軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷宮入り口

「君が迷宮に入るのか? 一人で?」

「はい。これが貴族院での許可証です」

「ふむ。確かに確認した。シャルル殿下の添え状もあるようだな。わかった。通ってよし。けれど、無理はするなよ。危険だと思ったらすぐに出てくるように」

「わかりました。ありがとうございます」

魔導迷宮の入り口で、門を見張っている騎士に許可証を見せる。

この許可証は貴族院から発行されたものであるが、それ以外にもシャルル様からも一筆書いたものを渡されていた。

交換留学生が迷宮に入るためにはあったほうがいいというのもあるが、僕がまだ5歳だというのも関係している。

この魔導迷宮は小高い山にある旧坑道の奥に迷宮核が存在している。

そして、その坑道の中に魔装兵などが出てくるのだが、坑道の中だけが魔力量が多いというわけでもないらしい。

坑道の外の山そのものがそれなりに魔力量が高まっているのだ。

なので、貴族院で初等部に通うような低年齢の子どもは坑道には入らずに山で訓練することもあるのだそうだ。

坑道に入るのは魔装兵と戦うためか、あるいは迷宮の奥のさらに魔力量が高い場所に行きたいときくらいだろう。

ちなみにこの魔導迷宮がある場所で訓練しようという学生はたいてい騎士爵や男爵などの貴族の中でも階級が低い家の子どもたちらしい。

高位貴族の子弟はそんなことをしなくても生まれ持った魔力量が多い。

ゆえに、迷宮にはいかずに王都にある貴族院に通い優雅に勉強している。

貴族の子としてほかの人と知り合うためには王都の貴族院に通ったほうがいいが、将来的なことを考えると迷宮で魔力を高めたほうがいい。

このへんの時間配分をどうするかはなかなか悩ましい問題なのだそうだ。

ここに来た時、ほかにも学生を何人か見かけたが、見知った顔は少なかった。

まあ、知った人がいたところで別になにをするわけでもないが。

さっさと中に入ってしまおう。

魔導迷宮の入り口を通り、坑道内部に入っていく。

その中は暗いが、明かりが取り付けられていた。

ブリリア魔導国は魔道具技術が発展している。

そのなかには、明かりをつけるための魔道具もあった。

坑道内部の壁には等間隔の距離で明かりの魔道具がかけられており、視界が保たれている。

坑道の広さは思ったよりもあるようだ。

人が数人並んで歩いても大丈夫なくらいの幅と高さがあり、これならば剣を振り回しても平気だろう。

入り口に入って数歩のところで、そんなことを確認しながら、腰につけた明かりの魔道具を灯す。

これは青色に光るように設定された魔道具で、この青い光をつけた者は魔装兵ではなく人間だということになる。

迷宮内では魔装兵も人間も武器を持って歩いているので、人間同士で間違って攻撃がなされないようにという意味があるらしい。

「ふー。本当に魔力が充満しているんだな」

坑道内の様子を確認してから、一度深呼吸をする。

気持ちを落ち着かせてから、腰につけている鞄へと手を伸ばした。

魔法鞄だ。

中に手を突っ込んで、薬を取り出す。

魔力浸透薬を魔法鞄から出して、それを一息にぐっと飲みこんだ。

これで、しばらくの間は周囲の魔力をより多く体に取り込めるようになる。

もう一度、大きく深呼吸して自分でも魔力を体内へと取り込む。

……うん。

王都の屋敷の中よりも多くの魔力が吸収できているように思う。

けど、これじゃ足りない。

もっと魔力量の多い奥に行ってみよう。

そう考えて、坑道の奥へと向かっていった。

※ ※ ※

「意外と魔装兵と会わないものなんだな。もっとすぐに出会うのかと思っていたのに」

最初は坑道を緊張しながら進んでいた。

が、そんなに入り口すぐのところでは魔装兵とは出会わないようだ。

多分、ほかにも人が入っていて、その人たちに倒されているのかもしれない。

なので、ある程度進んだ先にあった、通路よりも広い場所に出た時に、立ち止まることにした。

広場ではないが、小部屋のような場所。

そこで体を動かしてみる。

硬牙剣を腰の鞘から抜き取り、構える。

一番慣れ親しんだ降り下ろしの動きを行う。

体は頭で想像したとおりに動く。

硬牙剣も魔力を通して【硬化】の能力が発動しているが、これは見た目ではわからない。

が、鬼鎧の効果か、いつもよりも力強く剣を振れているような気はする。

ちょっと修正が必要かもしれないと感じた。

迷宮に入る直前にアルス兄さんから鬼鎧を渡されたからだ。

この鬼鎧は身に着けていると力が向上する効果があった。

いつもよりも力がある状態だと、とっさの時の体の動きが自分の想像とは違うかもしれない。

頭で考えた動きと実際の体の動きがわずかでも違っていると、実戦では何があるかわからない。

そう思って、少しの間、体の動きを修正するために剣を振っていた。

そんな時だった。

小部屋の奥につながる通路から音がする。

カツン、カツンという音がだんだんと大きくなっていった。

近づいてきている。

ほかの人だろうか?

そう思ったが、どうやら違ったようだ。

通路奥から現れた人型の動く鎧。

その鎧の腰には青い光がなかった。

ということは、こいつは人間ではない。

魔装兵だ。

こうして、初めての迷宮で僕は動く金属鎧の魔装兵と相対したのだった。