した僕は、その攻撃を避けながら相手に近寄っていった。

こうして、こちらの攻撃が届きうる距離に近づくまでに三度、相手から弓による攻撃が飛んできていた。

あれはどうやら短弓という種類で、威力は低めだが連射性能が高いようだ。

相手に向かって全力で駆けていく自分自身に対して正面から飛んでくる矢は思った以上に怖かった。

ただ、その矢の命中精度はおそらく正確無比というほどではなかったのだろう。

しっかりと目に魔力を流動させておけば、その軌道からそうそう当たるものではないということが分かった。

そうして、飛んでくる矢をかいくぐり、相手の元へと接近することに成功した僕は、逆に相手へ先に攻撃を当てることが出来たというわけだ。

その際、力いっぱい鎧を断ち切るのではなく、関節部分を狙うことにした。

先ほどは弓を握っていた左の手の関節を狙ったもので、見事に成功して弓持ちの魔装兵から腕ごと弓を手放させたということになる。

「もういっちょ」

そして、さらにこちらの攻撃が続く。

左手首だけではなく、そのほかにも関節を狙って攻撃を繰り出したのだ。

しっかりと相手の動きを見ながらも、肩を射抜くように突きを放つ。

ガシャンという音をたてながら、硬牙剣が青銅の鎧の左肩関節を吹き飛ばし、その胴体から腕ごと脱落させることに成功した。

どうやら、関節を狙うという攻撃方法は成功のようだ。

力ずくで鎧を叩き切るような荒業よりもはるかに少ない力で相手を無力化していくことが出来る。

その後も調子に乗って右肩や両股関節にも突きを放って、相手の身動きを完全に封じることに成功した。

胴体からすべての手足がバラバラにされて地面に散らばっている。

……もしこれが、人間相手だったら大変な光景だっただろうな。

そう思わずにはいられない。

が、こいつは人間ではない。

ここまでしても油断はできなかった。

このバラバラ状態でも攻撃をしてくるのではないか。

そんな風に思って警戒をしていた。

もしかすると、胴体と切り離した腕が独立して動いて、こちらの死角から足首にでもつかみかかってくるかもしれない。

実際にあったら恐怖を感じるだろう想像をしてしまい、ゴクリと唾を飲みながら魔装兵を観察する。

だが、どうもこの状態になるとさすがに動くことはできないらしい。

地面に落ちた切り離された状態の腕も足もピクリとも動いていなかった。

そして、魔石が入っているであろう胴体部分にも動きはない。

が、一応念のために首の部分も胴体と別れておいてもらうことにした。

硬牙剣を振って、頭部を胴体と切り離す。

関節攻撃は有効だな。

少々手間はかかるけれど、相手を無効化することができた。

そして、それになにより、胴体部分に入った魔石を砕くことなく魔装兵を倒すことができたのも大きい。

完全に動かなくなった弓持ちの青銅の鎧。

僕はその胴体部分にある魔石を完全な形で手に入れることに成功したのだった。